ネット広告の罪
「いいね」ありがとうございました。
「ネット広告は無法地帯」
そんなことを言う人がいました。
そんな言葉に対して、「確かにその通りかもしれない」と思ったのは、こんな広告を見た時でした。
『パパ活始めませんか』
いや、駄目でしょう、それは。
広告に書いてある内容自体は合法的な範囲内かも知れませんが、売春行為の入口ですし、トラブルや犯罪に巻き込まれる恐れもあります。
気楽に勧めてよい行為ではありません。
しかも、別にアダルトサイトを見ていて表示されたわけではありません。
一般的な、子供でも普通に閲覧可能なサイトで表示されたのです。
私がその広告を見たのは一回だけなので、既に削除されたか、何かの手違いで一般のサイトに表示されてしまったのではないかと想像しています。
怪しいネット広告は他にもたくさんあります。
例えば、ネットカジノの広告。
お金を賭けずにカジノの雰囲気を楽しむだけのゲームなら問題ないのですが、お金を賭ける賭博は日本では違法です。
たとえサーバや運営元が海外だとしても、国内で賭博に興じれば違法になります。グレーゾーンですらありません。
違法でも捕まるのは日本で賭博を行った者で海外の胴元ではありません。だから堂々と広告を流して日本人のカモを呼びこみます。
広告している対象が違法だったり怪しかったりするものの他に、宣伝の仕方が怪しいものもあります。
肥満対策の医薬品だか健康食品だかに「脂肪を便として流す」みたいな宣伝をしているものがありました。
煽りの文章だけ読むとまるで皮下脂肪や内臓脂肪を便として排出するような印象を受けますが、そんな恐ろしいことがあるはずがありません。
大便は食べた食物を消化吸収した残りを排出するものです。
消化液など一部体内で生成されたものも混ざっていますが、体内の不要物を体外に出すための仕組みではありません。
皮下脂肪や内臓脂肪は体内の組織です。内臓の一部が溶け出して便に混じって出て来るというのはとんでもない事です。血便だって大騒ぎでしょ?
おそらくは、広告の詳細やリンクをたどって商品の説明を詳しく見れば、皮下脂肪や内臓脂肪でなく、食事に含まれる脂質の吸収を阻害する作用だと書いてあるはずです。
しかし、楽して痩せたい人は詳しく読まずに「皮下脂肪や内臓脂肪を体外に出してくれる」と勘違いすることもあるでしょう。
食事制限や運動で脂肪を燃やすよりも楽そうだから、そうであって欲しいという思いから誤解します。
そして、都合よく誤解されることを狙って、広告は作られています。
故意に誤解させようとするとまで行かなくても、嘘とは言えない範囲でなるべく良いイメージを持たせようとすることは、ネット広告以外でもよくあることです。
ただ、ネット広告の場合、より騙そうとする意図を持った広告があるように思えます。
TVCMならば「※個人の感想です」とテロップが入るような内容を「○○の人は絶対にやって!」「××は簡単!」のように断定してしまうとか。
よく見ると加工されている写真を堂々と使用していたり。
実はその画像、広告の内容と無関係では? と思える写真が貼り付けられていたり。
デジタルカメラの広告で、そのカメラで撮ったものではない写真を載せて問題になったことがありましたが、ネット広告ではもっと怪しげなものが色々出回っているだろうなと思います。
例えば、福島で処理水の海洋放出が話題になった頃、その海洋放出との関りを匂わせる文章と共に、色の付いた水の入ったコップや蛇口から濁った水が出る写真を表示する広告を見かけました。
「お前のところの水道は海から取水するのか」とか「水道水が濁るなら、浄水場か水道管不具合を真っ先に疑うべきだろう」とかツッコミどころ満載です。
ただ、そう思わせるような文章というだけで、直接「海洋放出のせいでこうなった」と明言しているわけではないので何とでも言い逃れできそうでしたが。
広告をクリックしてリンク先を見れば詳しい意図が分かったかもしれませんが、ショッキングな言葉と画像で広告をクリックさせようとする意図が見え見えなのでその先は見ていません。
リンクの先に書かれていたのは海洋放出が水道水に悪影響を与えているという主張か、それとも全く別の何かか。
どちらにしても、見た人を騙す意図がありそうです。
さて、ネット広告の中には、「嘘とは言えない範囲」の一線を越えて、大嘘で人を騙そうとするものもあります。
SNSで著名人の名前を勝手に使って広告を出し、広告を見て連絡してきた人にその著名人のふりをして対応したという詐欺事件がありました。
かなり悪質です。
