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前編:絶望と希望とお話し合いの断罪会場

「エレーン=ダ・リストラリア公爵令嬢! 貴方との婚約破棄をここに宣言させていただく!」

 ああ、結局回避できなかったかぁ。

 あ、私エレーン。ごく普通の公爵令嬢。

 しいて違うところを挙げるとしたら王太子殿下の婚約者だってことかなぁ。今破棄されたけど。

 一応友好関係築こうとしたり頑張ったんだけどなぁ。

 ちなみに私は転生者でこの世界が生前ドハマリした乙女ゲームの世界で、今攻略対象が隠しキャラ以外全員揃った状態で悪役令嬢として断罪中です。よろしくね!

「理由をお聞かせいただいても?」

「貴方の胸に聞いていただければ良かろう」

「一切覚えがございませんわ」

「それな」

 ……はい?

「ちょっと殿下! 素! 素が出てる!」

 待って、なんで王太子殿下が『それな』とか言ってヒロインがツッコミ入れてるの?

 というかよく見たら後ろの王太子側近の宰相子息、騎士団長子息、最年少宮廷魔術師、悪役令嬢の腹違いの弟つまり私の異母弟、全員ちょっと申し訳無さそうな顔してるしこれは一体何なの?

「あ、あー……つまりええと」

「殿下、とりあえず決定内容、じゃないと話進まないから」

 おいうちの弟よ殿下に耳打ちすんな。

 あと聞こえてる! 私まで聞こえてるから!

 というか。

 これは。

 まさか。

「あ、うんそれではサトコ=ホンダ子爵令嬢に対する傷害・器物破損などの罪で……」

「ストップストップ!! いや勝手に話進めないで!」

 待ってそんな名前だったのヒロイン!

 今までヒロインとしか認識してなかったから超聞き流してたけどめっちゃ日本人名じゃん!

 あとそういえばこのゲーム、ヒロインにデフォルト名ないんだけど……つまりこれは!!

「時を司る至高の導き手、その流れよりひとときこの空間を切り離し給え! 『タイムストップ』!」

 ――突然の最上位魔法に驚き慌てる……のは王太子殿下と側近ズとヒロインのサトコちゃんだけだ。それ以外の人物は僅かに薄い青に輝く結界の向こうで、全く動きを止めている。

「時を操る至上魔法……まさか!」

 サトコちゃんの言葉に私は扇を投げ捨てながら答えた。

「ええ、ハーレムルート後に悪役令嬢の処刑を選んだ場合のみ、隠し攻略対象ルートが開くと同時に悪役令嬢がそのルートのラスボスに設定される、そのラストバトルにのみ使用される最強魔法、効果は実質的には味方全員が3ターンの行動不能……」

「へっ」

 全員が顎が落ちたような顔で間抜けな声を上げた。

 その顔したいのはこっちの方だよ。

 てかさぁ!!

「そのゲームシステムを完全に理解している言動……まさか!!」

「そのまさかよ!!」

 淑女にあるまじき勢いで全員に人差し指を突きつけながら、いろいろとかなぐり捨てた前世の口調で私は思いっきり突っ込んだ。

「つーかお前ら全員転生者側かよ!!」

 道理でなんかストーリー通りに進まないし全員性格も違うと思ったよ!

 ヒロインと攻略対象ズが仲良くしてるのと、断罪イベントに向かってるなぁという雰囲気があったから、まぁ誤差かなぁって思ってただけで!

