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「第七話」 真相

夕食が終わって、入浴の時間が差し迫ってくる、昼食や夕食の時間は時間が一緒になったりする人が多いが、入浴や就寝の時間などは人よって様々である。

 あるものは趣味に使ったり、自分の時間に使ったり―――そして青年は大事な家族に時間を使う時もある。


「―――エマさん大丈夫ですか‼」

「ミコトおじちゃん。お姉ちゃんが…」


 ヒカルも何かあったのかと心配して、不意に倒れたエマの顔を覗き込んでいた。

 ミコトはエマを抱きかかえて、彼女に意識があるかどうか尋ねる。

 ある日突然、洗い物をしていた家族が倒れたなどは、古くからあるありきたりな話しであり、ミコトに訪れた状況もそれと同じだった。


 「…私は大丈夫だから…そんなに心配しないで」


 エマは閉じていた目をうっすらと開けて、意識を取り戻す。

 

 「良かったお姉ちゃん」

 「…エマさん、良かった」

 「…ここ数年は起きてないから、大丈夫だと思ったんだけど……ミコト君、悪いんだけど、ここに連れて行ってくれない?」

 

 エマは頭が痛いのか、額を抑えて少し苦しそうにして、心配かけさせまいと笑い。

 ミコトにメモを渡した後に安心したのか、ぐったりとして意識を落とした。


 「…ミコトおじちゃん…」


 ヒカルは泣きそうな顔になり、ミコトにどうすればいいのか分からないと表情を作る。


「お姉ちゃんは、大丈夫だよ少し眠っただけだから…」


 ミコトはヒカルの頭を安心させるように撫で、エマを抱えて立ち上がり、彼女を背中におんぶしてヒカルに聞いた。


 「…ひかるちゃんはどうする家でじっとしてる?」

 「ヒカルも行く!!」

 

 ミコトの問いかけにヒカルは力強く立ち上がり、ミコトの後を歩幅の少ない足取りで付いていく。

 太陽が沈み、暗がりが目立ち人工的な照明の届かぬところには日中とは全く違う、黒い影ができており、ミコトはその中で光と影の交差する道路の上で車を走らせていた。

 目まぐるしく、光と影のコントラストが照らし出される中を放たれた矢の如く、疾走していく。


 「ひかるちゃん、もうすぐ着くからね」

 「…本当、お姉ちゃん大丈夫かな? もう誰かがいなくなるの嫌だよ…」

 

 ヒカルは目尻に涙を溜めて、涙腺が崩壊しそうになるのを必死で耐えていた。

 ミコトは車を運転しながら、ヒカルの様子を確認して。


 「…大丈夫だよ…ただちょっと心配だからお医者さんに見てもらうだけだから」

 ミコトはヒカルを安心させるように言い聞かせると、高速で走っていた車を減速させて、診療所の目の前に車を止める。

 車から降りていくと、そこには待ち構えていたようにストレッチャーと白衣を着て、

 両腕を組み待ち構えていたように佇む、眼光を眼鏡の奥で鋭く光らせた老人がいた。


 「遅いわ!! 連絡してから何時間立ってると思っとるんじゃ‼ さっさと患者を乗せんか‼」

 「分かりました」

 

 もしかして、ミコトが連絡してからずっと待っていたのだろうか、老人に指示されながらミコトはエマをストレチャーに乗せて、彼女を診察室に運んでいく。


 「…貴様らはそこで、待っておれ」

 

 診察室にエマを運ぶと、ミコトとヒカルは押し出すように出された。


 「ちょっと、待ってくださいよ!! 僕にだって医学的知識はあります!!」

 「五月蠅いわ!! 機械人形が‼ 誰が何処の知らん馬の骨に孫娘の体を触らせるか‼」

 「……へっ」

 

 ミコトは勢いよく出されたのが気に食わなかったのか、老人に噛みつくように抗議しようとしたが、老人の最後の言葉によって意気消沈した。


 「……ふん、そんな事も調べ取らんのか? 青二才が……まあいい貴様らは、そこで儂の診察が終わるまで、月でも眺めてるがいい」

 

 バタン‼ と二度と入ってくるなという意思を込めてエマの祖父であるシラス・グリーンは扉を閉めて鍵を掛けた。

 