また、ウイルスに感染したという警告メッセージ(に見せかけた表示)を出す詐欺もネット広告の仕組みを利用しています。
表示された電話番号に連絡すると、リモートでパソコンを操作してメッセージを消し、ウイルスを駆除したと言って金を取るらしいです。
自作自演で金をとる時点で十分に悪質な詐欺ですが、リモート操作用のソフトをインストールさせるという話もあるので、ついでにキーロガーとかバックドアとかを仕込まれる可能性が高いです。
他には、血糖値を測る機械の動画広告を見たことがあります。
指先を挟んで測定する様子はまるでパルスオキシメーター。
もしかして、パルスオキシメーターと同じようにして血糖値を測る装置が開発されたのかと、改めてその広告を見てみると……
商品の写真のところにでかでかと「パルスオキシメーター」と書いてありました。
「まるで」、ではなくパルスオキシメーターそのものを血糖値を測る装置として宣伝していたのです。
パルスオキシメーターで測るのは血中酸素飽和度(SpO2)です。血糖値ではありません。
表示する画像だけ間違ったとかパルスオキシメーターに血糖値を測る機能が追加されたとか言う可能性は無さそうです。
広告の中で、血糖値の正常値を95と説明していました。
血糖値は空腹時で70~100mg/dlが正常だそうです。95という数字はちょっと半端です。
血中酸素飽和度は%で表され、99~96%が正常だそうです。
つまり、正常な人が測定するとちょっと高めに見えるように「95」という数値を出したとしか思えません。
さらに、「血糖値、血圧、脈拍が測れる」とか説明していましたが、パルスオキシメーターで測定できるのは血中酸素飽和度と脈拍数だけで、脈拍しか合っていません。
血中酸素飽和度を血糖値の事だとあり得ない勘違いしてパルスオキシメーターの宣伝を作ったという解釈も不可能なでたらめさです。
新型コロナウイルスでパルスオキシメーターは有名になったし、血糖値を気にしている人ならば正常値くらい知っているでしょう。
いったい誰を騙すつもりで作った広告なのかと、むしろその点が気になって印象に残りました。
この広告も翌日以降見ていないので、さすがにでたらめすぎる広告として削除されたのかもしれません。
ネット広告以外、新聞や雑誌に掲載されたりテレビで流される広告の中にも怪しげなものはたくさんあります。
しかし、そうした従来からのマスメディアに掲載される広告以上にネット広告には怪しげな広告が存在するように思えます。
その原因は、おそらく仕組みの違いにあります。
新聞や雑誌ならば紙面のどこにどの広告を掲載するかはその新聞社や雑誌の出版社が決めます。広告主の要望もある程度聞くでしょうが、最終的に紙面に責任を持つのは出版側です。
どの広告をどこに載せるかは新聞社や出版社が管理把握しています。
テレビの場合も似たようなもので、CM用の枠のどこにどの広告を流すかはテレビ局側で管理しています。
広告の内容を詳細に検証することまではしなくても、公序良俗に反するものでないかとか、あからさまな嘘・大げさ・紛らわしい内容が含まれていないかくらいはチェックするでしょう。
法律で定められたことから自主規制まで、広告には従うべきルールがあります。
広告主と掲載するメディア、間に広告代理店を挟むにしても、それぞれの責任は明白です。
しかし、ネット広告の場合は少し状況が異なります。それは従来のマスメディアとネットとの性質の違いから来ます。
まず、ネット上で広告を表示できる場所は、従来のマスメディアに比べて広範囲にわたります。
もちろん新聞雑誌など種類も豊富にありますが、「誰でも自由に情報発信できる」と謳われたインターネットには及びません。
そして重要なことは、ネット上で情報発信している人や組織は、最初から広告収入を得ることが目的でない場合も多いということです。
既存のマスメディアの多くは最初から広告を掲載して収入を得ることを前提にそのための体制も整っています(例外はNHK)。
それに対して、ネット上の情報発信では広告収入を得ることまで想定せずに行っていることが多くあります。
最初から広告で収益を得るビジネスモデルの企業以外は、広告を掲載して収入を得るノウハウも体制もありません。
特に個人で広告主を探して広告料の交渉をするとかなかなかできることではありません。
それから、ネット広告の場合どのくらいの効果があるのかを推測する手掛かりがないので、広告主としてどのくらいの広告費を支払えばよいのか分かりません。
新聞雑誌なら発行部数、テレビなら視聴率のようにある程度公的なデータがありますが、ネットの場合そういったものはありません。
