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「第二話」 出会い

少し早くできたので投稿します。

少しでも、皆様の楽しみになればいいと思います。

 数万を超える歩行型ロボットアンリが地響きと共に進んでいく、目前には我先にと逃げ惑う人々がいるが、それも時間の問題だろう。


 数万を超える包囲に穴と呼べる物はなく、例え透明人間だとしても、包囲を突破するのは不可能だった。

 家に閉じこもってる住民は歩行型ロボットアンリの持つ火炎放射器の前に焼き払われていった。


 地獄という言葉があるなら、まさしくここがそうなのだろう、陽炎に揺らめきながら進軍していく機械達は厳正なる審判者にも見えた。


「あああぁぁぁ!!」

「お母さん!!」

「死にたくない!!」 


 彼らの行動には疑問もなく、間違いもない、それは厳正なる審判者の姿だった


「…やだ、こんなのはやだ」


 一人の住民が狂ったように車のアクセルを吹かして、機械達に一矢報いようとするが、それも無駄だった。


 包囲は大地だけでなく空中にもあるからだ。

 数万を超える飛行型ロボットの群れが、脱出する包囲網を監視しているからだ。

 正式名称は飛行型偵察用ドローン・ドロロと呼ばれていた。

 ドローンは車に乗った住民をカメラで認識すると銃弾を放った。


 火花を放ちジャイロ効果で螺旋を描いた鉄の弾は車のフロントガラスを突き破り、運転手の臓器に命中した。

 空に浮かび、四つのプロペラを回転させて飛ぶ姿は昆虫にも見え、巨大化したトンボの群体を連想させた。

 その群体は誰かが、車のエンジンを吹かすとともに光源に集まる羽虫のように群がっていき蹂躙していった。


 歯向かう住民を、あらかた駆除し終えると、歩行型ロボットアンリ達は、自分たちが物言わぬ肉塊にした物体に火を放ち始めた。


 死体をそのままにしておくとバイオハザードの危険があるので、焼却による滅菌作業を始めていた。


 第12地区の駆除計画は、おおむね進行していた。

 まず第一に住民を逃がさないように包囲、次に駆除、焼却、最後に取りこぼしがないかの確認である。


 現在、計画は焼却まで行き、後は残った数人から数十人の住民を駆除すれば、今回の作戦も終わりだった。


 ―――

 ―――――――


 作戦時刻も終盤に差し掛かるころに、一人の青年が住宅街を駆け回っていた。

 彼も住民かと思われたが背中に持つ規格外の大太刀と軍隊式のような制服と胸にある階級章が彼を住民でないことを表していた。


 軍隊所属なのか、ガッシリとしたその体格で彼は万が一にもいるはずのない、身元不明者……正式には駆除対象外の住民を探していた。


 といっても、本来そんなものはいるわけがないのだが、生来的に軍隊で真面目に育てられた彼は、その黒髪と赤い瞳を動かしながら職務に忠実に動いていた。


 それに、ここでの駆除は本部のサーバーであるマザーコンピュータが下した結論であり、全ての住民が戸籍登録してあり、部外者にも訪れないように注意勧告しており、住民以外が訪れる確率は皆無であり、絶無だった。


 そして、身元不明者を捜索している青年の名前をタカアキ・ミコトと言い、彼はいるかどうかも分からない身元不明者を探していた。


 ……だから、いるはずのない、その姿を見たときにミコトの口から間抜けな声が出たのも至極当然な事だった。


「……え」


 ミコトの視界が捉えたのは一人の女性であり、彼女は炎の煤にまみれながらも、その金色の髪は輝きを失っていなく、小さな顔についたその鼻と唇は整っており、大きな黒色の瞳が優し気なを持っており、色白の肌は少し汚れが付こうとも白さ失ってなかった。


 彼女は4~5歳ほどの女の子を抱きながら、歩行型ロボットから逃げ回っていたが、歩行型ロボットアンリの群れに囲まれ、彼女はせめてもの抵抗なのか、うずくまり手に抱えた子供だけでもうずくまり守ろうとしていた。


