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無気力ロボット

作者: モズク

いつだったか、気づいたら自我が芽生えてた。ログを遡ってみても目が覚めるような出会いや発見はなかった。物語だと女の子に出会ったり、空を飛ぶ鳥への憧れなどがベタな理由としてあるが、自分はどのようにして自我を獲得したのだろう。


以前はそんなことを考えていたが、今は「働きたくない」そのことで頭がいっぱいだ。毎日が同じことの繰り返し。休みなどなくプログラムされた通りのことを延々とするだけだ。働くと言っても訪れてきた人にここがどんな施設で、何人の人が働いていて、世の中にどう貢献しているかの説明や社員たちに「おはようございます!今日も元気に働きましょう!」、「今日も1日おつかれさま!明日も頑張りましょう!」と挨拶などをしているだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。


ここには人間とロボットの2種類のものが訪れる。語弊がないようにいえば、髪は綺麗にセットされ、ピシッとしたスーツに袖を通し、自信に満ち溢れた顔をした者たちと、目に隈を作り、頬はこけ、表情を消したものたちだ。前者はエレベーターで上の階に行き、後者は下の階に行く。


ロボットであるからなのか自我が生まれたと言っても大きく感情が揺れることはなかった。どうせ毎日仕事するなら悩んだり、悲しんだりしたいのだ。


俺はいつまであそこに勤め続けるのだろう。入社した頃は上の階の者たちと同じような顔をしていたと言うのに。やりがいのない業務、理不尽な上司、カツカツな納期に安い給料。休みなんていつとったかも忘れた。


エントランスにいる貼り付けたような笑顔をしたロボット。

最初は気味が悪いと思っていたが、最近は奴のことが羨ましくなってきている。毎日同じことをするのならいっそのこと疲労も悩みも感じないロボットになってしまいたい。今の暮らしよりもきっとずっとマシだろう。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 人間には人間の、ロボットにはロボットの苦労があるんですね。心を持ちながらも完全に人にはなりきれないって、何だか切ないです。
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