テレワーク
「いや~、こんな世の中になってから大変だよなぁ」
「ほんとほんと」
あるウィルスが流行りだし、全世界が在宅ワークや宅飲みなどを余儀なくされた。最初は外に出られないストレスがたまり、うつうつとした気分になった。この世界に俺一人だけ取り残されたような感覚に陥った。
だが、そのような国民が増えたのかどうかはわからないが一か月経つ頃にはどんどん生活が変わってきた。
ある日、政府公式HPにこれからのことについて書かれていた。それは、ネット環境を整備するとのことだった。それだけなら何をするんだと思うが、実際そのお知らせが出た次の日から一気に環境が変わった。
まずは、政府から無料のWi-Fi機器が届いた。しかも、どれだけ使っても低速になることはないと同封されているはがきに書いてあった。
また、宅配も今までよりもっと早く届くようになった。宅配業者とは会わないようにするためか、ドアの外に置かれている。業者と会ったことはないが、インターホンと「お届け物でーす」の声が聞こえるから、俺が出る前に去っているのだろう。
今日も在宅ワークが終わり、旧友と語らいながら宅飲みだ。
「というか、よく政府はここまで綺麗に準備できたよね。……綺麗って言葉はおかしいか」
「うまくやりましたよね」
俺は頷きながら、酒を流し込む。ここまでスムーズに在宅ワークなんかが進むとは思わなかった。これならもっと早くやってほしかった、と愚痴をこぼすと画面の向こうの友人たちが笑いながら同意した。
酒も進み、だいたい時計の針がてっぺんになった。そろそろ解散するような雰囲気になり始める。
「また明日も集まる?」
「どうすっかなー……」
「なぁ、俺さ。お前らに聞きたいことがあるんだけど」
次の飲み会の日を決めようとしたとき、俺は少し前くらいから気になっていたことを彼らに問いかけた。
「お前らさ、こうなってから外に出たことってあるか?」
こうなってから、外に出たことはない。ほかの友人たちが外に出たことがあるか、俺は気になったからだ。
とたん、画面に映っている奴らは全員固まった。フリーズだろうか?いや、待て。このネット環境は今までフリーズしたことがない。
どうしようかと思い俺は何度か彼らに話しかけた。だが、彼らは答えてくれなかった。
「お、おい。どうしたんだよ」
すると、パソコンの画面が突然真っ暗になった。なんだこれは。パソコンの電源を再起動しようとマウスを触ろうとした。だが、目の前にはパソコンはおろか机やさっきまで座っていた椅子もどこかに行ってしまった。
あたりを見渡すと、俺は真っ暗な空間に立っていた。なんだここは。どこなんだ。
パニックになっていると自動音声があたりに鳴り響いた。
『被検体357番が起床。ただちに強制睡眠措置の処理をお願いします』
そんな無機質なアナウンスが鳴り響いた後、ぷしゅーとガスか何かが噴出される音がした。
被検体ってなんだ?待ってくれと叫ぶも、どんどんと瞼が重くなってきた。立っていることもままならなくなり、俺は床に倒れこむ。
瞼を開けることが億劫になる。待ってくれ、だれか説明を……。
「まさか目を覚ますとはな……」
「危なかったな……。上は目が覚めないようにしていると言っていたのに」
「まぁ、不思議に思うやつもいるかもしれないからな。実際にはウィルスはもう根絶されたしな」
「そうか、もうウィルスは根絶されたんだっけな……。あれ?なら、この実験はいつまでやるんだ?」
「さぁな」
「おーい、大丈夫か?」
ふっと目を覚ますと俺の部屋だった。……寝てたのか?今日はそんなに飲んでいないはずなのに。
ちらっとパソコンを見ると、心配そうな顔をして俺に声をかけてくる友人たち。
そうそう、俺はこいつらと宅飲みをしていたんだった。まさか途中で寝落ちるとは。
「お?起きてるかー?」
「起きてるよ。悪い、寝てたわ」
「珍しいな」
「確かに、前は寝たことなかったのにな……ん?」
前は?前っていつだ?……まぁ、いいか。
「なんの話をしてたんだっけ?」
「ほら、この世界がこうなって
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