「ご、ごめん僕もなんか違和感はあったんだけど……知ってたのと性格違うし……」

「わかるけど! 私もある程度歩み寄ろうとするたびに殿下の性格がそこはかとなく違うなぁって思ってたけど!」

「ごめんあたしはちょっと全体的な流れをチェックするのに目一杯でそこまで気付けなかった」

「私サトコちゃんのこといじめてないもん!」

「いやー教科書とかは破られてたし水もかけられたけど、ゲーム内でも悪役令嬢以外にもいじめられてたから誰が、とかあんま気にしてなかった。ごめん」

「気にして!? というかむしろそれ知ってたら止めたわよ!?」

「大丈夫大丈夫、ブラックコールセンターの15連勤パワハラ付きコースに比べたら余裕!」

「んなもんと比べるな!!」

「そうなんだよサトコちゃん可哀想すぎるんだよ前世が……」

「アンタも知ってたなら言いなさいよエリック!」

「まさか姉上も転生者だとか思ってなかったから適度に疎遠にしとかなきゃ上手くストーリー進まないと思ったんだようごめん!」

「というかそもそもなんで全員転生者なのにハーレムルートなんて受け入れたのよ!」

「だって一応真相ルート解放しとかないと他の妙なタイミングでいきなり古代浮遊大陸の復活されたら困るじゃん!」

「あれ結構びっくり展開すぎたよねー」

「親方! 空から大陸が!」

「落とすな」

「しかし復活タイミングがわからないと困るってとこまではわかるけど! それ私処刑確定じゃない!」

「あっそれはなんかなんとかするつもりだった」

「なんとかって」

「具体的にはとりあえず内々に処刑したことにしておいて、それからぼかした感じに事情を説明して協力を仰ごうかと」

「エレーン嬢も転生者だったおかげでその辺の手間が省けましたね!」

「ちょっと騎士団長子息ええと名前なんだっけそうだアレオス! アンタは転生してんのに脳味噌まで筋肉なの何なの?」

「あーうん、ちょっと正直鍛えた筋肉に引きずられてる面はある」

「えっそれ言っちゃう?」

「別れ話がこじれて窓の外に投げられたスマホの中に入ってた乙女ゲームのデータは復元できないけど筋肉は裏切らない」

「ゲーム全然悪くない!」

「というかスマホの乙女ゲームを全員知ってる状態で転生してるってことは若いうちに死んだ感じだし、割とみんな前世の死に様とか壮絶っぽいね」

「あんまし追求するのやめよう怖いから」

「うん、今の人生を大事にしたい」

「私の今の人生も大事にしてあげて!」

「オオゴトにはなってるよねぇ」

「無駄に漢字を前提としたジョークやめて! 確かにここにいる全員通じるけどさぁ!」

「というかこれどうするかとりあえず考えよう。うん」

「私全然わかってないからどうしてここまでの流れになってるのかも含めて説明よろしく」

 というわけで前世は乙女ゲームのプレイヤーだった私達、この世界への転生者は。

 前世で培ったジャパニーズお話し合い技術を駆使して状況確認とこれからの方針の相談をすることになったのでした。


 最初に自分が転生者だと気付いたのはやはりヒロインのサトコちゃんだったらしい。

 というか前世でぶっ倒れて視界が暗転したと思ったら次に目を覚ますとへその緒で母親と繋がってたんだって。壮絶だ。

「正直発声能力がなくてほんと良かったわ。じゃなかったらあの地点で泣き声じゃなくて悲鳴上げてた」

「そりゃあなー流石に生まれた時のこととか全然覚えてないや」

「しかも明らかに文化圏の設定がヨーロッパモデルだったのにフルネームが完全に前世の名前だったという謎の絶望」

「ホンダだもんな」

「ホンダ子爵」

「明治時代にいそう」

「でもってサトコだもんな」

「やめて! まだ古傷でもないものを抉らないで! 私に選択肢はなかったんだからー!!」

 つまりデフォルトネームがなかったから勝手に前世の本名を設定されたのか。可哀想すぎる。

「まぁとりあえず隠しルート含めてエンディングまではバッドエンドまでコンプしてたから、他に誰も転生してなくても何とかなるようにしつつ、全問題点解決策できるようにハーレムルートから裏ルートまで行くのはずっと予定してたし、とりあえずゲーム通りにトレーニングしたらステータス伸びたからガンガン育っといた」