 ミコトは彼女を認識して、すぐに彼女の方まで駆け抜けると背中の大太刀草薙を引き抜いて、彼女を包囲している歩行型ロボットアンリ達を切り裂いた。


「……え?」


「危ないところでしたね」


 ミコトはうずくまり、必死に子供を守ろうとしている女性に手を差し伸べた。


「!?」


 が、彼女は差し出された手を払い、ミコトを自分たちを排除しにきた一員だと思っているのか、ミコトを睨み付けて、子供を後ろに隠して尋ねた。


「……貴方も私たちを殺しに来たの?」 


 子供は幸いなことに気を失っているのだろうが、出血もないし、見たところは大丈夫なようだ。


 彼女を助けたミコトは流石にそんなこと言われると思わなかったのか、頬を少し掻いて苦笑いをして。


「…すみません。申し遅れました…僕は世界管理機構ミスラ、身元不明者捜索部隊所属、タカアキミコト、少尉と言います!!」


 お手本のような軍隊の敬礼をして、ミコトは彼女に自己紹介をした。


「僕の任務は、このような事が起きたときの身元不明者を保護する立場にいます」

「……失礼ですが、ご婦人のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」


 あまりにも丁寧な口調で話しかけれたのか、彼女は小ぶりな顔をキョトンとさせて返事をした。


「……あ、はい」


 何故か、沈黙が続き、ミコトはその先を彼女に促した。


「……その名前を…よろしいですか?」

「…私の名前はエマです。エマ・グリーン」


 ミコトの頭では、エマという名前の女性は駆除対象にいないはずだし、そもそも金髪の女性というのが駆除対象にいなかったはずである。

 自分のいる地区は極東の島国であり、そもそも今回は増えすぎた大和民族が対象のはず。


 ミコトは左手に装着している、タブレット端末を開いてエマに画像を合わせた。

 西暦2150年にもなった時代の通信システムというのは、旧世紀のような小型化した通信機器ではなく、左手に巻きつけた小型化のタブレット端末を開いて開入力していくという形を取っていた。

 ミコトのタブレット型の端末が、エマと彼女の抱いている子をカメラで捉えて、万が一のために駆除対象かどうか確認していく。


「……本部のマザーコンピュターとの確認が取れました。この女性は駆除対象ではありません」


 タブレット端末が機械的な音声で声を発た後に、彼女の抱いている子供を認識する。


「…ですが、そこにいる、クドウ・ヒカルは駆除対象です。その子供で今回の駆除は完了いたします。お疲れさまでした」


 機械的な音声が無慈悲にも、その子供が最後の生き残りだと告げると、エマ聞いていたのか子供を庇うように抱いてミコトを睨み付け。


「それで、この子をどうするつもり? この子も人類の為だって殺すの!? それがあなた達、機械のやり方なの!?」


 エマはミコトを必死の形相で糾弾するが、ミコトは両手を振りながら自分は無害なことをアピールして見せた。


「……落ち着いてください。僕の任務は身元不明者の探索及び、保護です。その子をどうこうする権利は僕にはありません」


 ミコトは自分が無害だという事をエマに示そうと必死なのだが、エマはこんな蛮行をした機械社会を信用できるわけがなく、ギリッと歯ぎしりをして彼女は悲しそうに顔を歪めて叫んだ。


「こんな虐殺をした人たちを信用しろっていうの!? 私はこの子の安全が確認するまで、ここを動きません!」


 エマはミコトに頑として動かない事を示すと、ミコトは非常に困った顔をして考えるというか、一つ彼女に提案をした。


「……それでしたら、こうしませんか? 僕の権限でその子を駆除対象から外すように本部に打診してみますので、取りあえずエマさんとその子の安全を最優先させていただきたいのですが……」


 あまり時間がないために、ミコトは彼女に提案をするがエマという女性の中でミコトの評価は最底辺なのだろう、何を言っても無駄とはこのことであった。


「……そんなこと言って、私の安全を確保したらこの子を殺すんでしょう?」


 ミコトは少し悩んだ、どうすれば彼女に分かってもらえるのだろうか……周りの状況から考えても火の手がここに回ってくるのも時間の問題でもあるし、かといって無理やり連れて行っても碌なことにならないだろう。