 最低限の照明を付けた、待合室の椅子に座りミコトは後ろにある壁に背中を預けた。

 病院特有の消毒液の匂いが鼻孔を刺激して、今いる場所が何処なのかを認識させる。


 「ミコト疲れた?」


 横に座るヒカルに言い方を変えられたのか、それとも長いので面倒くさくなったのか、大方後者だろうと括り、ミコトはヒカルに心配された。


 「そんなことないよ。ヒカルちゃんは?」

 

 ミコトの膝に頭を預けて……眠いのか、欠伸をして目をこすっていた。


 「ヒカルはちょっと眠いの」

 

 ミコトはお日様の様な少女の頭を撫でながら、苦笑してエマの容態を推理していた。


 (……エマさん、無事ならいいんだけどな……病気は持っていないはずなのに…)

 

 一緒に暮らしてたところ、問題は全く見当たらなかった。精神的にも身体的にも―――なのに、倒れたときは、ここに連れて行ってくれとメモを渡された。

 

 つまり彼女は何かしらの持病を持っていて掛かり付けの医師がいることが推測できる。

 でなければ、あんな瞬時の判断はできないだろう。


 (……後は、あの医者どこかで見たことある気がする……確か、脳医学の権威とか何かで習った気がする……)

 

 ミコトは一つ一つ、情報を整理して、エマに何らかの持病があることを推理して答えを出す。


 (―――つまり、エマさんは脳に何らかの疾患があるってことか)

 

 ほぼ確信的に、ミコトはエマが何かしらの疾患を抱えている事を確信した。

 答えが出れば、後は簡単なものだ―――彼女に踏み込んで病名を聞いて、向き合って付き合っていけばいいと楽観的に考えていたが、後になって、それは間違いだったと気づかされた。

 

 ミコトは考えることがなくなったのか、ヒカルの頭に手を置きながら月を眺めてエマの診察が終わるのを待っていた。

 

 しばらくすると、カチャリとドアを開けた音と共にシラスは出てきて、ミコトとヒカルを一瞥した。


 「…終わったわい……ふん只の貧血じゃな。この程度で騒ぎ負って素人どもが…」

 

 シラスはドアから出てくるなり、口から毒をまき散らした。

 

 「先生。夜遅くにありがとうございます」

 シラスの口から放たれた毒を気にせずにミコトは礼を言い、素人でも分かる診察結果に疑いを持っていた。


 (…どうして嘘を付く、必要があるんだ)

 

 医者には守秘義務があり、患者の個人情報を勝手に漏らしてはいけないとあるが、ここまであからさまな嘘を付く理由がミコトには納得いかなかった。


 だとしたら、わざわざ診療所の入り口で待っている理由がないはずである。


 「もう、夜も遅い、そこの子供は空いてるベッドに寝かしとくがええ」

 

 シラスは欠伸をして、踵を返していく。

 

 「儂も疲れたわい。年寄りに夜は応えるでな」

 

 扉の閉まる音を聞いて、ミコトはヒカルを空いているベッドに寝かせると―――問いただすことがあるのかシラスの元に向かった。

 

 明かりがついているのかシラスは、まだ何かの作業をしている様子だった。

 ミコトはノックをして。


 「失礼します。先生に聞きたいことがあるんですがよろしいですか?」

 

 許可を待たずにシラスの診察室に入っていく。


 「……なんじゃ最近の若造は、礼儀も知らんのか、警察が聞いてあきれるわい」

 

 シラスはミコトの仕事を知っているのか、恐らくエマから色々と聞いているのだろう。


 「先生に聞きたいことがあってきました」

 

 シラスはモニター上に写ったカルテを閉じて、ギロリと擬音のするような音でミコトを睨んで眉間に皺を寄せた。


 「ふん、機械人形が儂に何の用じゃ……言っとくが孫娘の事なら一言も喋らんぞ、医者には守秘義務というのがあるのは、カニ味噌並の脳味噌を持った機械人形でも分かるじゃろ」

 

 (……カニ味噌)

 

 ミコトは頬を引く付かせて、どうやら相手は予想以上の偏屈で強敵だと理解した。

 

 (…どうして、僕は行く先々で人に嫌われるんだろ…何か嫌われるオーラでも発しているのかな)

 

 ミコトは最初に出会ったエマの顔を思い出し、そういえば第一印象は酷かったなと苦笑した。

 