PV(Page View)は自前のサーバを立てて運営している場合、いくらでも値を操作できますし、全てのサイトで公開されている情報でもありません。
結局のところ、それなりに信頼のおける相手に対してしか広告の掲載を依頼できませんでした。
しかし、広告はなるべく広く行った方が効果が上がるし、個人のブログなどでも人気が出て有名になることもあります。
これを利用しないのは勿体ない。
と思ったのかどうかは知りませんが、そこに商機を見つけた誰かが広告主と掲載すするサイトを繋ぐ商売を始めました。
「アフィリエイト」という言葉を聞いたことはありますか? 「成果報酬型広告」とも呼ばれ、掲載した広告をクリックしたり、広告を見て商品を購入した場合に報酬が発生する方式のネット広告です。
ネット広告には他のメディアにない大きな特徴があります。
それは双方向性。
広告として情報を提示するだけでなく、それを見た人の反応を一部拾うことができます。
広告のリンクに細工をすれば、どのサイトに表示された広告がクリックされたか、リンク先の販売サイトと連携すれば商品の購入に至ったかまで追跡できます。
そうした広告を見た人が起こしたアクション、つまり効果のあった広告を掲載した相手に対して報酬を支払います。
アフィリエイトの仕組みを作り、管理運営することは個人や専門外の企業が自分専用のシステムとして自前で行うには負担が大きく割に合いませんが、専門の業者が多数の顧客と広告を扱うのならば採算も取れます。
アフィリエイトの仕組みを提供する業者をアフィリエイトサービスプロバイダ(ASP)と呼びます。広告を掲載するWebサイトやブログやSNS等はまとめてメディアと呼ぶようです。
広告主はASPに依頼すれば、ネット上のどこかに広告が掲載されます。
メディア側はASPに登録しておけば何らかの広告が掲載され、その広告が利用されればお金が入ってきます。
ASPは広告主側でも掲載する側でもないので、ある意味中立で、公正さを期待できます。
広告主は広告を掲載してくれる相手を探す手間が省け、効果が薄ければ広告費が押さえられるのでコストパフォーマンスが良くなります。
メディア側は、ASPのマージン分直接契約よりも収入は減りますが、広告の掲載で悩む必要が無くなり、自分の発信活動に専念できます。
一見良い事ばかりに見えますが、広告が掲載されるまでの過程はかなり複雑になっています。
従来のマスメディアでは、広告主→広告代理店→新聞雑誌テレビ等と一直線につながっています。
ネット広告の場合は、広告主→広告代理店→ASP→WebサイトやブログやSNS等となります。
間にASPが入っただけのように見えますが、ASPの部分で分断が発生します。
広告主とメディアの折衝をASPが肩代わりしてくれる代わりに、広告主とメディアとの関係は全くなくなります。
結果として、広告主は掲載するメディアを選べません。
例えば、テレビ番組にCMを流すのならば、番組のスポンサーとして明示されある程度番組に口出しできます。問題があればスポンサーを降りることだってできます。
しかし、ネット広告ではどこに広告が掲載されるか分かりません。広告は他社製品を推し自社製品をボロクソにけなすブログに掲載されたり、反社会的だったり差別的な思想をばらまくサイトに載るかもしれません。
広告主から見て、「こんな相手を支援したくない」と思うメディアに広告費が流れていくことを止めることはできません。
メディア側からしても、掲載する広告を選ぶことができません。
ギャンブル依存症に警鐘を鳴らすサイトにネットカジノの広告が表示されたり、多重債務で苦しむ様を綴ったブログに消費者金融やカードローンの広告が掲載されたりすることを、メディアの管理者は防ぐことができません。
そして、広告主でもメディアの管理者でもない一般の人にとって、ネット広告の仕組みはさらに訳の分からないものになります。
不適切な広告を見かけたとして、掲載されたメディアの管理者に苦情を言っても効果はありません。
メディア側に掲載する広告を選ぶ権利はありませんし、事前のチェックもできません。責任の取りようが無いのです。
せいぜいASPに苦情が来たことを報告するくらいですが、自分に責任の無い苦情処理に忙殺されるようになったら、個人で活動している人ならば情報発信活動を辞めかねません。
広告主側に苦情を入れることも可能ですが、信頼のおける有名企業ならばまだしも、詐欺や悪徳商法が疑われる広告の主に一般人が個人としてコンタクトを取ることは少々リスクがあります。
また、メディアの管理者経由でASPに連絡が行ったとして、きちんと対応できるとは限りません。
