表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼリービーンズをあげる  作者: Bunjin
第三章 高橋 摩唯伽
63/95

2 青白い放電

「何だ、このオッサンは?」


 敵意のある男の声がした。その途端に僕の脈拍が激しくなる。僕は咄嗟に催涙スプレーからスタンガンに持ち替えていた。


「黙りなさい。あんたはもう帰っていいよ。私はこの人に用があるから」

「何だよ。金持ちそうなオッサンを狙うなら、俺に任せろよ」

「はぁ、何言ってんの。私がそんなことする筈ないじゃない」

「佐藤なんて在り来たりな名前を言って、知り合いだと思わせようなんてしても、俺は騙されないぞ」

「馬鹿。この人は本当に佐藤さんなんだって。もういいから、あんたはホテルに帰れ」


 二人が険悪な雰囲気になっている。その隙に逃げるしかない。スタンガンを持っていても、それを使うには躊躇がある。強力な武器を使えば相手に怪我をさせてしまう。


 僕は踵を返すと、一目散に走った。


「あっ、こら逃げるな」


 男が追い掛けて来る。僕は恐怖を感じて、スタンガンを構えた。もしも追いつかれれば、躊躇なく男を撃退する覚悟を決めた。


「待って、佐藤さん。私、摩唯伽です。高橋摩唯伽です」


 バチ、バチ、バチッ!


 青白い放電が闇の中で走る。僕は男と交錯した瞬間にスタンガンのスイッチを押していた。


「危ないなぁ、オッサン。俺を殺す気かよ」


 僕は物の見事に蹴り倒されていた。胸を強かに蹴られたので呼吸が出来ない。地面に這い蹲ったままのた打ち回るしかなかった。


「大丈夫ですか」


 摩唯伽と名乗る女が駆け寄って来る。


「あんた、何てことしてくれるのよ。この人は私の大事な人なのよ」

「だって、このオッサンがこんなもんで向かって来るからだ」

「もういい。あんたは帰れ。私の邪魔をするな」

「嫌だ」

「私の言うことが聞けないのか」


 バチ、バチ、バチッ!


 女が僕からスタンガンを奪って放電させる。言うことを聞かない男を威嚇した。


「分かったよ。でも、明日のロボコンに遅れるなよ」


 男がまだ僕を睨んでいるのが分かる。憎悪の視線は見えなくても感じるものだと悟った。


「大丈夫ですか」


 女が同じことを訊いてきた。そして、スマホを取り出してライトを点けると、僕の体を照らした。


「怪我はしていないですよね」


 蹴られたのと転倒したので体中が痛む。特に胸は肋骨が折れていないかが心配だった。


「血は出ていないようだが」

「それなら安心です。骨折していたら痛くて喋れません」


 僕の心配に気付いたのか、女は的確に答えた。その経験があるのかと思う。そうでなければ答えられない言葉だろう。


「立てますか、佐藤さん」

「キミは?」

「あら、さっき自己紹介しましたよね」


 女はスマホのライトを自分のほうに向けた。


「高橋摩唯伽ですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