1.パーティーを追放されたんだが
「ウラル=ライサス。お前もう必要なくなったからさ。俺のパーティーから出てってくれ」
ギルド集会所の2階、応接の間で。
パーティーリーダーであるセインは薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
「ちょ、ちょっと待ってくれセイン。どうして俺が必要なくなったんだ?俺は今まで、精一杯このパーティーに尽くしてきたじゃないか」
「ぷっ、あっはははは!!!精一杯尽くしてきた、だって?ただの荷物持ちが何言ってんだよ」
セインが笑うと同時に、他のメンバーも一斉に笑い出す。
「うちの魔法使いーーアルゼが<収納魔法 Lv.1>を習得してな。もう荷物持ちなんていらなくなったんだよ」
「汚い荷物持ちがこのパーティーからいなくなるよう、私、頑張りましたわ」
アルゼは胸を張りながら、俺を見下すようにそう言った。
「ま、そういうことだ。スキル無しの村人はもう用無しだからよ。分かったらさっさと出てけ」
ーースキル。この国の人間は全て、生まれながらにして何かしらのスキルを持っている。
だが稀に、スキルを持ち得ない人間もいる。それが俺の職業である最弱職『村人』だ。
俺だって、好きでスキル無しの『村人』になったわけじゃない。魔法と剣を両方扱える『聖戦士』や、仲間を身を挺して守る『盾持ち』になりたかった。
だがスキルが無いからといって、冒険者になるという夢は諦めきれなかった。
だからバカにされようと給料が低かろうと、上位パーティーである『星降りの刃』の荷物持ちになってまで冒険に参加していたのだが……。
「テメェがどんな扱いでもいいからパーティーに入れてくれ、って必死に懇願してくるから入団させてやってたけどよ。分かるか?もう邪魔なんだよ、邪魔」
汚いものでも払うかのように手をひらひらさせながら、セインはそう言い放った。
確かに、パーティーに入れてくれとお願いしたのは事実だ。だがいくら何でも扱いが酷すぎたし、俺だって毎日の料理を作ったり囮役をやったりと、パーティーに少しは貢献してた筈だ。
……なんて言いたいことは山ほどあるが、今更何をいっても無意味だろう。唇を噛んでぐっと呑み込む。
「……分かったよセイン。パーティーから抜ければいいんだろ」
「おっ、やっとその気になったか。なら一応退職金ってことで、俺から幾らか恵んでやるよ」
そう言うとセインは懐から大金貨3枚を取り出して床に放り投げた。これをわざわざ拾わせることで俺をバカにするつもりなのだろう。
だが大金貨が1枚あれば、大体3日は生活できる。
ーー今日から職を失うことを考えれば、ここは屈辱を我慢してでも金を拾うべきだ。
そう考え、俺が跪いて金貨を拾い終わると同時。
急に視界が反転したかと思うと、俺は壁に思い切り叩きつけられた。
「おい見ろよ、軽く蹴っただけであんなに吹っ飛びやがったぜ!」
遠くの方で、セイン達が大笑いしているのが聞こえる。
セインのヤツ、俺の体を蹴りやがったな……!!
今すぐ反撃してやりたいが全身を強打した痛みで頭が朦朧として、立つことさえままならない。
「ギルドじゃパーティーメンバーを傷つけちゃならねぇって面倒な規定があったからよ、今までお前をいたぶれなかったが……。パーティーを脱退した今なら、いくら蹴ろうが殴ろうが、何の問題にもならねぇよなぁ……?」
セインは舌舐めずりをしながら、ゆっくりと俺の方へ近付いてくる。こんな非道な行動を見ても、他のメンバーは笑いながらこちらを見ていた。
「おっと、動くなよウラル……。骨の2、3本は覚悟しとかねぇと辛いかもだけどよ……」
「……クズが……」
俺は余力を振り絞って扉を開けると、そのまま集会所を飛び出した。
後ろの方で、セインとメンバーが大笑いしているのが聞こえる。
「全く、つぐつぐ運の悪い人生だな……」
こうして俺は大金貨3枚だけを持って、夜の街へと飛び出したのだった。
新作スタートしました!
最弱職の主人公ですが、テンポよく最強になるお話です!