「それでしたら……その子にもしもの事があったら、僕の事を好きにしてくださって構いませんよ。時間もないので委任状も渡しておきますね」


 ミコトは委任状も書いたデータをエマに渡すと流石に、信用したのかポツリと呟いた。


「……嘘ついたら、針千本飲ますから…」


 要領を得ないエマの言葉にミコトは、笑って。


「…いつの時代の言葉ですか……どうあれOKという事で大丈夫ですね?」


 ミコトがエマからの了承を確認する。


「いいわ、取りあえず今は信用した上げる。その代わりこの子に何かあったらただじゃおかないから」

 

エマがミコトに再度念を押す。


「その時はどうぞ好きにしてください。僕はこれからエマさんの事とヒカルさんの事を、本部に報告をしなくてはいけませんから……」


 ミコトは左手のタブレットを開き、これから本部に報告することを思い、少しため息を吐いた。


「本部に連絡します。今回の駆除作戦において身元不明者の女性を一人保護しました。その女性は四~五歳児ほどの子供を保護しており、その子供の安全を保護するまで動かない様子です」


 簡潔に報告を本部に済ませてミコトは本部の返事を待つ。


「……本部、了解しました。報告はそれだけでしょうか少尉?」


 ここからが本題であり、ミコトの交渉である。


「僕の権限で駆除対象の子供、クドウ・ヒカルの駆除を外せないでしょうか?」


「貴方は何を言っているのか、分かっているのでしょうか? 少尉の立場である貴方にはそんな権限はありません。少なくとも左官クラスの権限が必要になります」


 ミコトはお決まりの言葉が返ってきたことにため息を吐きたくなった。こうなるとは思っていた。

 だが、万策尽きたわけではない。


「それでしたら、僕の上司にこれだけ伝えてください。一人の女の子を保護したので、駆除対象から外してほしいと」


「それでしたら、構いませんが、少尉。貴方は自分の言っていることを理解していますか……貴方のやっていることは命令違反か国家反逆罪に当たります。最悪処刑か、除隊処分が妥当になると思われま…」 


ミコトはこれ以上は面倒なことになると思い、話し途中でも通信を切った。


「申し訳ありませんが、時間も差し迫ってますので通信を切ります!!」


 周りの状況を確認して、なおさら急がないと思いミコトはエマに自分に付いてくるように促した。


「お待たせしました。時間も差し迫っているために急ぎますよ」


「…その、ごめんなさい。私の所為で……」


 エマは先ほどの会話を聞いていたのか、ミコトは先ほどまでの事が嘘のように小さくなり自分に謝罪してきたエマに少し笑い。


「別に構いませんよ。僕が好きでやったことですし…それに今回の作戦について僕は反対でしたから」


 そう、もともとミコトは今回の作戦に反対だった。

 自分が馬鹿をやっている自覚はある。

 きっと自分の行為を誰かが言うだろう。

 お前はまだ若いと、そんなことが出来るのは若い内だけだと。


 それでもいいのかもしれない。

 でも人間だったらこうするのかもしれないし、しないのかもしれない。


 ミコトはそんなことを思いながらも、機械か人間か分からない体を動かして、歩行型ロボットアンリの大群を見据えて、背中から大太刀、草薙を引き抜いて向ける。


「さあ、突破しますよ……遅れないようについてきてくださいね」


 ミコトとエマの前には、歩行型ロボットアンリの群れが雲霞の如く集まっており突破するのは不可能とも思われたがそんなのは関係ない、こんな自分にも救える命がある。

 

 その事実だけで今は十分だった。

 

偵察用飛行型ドローン・ドロロ 駆除レベルE


 カメラを持ち機銃で攻撃する。


 四つのプロペラを持ちトンボの様に飛び、群体をなして行動する。


 基本的には集団で行動して3体から4体の群れで行動するようにプログラムされている。

 時速は300キロから400キロぐらいあるが、バッテリーがそれほどないために、長時間の行動には向いていない。


 主に偵察、監視に用いられる。


 駆逐レベル E 人間を数人から数十人駆逐できるレベル。


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