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ゼリービーンズをあげる  作者: Bunjin
第三章 高橋 摩唯伽
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4 青春を謳歌

「ねぇ、早く行こうよ。ステーキハウス」

「まぁ、待って」


 何軒かに電話を入れると、運良く空いている店があった。タクシーですぐの場所だった。


「ひゃーっ、すっごいステーキハウスだこと」


 重厚な入り口のドアを開けると、絵画や置物の美術品が並ぶ。深海を模した深いブルーの店内が、非日常感で溢れる空間になっている。


 へそ出し脚出しの摩唯伽ちゃんのドレスコードが気になるが、そこは店側の配慮で羽織り物を用意してくれた。


「嫌だな」

「ん?」

「ちょっと待っててよね、佐藤さん」


 何か慌てて摩唯伽ちゃんは化粧室に向かって行った。女の子の生態に疎い僕は仕方がないので言われた通りにした。


 暫くして現れた摩唯伽ちゃんはすっかりと印象を変えていた。長いウィッグを外して、目元の化粧は大人しいものにしている。


「女の子って、化粧で随分と変わるものだなぁ。このほうが僕の知っている摩唯伽ちゃんらしいね。でも、・・・」

「でも?」


 僕は言い淀んだ。どちらが摩唯伽ちゃんらしいと言うのか。僕が知っている摩唯伽ちゃんなのか、それとも僕が知らない摩唯伽ちゃんなのか。高専に進学して自由に青春を謳歌している摩唯伽ちゃんが本当の姿ではないのかと思う。


「さっきの彼氏は派手なほうが好きのかい」

「彼氏じゃないわよ。あいつは只のロボコンのチームメイト。それにあの格好は、私の好みなんだけど、何か問題でもお有り?」

「そっ、そうなのかい。僕はてっきり―――」

「てっきり?」

「いやいや、カッコイイよ」


 ばつが悪いので取り繕うことにした。しかし、簡単には許してもらえなかった。


「これもあれも全部が私なのに、佐藤さんはちっとも分かってくれてないんですね。人の外見だけを見て、私もさっきのあいつも佐藤さんはどう思っているのかしらね」

「うーん、詰まりはドレスコードのある店に連れて来た僕が悪いということか」

「いいえ、私はお肉が食べたいと言ったから、佐藤さんはここに連れて来てくれた。ただ、佐藤さんの考え方が私とは違っていただけ」


 摩唯伽ちゃんが何が言いたいのか、少しも分からない。

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