森のおせんべい屋さんとなかよし三兄弟

作者：楠結衣

この作品は、挿し絵が見どころです。

普段は表示がオフの方もオンにして楽しんでもらえたら嬉しいです。

あそびに来てくださった動物のみなさんは、しおりとお星さまは使わないように気をつけてくださいね。

よろしくお願いします。

　まっ白なやまぼうしの花が咲きはじめた森の中から、おせんべい屋さんの楽しそうな声と芳ばしい匂いがただよってきました。

　――おせんべい　おせんべい　やけたかな

　レッサーパンダのなかよし三兄弟は、いつもいっしょにおせんべいを焼いています。

　お兄ちゃんのいちろうがくるり、まんなかのにたろうがくるり、末っ子のさぶちゃんがくるり。

　三匹が白色のおせんべいをくるんくるんとひっくり返すのをくり返して、きつね色のパリパリおせんべいになると三匹は同時にこう言いました。

「よし、しょうゆ味にしよう」

「よし、みそ味にしよう」

「よし、ざらめ味にしよう」

　びっくりして三匹は顔を見合わせてしまいました。

「しょうゆ味がおいしいがおー」

「みそ味がおいしいがおー」

「ざらめ味がおいしいがおー」

　三びきは同時にさけぶとバンザイのポーズをしました。

　レッサーパンダは、相手を驚かせようとするときにバンザイのポーズをして、自分が大きくて強いところを見せるのです。

　いちろうとにたろう、それにさぶちゃんも、ぐるぐる円になっておなかの黒いところを見せながら、がおーがおーがおーとさけびます。

「「「それじゃあ、しょうぶするがおー！」」」

　三匹は森のなかまたちを呼んで、どのおせんべいが美味しいかを決めてもらう『おせんべいパーティー』をひらくことにしました。

　三匹はさっそくきれいな葉っぱをたくさん集めて、こう書きました。

『おせんべいパーティーをひらくので、ぜひ遊びにきてください。

　どのおせんべいが好きかおしえてください。

　　　　　　　　　　　　　森のおせんべい屋より』

　三匹は招待状をもって森のなかまたちの家をまわります。

　ところが、招待状を受け取った森のなかまたちはにこにこしてこう言うのです。

「ええ、ぜひうかがうわ。大きなえびせんが好きなのよ」

「喜んでパーティーに行くね！　ぬれせんのしっとりしたのもいいよね」

「楽しみにしているよ！　海苔がまいてあるのが好きなんだ」

「あのね、水あめをはさんだおせんべいがふるさとの味で大好きなの」

　三匹は森のなかまたちから色々なおせんべいの名前が飛び出してきたことにびっくりしました。

　だけど、みんなの嬉しそうな顔を見ていたらしょうゆ味やみそ味、それにざらめ味じゃないおせんべいもとっても美味しそうに思えてきたのです。

　三匹のお口の中はよだれでいっぱいになってしまったので、あわててごくりとのみこみました。

「「「ねえねえ」」」

　円になった三匹はにっこり笑いました。そして、いっしょに口をひらきました。

「「「みんなの好きなおせんべいを全部作ったらきっとよろこんでもらえるよ！」」」

　今度はすてきな思いつきに嬉しくなって、三匹はバンザイをしました。レッサーパンダのなかよし三兄弟は、嬉しくてもお腹を見せてバンザイをしてしまうのです。

　そうそう、三匹はこの後にごめんねをして、ちゃんと仲直りをしましたよ。

　それからは大忙しでした。

　うさぎさんの好きな小さなおせんべい、りすさんの好きな星型のおせんべい、キツネさんの好きなピーナッツのはいったおせんべいを作ります。

　それから、チーズせんべい、二度付け醤油の堅割れ煎餅、あおさ海苔塩せんべい、サラダせんべい、梅ざらめせんべい、ねぎみそせんべい、手焼きの薄焼き七味せんべい、南部せんべい、塩せんべい、揚げ餅せんべい、たこせんべい、種の形をしたせんべい、ごませんべい、炭酸せんべいーーみんなの笑顔をうかべながら、みんなの好きなおせんべいをいっぱい焼きました。

　パーティーで使うお皿やテーブルクロスにすてきなものを用意して、飾りつけも喜んでもらえるように三匹で力をあわせてがんばりましたーー。

　いよいよ今日は、みんなを招待したパーティーの日です。

　三匹はどきどきしながら森のなかまたちがくるのを待っています。

「お招きいただき、ありがとう」

「楽しみにしていたよ！」

「いっぱいおせんべい食べるんだ」

　招待していた森のなかまたちが次々にやってきて、おいしそうにおせんべいをほおばります。