ここにもネット広告特有の問題があります。
従来のマスメディアなら、新聞でも雑誌でも掲載された広告は印刷物として現物が残ります。
テレビの場合でも、同じ時間に同じCMが放送されます。誰かが録画していれば証拠は残るし、テレビ局だってちゃんとCMを流した証拠として記録は残してあるでしょう。
対して、ネット広告の場合は掲載された広告が残りません。
広告が表示されたWebページを再表示したら別の広告が表示された、という経験をしたことのある人も多いでしょう。
掲載する広告を入れ替える度にメディアの管理者に修正してもらうのは大変なので、ASP側の指定で表示する広告を動的に切り替える仕組みを作っているはずです。
また、同じメディアを何度も見る人にはその度に表示する広告を替えた方がたくさんの広告を見てもらうことができます。
結果として、「何時何分にどこのサイトのどのページで見た」と正確に伝えても表示された広告を特定できるとは限らないのです。
画像だけの広告ならばスクリーンショット等で保存することも可能でしょうが、動画広告になると何の準備も無く保存して、後から「こんな広告があった」と示すことのできる人は少ないでしょう。
広告の表示についているアイコンから直接フィードバックできる仕組みを付けている場合もありますが、全ての広告ではありませんし、プライバシーポリシー等が表示されるだけの場合もあります。
そもそも広告の画像の隅に小さく表示されているアイコンに気付かない人や、気付いても意味の分からない人も多いでしょう。
だから、問題のある広告に気付いても多くの人がただ無視します。何かしようと思ってもどうすればよいのか分かりません。
責任の所在が分かり難くなっているのがネット広告なのです。
例えば、広告が掲載されたメディアの管理者に苦情を言って、そこからASPに連絡が行ったとします。
しかし、それで問題が解決されるかというと、そうとも限りません。
問題とされた広告の特定が難しいということもありますが、メディアや広告主から見てASPの先は完全にブラックボックスです。
アフィリエイトの仕組みを提供する業者が一社だけで全て完結しているとは思えません。
インターネット上のサービスは大きな資本や設備が無くても比較的簡単に始めることができます。
だから、技術やアイデア一本で起業するスタートアップやベンチャーといった小さな会社が気楽に参入してきます。
小さな企業から始まっても、当たれば急成長します。
特にASPの業務は多量の広告を多量のメディアに掲載して利益の出る仕事なので、無理をしてでも仕事を取って来て業務を拡大して行かなければ先はありません。
業務の拡大に会社の成長が追い付かず、手が足りなくなれば業務を外部に、つまり下請けに出します。
逆に、独自のアイデアがうまく当たらず仕事を取れない企業は下請けに回ります。
下請け企業でも手が足りないときは、二次下請け、三次下請けとさらに複雑になって行きます。
また、単純な作業の下請けだけでなく、たくさんの広告主を抱えた業者が登録されているメディアの多い業者に広告を提供するとか、他社のアフィリエイトシステムを借りて広告を流す業者とか、様々な企業の複雑な協力関係が考えられます。
メディアが責任を持てない以上、広告の掲載の可否を最後に決めるのはASPになります。
しかし、そのASPが複数の企業が複雑に絡んでいるとどの会社が責任を負うべきかが外部からはさっぱり見えなくなってしまいます。
私もこの業界の内情は知りませんが、報道番組で詐欺広告が掲載された経緯を追跡して追いきれなかった、といった内容の報道を見た記憶があります。
従業員の少ない小さな会社が、機械的に広告をメディアに振り分けるシステムを頼りに、膨大な数の広告を扱って利益を得ているのならば、全ての広告を事前にチェックする余裕はないでしょう。
あるいは、広告主から広告の依頼を取って来る企業の下請けとしてメディアに広告を掲載する部分を請け負っている企業ならば、多少怪しい広告でも拒否することは難しいかも知れません。
GoogleとかYahoo!とか、最初から広告で収入を得ている大手ならば広告主や広告の内容を審査し、問題のある広告を拒否する体制もできているでしょう。
しかし、後発の弱小企業では怪しげな広告でも受け入れなければ収益を確保できない、ということもあり得ます。
詐欺でも悪徳商法でも厭わない広告主と、そんな怪しい広告でも取り扱ってしまう業者が存在する限り、怪しいネット広告は流れ続けるのです。
