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魔法戦

 第百四部、第四章第四話『魔法戦』です。どうぞ!

「ここがユグドラシル。……あ、世界樹……」

「ん? わかるの?」

「うん、もちろん知ってるよ。懐かしいなぁ……」


 その表現にどこか違和感を覚えたが、リリアが嬉しそうに微笑んでいたので口を出すのはやめておいた。さて、精霊空間に来た。つい先日初めてきた場所で、ただただだだっ広い草原が広がる空間だ。空は青く澄み渡り、風は優しく頬を撫で、雲はフワフワと空に浮かび、太陽は爛々と照らしてくる。土も肥え、植物を育てるのに最適な環境だと、しんさんに聞いた。精霊の住まうこの空間は、言ってしまえば生命力の塊だという。

 温度や湿度、風向きや光の量さえも調整されつくし調和が保たれた世界。それがここ、ユグドラシルだという。精霊の住処と呼ばれるその大樹は、この世界のシンボルとして何千年ものときを生き、精霊を産み出し育ててきたという。

 上位の精霊は皆この精霊世界で生まれ、やがて力を得て現実世界に旅立ち精霊を産み出す。そして現実世界の生命力を循環させるという。精霊が死ねば核が世界樹に集結して再び別の精霊として生き返るんだとか。本来ここには上位の精霊しか出入りができないが、魔術・精霊を巧みに操るかなのおかげで入ってこれているわけだ。


「あ、かなちゃんだ。おーいっ!」

「相変わらずすごい魔力だな……」


 リリアの指さしたほうを見てみれば、かなが空中から魔術・精霊をウォーリアーに向けて連発していた。精霊が大量に住まうこの空間で使う精霊完全支配は凄まじく、魔力量だけで言えばルナに迫っていた。そんなかなが魔法を連発するもんだから魔法障壁やその他スキルを多重使用しているのにもかかわらずウォーリアーはボロボロだ。魔法の練習もいいが自分に仕える精霊にもう少し優しくやってほしいものである。

 ただ不思議なのがウォーリアーの負ったダメージが瞬く間に回復することだ。ウォーリアーには確かに回復スキルはあるがここまで早い回復速度ではないはずだ。もしかしたら他の精霊に力を貸してもらっているのかもしれない。


(あ、司……さっそく遊ぼ)

(この光景を見せられてすぐはなぁ……)


 どうにも気が乗らなかった。


(そんなことを言っていいのか? かな嬢と約束したであろう?)

(もちろんやるさ。ただちょっとやる気が失せたというか、死ぬ気がするっていうか)

(大丈夫。ここなら精霊がたくさんいるから精魔人になった司なら何回でも蘇生できる)

(そういう物騒なことを言うのはやめてくないか!?)


 本当に殺されるんじゃないだろうか、と一抹の不安を覚える。


「じゃあ、さっそくあそぼっか! 私も頑張らなきゃだし、かなちゃん! どんとこい!」

(……かな、リリアが先に遊びたいってよ)

(わかった。じゃあ、開始)

「リリア、開始だってよ」

「わかったよ! じゃあ、《エアリアルブラスト》!」

「《――――――――――(エレメンタルフォース)―――――――(メガフレイム)》ッ!」


 そうして二人の魔法の撃ち合いが始まった。リリアはさすがエルフというだけあり魔法の扱いに長けている。魔力量で言えばかなの圧勝なのだが状況は拮抗状態だ。ただ一つ言えるのは、俺がこれに混じったら確実に死ぬ、ということである。

 リリアもかなも転移魔法を駆使して相手の大規模広範囲魔法を躱し、相手の意識外から魔法を放っているのだが俺にはそんな芸当は出来ない。一発広範囲魔法を撃たれたら死ぬ。火力が足りなかったり範囲が狭かったりするならともかく、確実に必殺の威力の魔法が数百メートル範囲で、さらにすさまじい速度で迫ってきたら冷徹者が発動している状態でも危うい。

 そして、こんな殺し合いでもない模擬戦みたいな場で冷徹者を発動できるほどその発動条件は緩くない。やっぱりかなと遊ぶのはやめようかな。


 精魔人の核は精霊のものが半分だ。精霊がたくさんいるこの空間なら核のその部分の修復は容易。確かにかなの言う通りやろうと思えばいくらでも蘇生できそうだが、これは下手すると俺が完全な精霊人になりかねない。別に悪いわけではないが精霊人になると年をとるという概念が消え、基本的に言葉も発せなくなる。それにリルとの適性が完全になくなるので憑依一体が使えなくなる。いいことなんてないのでやっぱりごめんである。


 そして激化する戦闘。やがて辺り一面焼け野原になり俺たちが来た時のような清々しい草原は見る影もない。砂埃が舞い、その分地面がえぐれ、植物は燃え、煙が立ち……まあ、阿鼻叫喚ってやつだ。まさにそこは地獄絵図で、天災でも降り注いだのでは? とさえ思う。いや、まあ実際それと大差ない気はするけど。


(二人とも凄まじい。リリア嬢もステータスでは負けているというのにかな嬢と対抗して見せている。かな嬢の魔法も威力が高い。甲乙つけがたい実力だな)

(冷静に評価しているところ悪いけど、俺たちもこのままだと巻き込まれるからな?)


 何とかリルの転移魔法で逃げ延びているものの二人の戦場はどんどんと広がっている。最初は小さい範囲の中でやっていたのだが気分が高まってきたのか一度戦場を広げたらどんどんと戦火が広まった。この広大な空間の中では小規模かもしれないが、現実世界で言えば少し大きな町が完全に消し飛んでいるだろう。オリィとかも滅んでいるかもしれない。……相変わらずやばいな、あの二人。


「《ヘル・インフェルノ》ッ!」

「《――――――――――(エレメンタルフォース)―――――――(・ライトニング)

「……」


 迫りくる魔法。いつ流れ弾が来るか分かったもんじゃない。よし、逃げよう。そう決めた俺は早々にその場から立ち去った。

 さて、司君はどうなってしまうのでしょうか。

 次回、司死す?決闘デュエルスタンバイ!


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