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駄文庫  作者: 水無月 黒
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ハロウィンは日本に定着したか

 十月になると街中でカボチャや洋風のお化けのデザインの飾りをよく見かけるようになりました。

 ハロウィンは日本でもすっかりお馴染みになりました。

 しかし、ふと思うのです。日本にハロウィンは定着したと言えるのでしょうか?


 日本では古来より中国などから様々な風習を取り入れ、場合によっては日本流にアレンジしてきました。

 しかし、他国の風習が日本の風習として定着するためには長い時間がかかると思うのです。

 Wikiによると、日本では1990年代後半にディズニーランドでハロウィンイベントが行われたとか、個別のイベントとしてはもっと以前に行われたものもあるようですが、一般的になってきたのは今世紀に入った後、特に普及したのはここ十年くらいだと思います。

 一時のブームと言うには長いですが、風習として定着するには少々短いと思います。


 海外から入ってきた風習が短期間で広まるには、それなりの下地、需要があってのことだと思います。

 例えば、キリスト教徒が多いわけでもない日本でクリスマスが広まった背景には、「クリスマスケーキやちょっと豪華な料理を食べる日」「子供にプレゼントを渡す日」として需要があったからだと思います。

 戦後の復興期に日本人はがむしゃらに働きました。その結果経済は成長して豊かになり、それでもまだ働きまくって日本人働き過ぎなどと批判されるようにすらなりました。

 しかし、如何に働くことが大好きで国中ワーカーホリック状態だったとしても、経済的に余裕ができればちょっとくらいは贅沢してみたくなるもの。頑張った自分へのご褒美、みたいな発想が出て来るのはもう少し後にしても、年に一度くらいは普段はしない贅沢をしてみようという気になったことでしょう。

 そう言った、たまにちょっと贅沢したいという需要にクリスマスはちょうどよかったのだと思います。

 当時はまだ高級品な感のあったケーキや普段は食べない洋食を家族で食べ、まだ「贅沢は敵」な空気が残っていて子供に高価な玩具等を与えることは教育上もよろしくないと思われていた時代にそれでもちょっと高価な玩具を買い与える。

 そのようなちょっと贅沢をする口実にクリスマスはちょうどよかったのだと思います。時期的にも年末に近く、ボーナスも出て懐も温かいと好条件がそろっています。

 だからキリスト教の宗教行事は脇に置いて、ただのお祝い事としての部分のみを取り込んだのだと思います。


 同じく海外から入ってきた風習にバレンタインデーがあります。これもまた日本の需要にマッチして広がったものだと思われます。

 元々バレンタインデーは単に恋人たちの日であり、女性から男性にチョコレートを贈るというのは日本独自のものです。この日本独自の部分が、日本の女性の需要に見事に合致していました。

 昔の日本は女性から男性へ積極的にアプローチすることはタブー、とまではいかなくてもはしたない、やってはいけないことでした。しかし、当然ながら、女性の側にも意中の男性に思いを伝えたいという気持ちはあるわけです。

 日本流に改変されたバレンタインデーは、この女性の需要を見事に満たすことができたのです。

 まず、西洋の風習だということで、日本の習慣と多少ずれていてもそんなものだと受け入れやすいです。チョコレートを贈るというのも、直接言葉で意思表明するよりもハードルが下がります。今では負担と感じる女性もいる義理チョコなども、本命の相手を分かり難くし、チョコを渡すことへの抵抗を下げる効果がありました。

 逆に、男性から女性へ積極的にアプローチしたりプレゼントを贈ったりすることに対しては制限はなく、むしろ男性は女性を積極的にリードしなければならないというのが日本の恋愛文化でした。

 このため、バレンタインデーの成功に二匹目のドジョウを狙ったホワイトデーに男性側の需要は全くありません。ホワイトデーがバレンタインデーのお返しという義務感ばかりでいまいちパッとしないのは、男性側に需要が無いためだと思います。


 さて、話をハロウィンに戻します。日本にハロウィンに対する需要はあるのでしょうか?

 子供にお菓子を配るイベントとしては、時機を逸したと思います。食糧難の時代ならば、たまに子供に美味しいお菓子を食べさせてやりたいと思うでしょうし、洋菓子が珍しい時分ならば喜ばれたことでしょう。しかし、今はそう言う時代ではないと思うのです。お菓子で喜ぶ子供の年齢層はだいぶ低そうですし。

 少子化や子供の貧困が問題となっている昨今、地域ぐるみで子育ての一環としてハロウィンのイベント(トリックオアトリート)を取り入れるのはありでしょうが、小さな子供に限定したものであり、それだけでハロウィンを定着させる力があるかと言うと疑問です。

 では、洋風のお化けやモンスターに仮装するイベントとしては需要があるでしょうか?

 これもちょっと疑問です。誰かの企画したイベントに乗っかって仮装することはあっても、自発的に仮装した人が集まって仮装行列が始まるなんてことはほとんどないでしょう。

 各家庭内で仮装しているという家もほとんど無いのではないでしょうか。小さな子供のいる家庭ならば子供に色々な衣装を着せて楽しむこともあるでしょうが、日本の大人だけの家庭でハロウィンパーティーをやっている光景が思い浮かびません。

 そもそも、ハロウィンが10月31日だとしっかりと憶えている人はどのくらいいるでしょうか?

 だいたい十月になったあたりから、ジャックオーランタンの飾りとか、Webページのハロウィンバージョンとかが溢れるようになるので、日付まで意識している人は少ないのではないでしょうか。


 日本でハロウィンが広まった背景には、一般消費者の需要よりも、店側の商戦の都合が大きいのではないかと思います。

 ちょっと一年間のイベントを思い起こしてみてください。

 一月はお正月。初売りと福袋。

 二月は節分とバレンタインデー。

 三月は桃の節句。早ければお花見。

 四月は花見と年度初め。新入学、新社会人の季節。

 五月は色々纏めてゴールデンウイーク。

 六月は特にないけど、ボーナスシーズン。

 七月は七夕と夏休みや海開き。

 八月はお盆。お中元も七月から八月あたり。

 九月はシルバーウイーク。

 十月にハロウィン。

 十一月は何かあったっけ?

 十二月はクリスマスと忘年会と年末。ボーナスシーズン。

 ざっと書き出してみましたが、九月から十一月は商戦的には弱いのです。九月のシルバーウィークはゴールデンウィークの二番煎じという感じで期間も短くいまいちですし、十一月は七五三があるくらいで今一つ商戦に繋がる大きなイベントがありません。

 そんな中、十月にハロウィンセールを入れることで商戦の中だるみを防ぎ、売り上げや客足を維持しようとしているのだと思います。

 このような、ハロウィンセールや人寄せのためのハロウィンイベントが企画されなくなれば、日本国内ではハロウィンはあまり騒がれなくなるのではないかと思います。


 それからもう一つ。日本に入って来ていない海外のイベントで有名なものに、イースター(復活祭)があります。

 このイースターは年によって日が違うのですが、時期的には四月ごろです。つまり、花見や新入生、新社会人セールにばっちりぶつかるのです。

 このため、日本ではイースターセールは必要とされないでしょう。キリスト教徒も多くないので、宗教行事としてもメジャーにはなりません。

 おそらく、日本ではイースターは普及しないと思います。バレンタインデーのような日本に需要を掘り起こす改変ができない限りは。


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