 「…なにを笑っておる、体の中の機械がポンコツにでもなったか?」

 「いいえ、エマさんに対しての第一印象も酷かったなと思いまして…」

 

 ミコトは苦笑しながら、シラスに対して真摯に向き合うと本題に入った。

 

 「それで、【世界的な脳科学権威】と言われた貴方がどうして、こんなところで町医者をやっているのかと思いまして」 


 ミコトは確か、世界機構ミスラの脳科学権威として目の前のシラスが名を馳せていたのを思い出した。


 「ふん、儂の事も調べたわけか、目ざといな」

 「…僕はエマさんは貧血などではなく、脳に何か疾患があるのではないかと思い先生に聞きに来ました」

 

 馬鹿ではないとシラスは判断を改めて、ミコトと向き合い。

 

 「それが、本題か、言っとくが何を言おうが、儂は言わん。全く若造はすぐに結果を聞きたがる…過程を楽しむという事を知らんのか」

 「すみません」

 

 どうやら、これ以上の問答は無駄と判断して、ミコトは会話を打ち切り踵を返してエマの所に行こうとした。

 

 「お忙しいところに失礼しました」

 「勝手に来て、勝手に帰るのか、つくづく機械というものは礼儀を知らんな。いや機械は礼儀という言葉すら知らなんだようじゃな」

 

 去っていこうとするミコトに嫌味を吐いて、そのあまりの物言いにミコトは流石にトサカにきたのか、踵を返して反論した。

 

 「さっきから‼ 五月蠅いな!! 機械機械‼! 機械野郎‼ って僕にはミコトって言う名前があるんだ‼ この偏屈ジジイ‼」

 

 「……ははははは」

 「何が可笑しい?」

 

 ミコトは青筋を立てながら、シラスを見下ろして怒りを露わにしていた。

 

 「安心したわい、怒る感情ぐらいは残っておったようじゃな」

 

 シラスはテーブルの上に置いてあるコーヒーを飲み。


 (…試されたわけか、食えない人だな)


  どうやらミコトは、孫娘を任せるに値するか試されていたようである。

 

 「そういえば、あの少女を救ったのは、ミコトお前さんだと聞いているが、どうしてそんなことをしたんじゃ?」

 

 シラスの質問に対して、ミコト少し考え。

 

「…多分、人間ならああすると思って助けました―――理由なんてありませんよ。本能みたいなものじゃないですか」

 

 ミコトはありのまま思ったことを答えた。

 

 「……ククククハハハハハッハ‼ 脳が人間、体が機械で出来た小僧が本能と言うか、ハハハハハ‼ ミコト。お前はユーモアのセンスがあるぞ!!」

 

 何が可笑しいのかシラスは膝を叩いて笑い出した。

 ひとしきり笑った後にシラス咳を吐いて眼鏡を掛けなおした。

 

 「一緒に住んでおるなら、これぐらいは言ってもよかろう―――確かにエマは脳に疾患を抱えている、だが病名は自分で考えるがええ」

 

 ミコトは長い話しの後にようやく自分が聞きたい本音を聞き出せたと心の中で溜息を吐いた。

 

 「……ありがとうございます」

 「ヒントはくれてやったぞ、後は自分で考えるがええ」

 

 気怠い疲労感を感じながら、ミコトはシラスにお礼を言った。

 

 「…何だか、疲れたな…」

 

 ミコトはぐったりとして、エマが寝ている顔を一目見ようと寝室に訪れた。

 

 ベッドは空いているのか8台あり、その中にヒカルが寝息を立てて寝ているのを確認してから、エマの元をに足音を立てずに歩いていく、しきりのカーテンを開いて、彼女の様子を伺うと。

 ベッドに寝ているエマは深窓の令嬢という言葉が似合うのは、こういうのいうのだろうかとミコトは思った―――真っ白なシーツに金色の髪と端正の取れた顔と睫毛の長い瞳が閉じて、桜色の唇と全てが黄金比に整っている彼女の顔に見とれていた。


 (…綺麗だ)

 

 ミコトが鼻の下を伸ばしてエマの顔を見ていると、目が覚めたのか、不意に目を開けたエマと目があった。

 

 

少し難しい話が続きますが付いていただけると、非常にうれしいです。

(*´ω`)(*'ω'*)(*´ω`*)

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