怪しい広告を行う広告主や広告代理店、そうした怪しげな広告を配信してしまうASPなどの業者に対して、広告が掲載されるメディア側は全く問題がないかというと、そうは言いきれない場合があります。
掲載される広告の選別をASPなど外部の業者に任せている場合は広告に責任の持ちようがありませんが、直接広告主と交渉して広告を掲載しているメディアだって存在します。
ソフトウエアを配布するサイトで、「ダウンロード」と描かれたボタンの画像を貼り付けた広告を見たことがあります。
しかも、毎回のように表示されるので、広告主は掲載されるサイトを知ったうえでその広告を出しているのでしょう。メディア側が無関係とは考えられません。
配布される目的のソフトウエアをダウンロードするためのボタンと勘違いしてクリックされることを狙っているとしか思えません。
掲載される広告に関与していない場合でも、メディアはなるべく多くの人目を惹きつけて多くの広告収入を得ようとします。
例えば、一時期迷惑動画が大きく話題にになったことがあります。
傍迷惑な行為、モラルやマナー的な問題だけでなく、時には違法な行為まで行ってそれを撮影して、動画投稿サイト等で公開するという常軌を逸した行為です。
純粋に承認欲求で再生数を稼ぎたい場合もあるでしょうが、動画配信の広告収入は再生回数で分配されるから、炎上させてでも再生回数を増やして広告収入を得ようとする人も出で来るでしょう。
そこまで悪質でなくても、画面をひたすらクリック(タップ)しまくるブラウザ上のゲームで、終了と同時に同じ場所に広告を表示するようなものがあります。
これ、絶対に勢い余って広告を誤クリックすることを狙っていますよね。
メディアを視聴や利用しに来たユーザに対して、意図しない広告をクリックさせる行為はユーザに対しても広告主に対しても不誠実だと思うのです。
うっかりクリックした広告が、ワンクリック詐欺だったりしたら最悪です。
さて、やたらと胡散臭い「嘘、大げさ、紛らわしい」の三拍子そろった広告も嫌ですが、内容は真っ当でも鬱陶しい広告は存在します。
例えば、画面の端の方でちらちらと動く画像が気になったことはありませんか?
私は非常に気になったことがあります。
ものによっては画面の右や左に縦に長く伸びた結構面積の広い画像が派手に動き続けます。
画面中央の表示に集中しているときに視界の端でちらちらと動かれると非常に気になる場合があります。
見る人の気を引くことが広告の使命とはいえ、集中を乱されるのは鬱陶しいです。
また、音声付きの動画広告が流れることも珍しくなくなりました。
ブラウザでページを開いた時に、全く関係の無い音楽や言葉が流れ出すのは少々びっくりします。
最近では画面の片隅に表示される動画広告では音声がミュート状態になっていることが多いのですが、画面中央にでかでかと表示され、一定時間見ないと次に進めないタイプの動画広告ではいきなり大音量で音声が再生されることも珍しくありません。
しかし、最もうっとおしく思うのは、表示したページの上に被さるように現れ、閉じるまでその下のページを見たり操作したりできなくなる広告です。
これ、単に広告を消す一手間が煩わしいというだけではありません。
広告を消すためのボタンの位置はまちまちです。
上側、下側、右、左、中央。
ボタンにしても、「×」だったり「とじる」や「閉じる」だったり。
広告を消すためだけにボタンを探すことになります。
ある広告では「とじる」ボタンのある位置に別の広告では「詳細を見る」ボタンがあったり、クリックする位置がちょっとずれると広告のリンク先に飛んだりとなかなかに油断なりません。
アプリケーションのUIの設計を学んだことのある人ならば、「デザインを統一すること」「ボタンの配置や形状を画面ごとに変えてはいけない」などと言ったことを学んだのではないでしょうか。
同じ意味のボタンは同じような位置に同じ形状や文言で配置されるから画面を見ただけで迷わずに操作できるのです。
Webのページも、統一的なデザインで作られるものです。
少なくとも同じサイト、同じ管理者のページは特別な意図が無い限りはデザインを統一するものです。
その統一性を、広告がぶち壊すのです。
WebデザイナーもWebアプリの開発者も、挿入される広告にもっと憤慨してよいと思うのです。
さらに、広告が表示されるタイミングはページを表示した直後だけではありません。
マウスをクリックしたタイミングや、画面がアクティブになったタイミングで表示される広告も存在します。
場合によっては、二回三回と広告を消して行かなければ目的のページを見ることができないのです。
鬱陶しいでしょう?
