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ゼリービーンズをあげる  作者: Bunjin
第一章 武鎧 摩唯伽
24/95

24 ヤバい写真

 宿泊は敦賀市街地の民宿を予約していた。夕刻前にチェックインを済ませ、それぞれの部屋に荷物を運ぶ。部屋は二人部屋の三室。部屋割りは永野夫婦と、残り四人は男女別に分かれる。どこも海が見渡せて開放的だが、落ち着いた雰囲気がある室内だった。


 夕飯前に、この宿自慢の露天風呂にゆっくりと浸かることにした。僕は肩を焼き過ぎて湯に浸かるどころではなかったが、気分は極楽そのものだった。そのせいなのか、男同士での語らいはいつもよりも口が軽くなっていて、何時しか上司への愚痴とか会社のことになっていた。


「どうしてさぁ、実験センターってあんな山奥に建てたか知ってるか?」


 体を洗いながら山藤が言った。


「騒音問題解消の為だろう」


 僕は永野の答えに頷いた。


「甘いなぁ、お前らは。音だけだったらあんなに離れる必要ない。真相は開発部だけの極秘なんだよ」

「何だ、それ。設計部の俺でも知らないぞ」

「開発部で何かしているのか」

「極秘実験だ」

「ほっ、そりゃあ凄い。それをお前はここで暴露しようとしている」

「誰にも言うなよ」

「お前と違って、俺たちの口は堅いぞ」

「確かにね。僕もそう断言する」

「超燃料の開発をしている。その為にあそこが建てられた」

「えっ、それじゃあ」

「そうだ。二十年前から続けられている事業だ。常に爆発の危険がある燃料開発だからな」

「おいおい、爆発を前提にしているのか」

「そういうことだな」

「菩提重工、恐るべしってことか」


 のぼせないうちに僕たちは風呂を出た。しかし、女性陣は予想通り長湯で、いつになったら出て来るのか分からない。食事は個室で用意してもらっている。時間は一応伝えてあるので、それは守ってくれるだろう。


 部屋に戻って連絡を待つ間、僕はスマホで競馬結果を確認した。馬券の購入はしていないが、野山係長に予想を教えていたので気になっていた。


「当たりだな。係長の奴、幾ら賭けていたのかな。三連単で配当は三万円」


 早速、野山係長に電話してみる。今頃は祝い酒を飲んでいることだろう。分け前を少しせびってやろうと考えていた。


「もしもし、佐藤か」


 どうしたことか係長の声に張りがなかった。


「百万は儲かったでしょう。おめでとうございます」


 僕は一割は分けてやろうと言い出す言葉を今かと待った。


「済まん」

「はぁ?」

「お前の予想に掛けなかった」

「はぁ!」

「急に気が変わって、俺の予想に掛けちまった」

「馬鹿か、あんた。何度それで失敗している」

「済まん」


 事切れるように電話が切れた。信じていれば今頃は億万長者になっている。そうなっていないのは、いつも野山係長が勝手なことをするからだ。だからと言って自分で賭けても、無心でなければ上手くいかないものだ。それを僕はよく知っていた。


 取り敢えず競馬結果をスマホに記録する。過去からの記録を分析する為に蓄積した資料は膨大だ。これが僕の唯一の趣味だった。


 ラインの受信の通知が鳴った。確認すると彼女がアルバムを作成していた。約束していた通りカメラで撮った写真を送ってくれたのだ。


「ヤバイ写真入りかな」


 彼女が厭らしいと言っていた写真が気掛かりだ。拡散されるととんでもないことになる。僕は少し震える手でアルバムを確認した。

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