さらに、ページを開いたときに表示される広告も、時差がある場合があります。
ブラウザの環境の問題か、回線や広告を提供するサーバの問題か、ページを開いてしばらく待ってからその上に被さるように広告が表示されます。
ページの内容を読んでいる最中に、いきなり中断させられるのです。
しかも、ブラウザ上のミニゲーム等で時間制限のあるものに対して、スタートボタンを押した後に広告が表示されて操作ができなくなる、なんてこともありました。
これは結構腹が立ちます。
慌てて広告を閉じようとして、クリックする場所を間違えれば広告のリンク先のページを表示することになります。
広告をクリックした際の動作にも、表示されている画面をリンク先のページに置き換える場合と、別のウインドウやタブを開く場合があり、どちらかを見極めて対処しなければなりません。
慌てると色々と誤操作を招きますし、正しく広告を消すことができてもタイムロスは発生します。
ユーザーを慌てさせ、誤動作に導くUIなんて論外です。
ゲーム内でミスを誘うのならばまだしも、ゲームの外で妨害するのでは言い訳できません。
余談になりますが、私は個人的にAjaxが好きではありません。
もちろん、便利で有用な技術だとは思っています。
この技術が無ければブラウザ上の地図は拡大縮小位置移動ができず、できたとしても毎回ページの再読み込みが発生して非常に使い難いものになったでしょう。
しかし、いくら便利な技術でも乱用するとろくなことにはなりません。
ブラウザ上のJavascriptが非同期通信でサーバからデータを取得して画面に反映するということは、ページの読み込みが終わった後で勝手に表示が書き換わるということです。
ページの読み込みが終わったからじっくり読もうとすると画面が変化して続きが何処に行ったのかを探す、被さって表示された広告を消す、リンクやボタンを押そうとしたら位置がずれて別なものを押してしまう等々、色々と問題が起こります。
静的なHTMLの場合でも貼り付けた画像の大きさによって文章の位置がずれたりレイアウトがちょっと変わったりすることがあります。
ですが、それはページの読み込みが終わるまでの話で、ブラウザに表示される読み込み中の表示や読み込み中止のボタンが消えればそれ以上動くことはありません。
しかし、Ajaxを使用して表示の書き換えを行うと、それがいつ終わるのか分かりません。
通信環境やサーバ側の負荷などの外部要因、クライアント(PCやスマートフォン)側の処理能力なども絡むので予測ができない面もあります。
結果として、「突然文章や画像が挿入される」「スクロールしながら読んでいたらいきなり先頭に戻された」「ボタンが逃げる」なんてことが起こります。
様々な理由があってそのような作りになっているのでしょうが、不必要に後からページを書き換える処理はしないで欲しいです。
私はネット広告自体は必要で有用なものだと考えています。
新しいサービスや商品をそれを必要とする人に教える広告本来の役割もありますし、広告収入で運営されているから無料で提供されているサービスと言うものもあります。
インターネット上のサービスの中には、使ってみれば便利だけれど、最初から有料だと試してみる気にもならないようなものも多くあります。
ネット広告とは上手く付き合っていく必要があるのでしょう。
だからこそ、犯罪に巻き込まれかねない危険な広告は徹底的に排除されるべきだろうし、ネット広告の信用を失わせるような怪しい広告も可能な限り止めるべきと思います。
そして、広告が邪魔をしてネット環境が不便にならないように、ネット広告の工夫は操作を邪魔しない方向で進んで欲しいのです。
ネット広告以上に無法地帯なのがスパムメールです。
電子メールの仕組み的に迷惑メールの送信を防ぐことは難しく、個人宛のメールなので通信の秘密とか検閲にならないかとかの問題もあります。
その結果、大量の詐欺メールが送られてきます。
そんな詐欺メールの中にこんなことが書かれたものがありました。
「2024年 南海トラフ地震災害義援金の募集について」
このメールが送られてきたのが8月10日、九州で地震が発生して南海トラフ地震臨時情報が発表されてから二日目の事です。
昔からこの手の詐欺は最新の話題に素早く対応して来るものですが、発生していない震災を利用するのはちょっと気が早すぎると思うのです。