「あ、それ私もやったわ」

「マジか悪役令嬢」

「だから今使えるのよタイムストップ」

 ちなみに私が転生者だと気付いたのは王子と初めて会う日の朝、6歳の頃だ。その後半年もすると順調に婚約が結ばれた。

 ちなみに私のステータスもゲーム内のトレーニングで順調に上がった。

「でもタイムストップってラストバトルでしか使わなかったよね?」

「うん、なんか試したらできた」

「試したらって」

「使えるものないかなーと思ってうちの蔵書漁ってたら、無属性魔法の魔導書出てきちゃって」

「あっそんな設定確かにあった!」

「そうそう。私も習得してからこれ原作にあったじゃんって思い出したけど」

「てかエレーン嬢とサトコちゃんはどっちもガチ勢か」

「ヒロインと悪役令嬢が前世で同じ攻略サイト見てたかと思うとじわじわ笑えるな」

「そこ! 私の攻略情報に頼りきりだったくせに笑わない!!」


 ちなみに王太子テオレイシウス通称テオは私との婚約の頃、異母弟のエリックは我が家に引き取られた私9歳で彼が8歳の頃には転生者だと気付いたらしい。

 しかしこの10何年、私達はお互いに転生者であることを何とか隠して取り繕って来たせいで全くお互い知らなかったのである。

「いやーまぁ姉上ってば割と優しいじゃんとか思ってたど」

「わかるわかる、悪役令嬢にいつなるのかとか、俺が何かやらかしてそれがターニングポイントなんじゃないかとかすっごい緊張した」

「こっちも頑張って仲良くなろうとしたのは打算も確かにあるけどね……てか原作と同じことしたら破滅への一直線だし」

「でもそこで気付くには情報が足りなかったよね」

「口にしたところでもしエレーンが転生者じゃなかったら、狂人扱いで廃嫡とかされそう」

「王太子廃嫡タイムアタック」

「そんな乙女ゲーム嫌だ!!」

 ちなみに宰相子息のフレディムと騎士団長子息のアレオス、最年少宮廷魔術師のキリルは、サトコちゃんと会ったのをきっかけに前世を思い出した組だ。つまりはオープニングにあたる王立学院の入学式。

「目が合うたびに電流が走ったみたいなわかりやすい反応してくれるから特定が楽だったわ」

「なんでよ! 私かせめてテオ殿下と会った時に思い出してよ! そしたら話が早かったじゃない!!」

「一応その辺は主人公補正というか……」

「そりゃそうだけど」

「というかゲームと同じで私の行動が何やってもフラグになるんだよ! ゲームにないフラグまで立ってて怖かったし、いつ立てるか分からないフラグなら自分で立てねばと決意を新たにしてみたの!!」

「私が悪役令嬢に仕立てられていたと」

「あっちゃんとここの面子には情報共有してたんで」

「せやな」

「あとねーエレーンの断罪はやっぱりどのルートでも通るせいかどうしても避けられなくて……」

「何もしてなくても何故か揃うんだよね証拠が」

「何それ怖い! 私も何もしてない!」

「僕らも怖かったよ! 姉上が絶対やらない悪事の目撃者とか出てくるんだもん!」

「そうそううっかり肩が当たって『あらごめんなさい』『いえ私こそすみません!』ってすれ違っただけの会話の翌日に『実はエレーン様が足を掛けるの見てました!』って勇気を振り絞った女の子が来たり」

「元の出来事に足要素どこにもなさすぎない?」

「しかも何かの強制力は感じるけど裏はなかった」

「そこは俺が影まで使って調べたから確定していいと思う」

「王家の影そんなことに使われてたのか……」

「いや次期王妃が冤罪かけられてるんだよ!? ここで使わなくてどこで使うの!?」

「でも婚約破棄するんでしょう?」

「それはごめん! でも改めてプロポーズし直すつもりだったんだ!」

「えっ死んだことになってるのに!?」

「それこそ古代浮遊大陸の問題解決に協力してもらうための方便だったってことにする予定だった。ついでに反リストラリア家の貴族が新しい婚約者とか用意してくるだろうから、リスト作っとこうと思って」

「リスト……?」

「俺のエレーンに何か不利益なら即消すリスト」

「怖い!!」

「むしろ他に婚約者勧められた地点で不敬罪で斬りたい」

「物騒!!」

「だってゲームとか関係なく好きなんだよエレーン!!」

「待って聞いてない!」

「言ってなかったの! 何か変なフラグ立ったら困るし、しかも君の悪評は何か知らないけど勝手に耳に入ってくるのに調べたら裏付けもないし! でも俺エレーンのことすっごく好きだから! 正直ゲームでも推してたけど悪役令嬢じゃない頑張る君もほんと大好き! 結婚して!!」

「は? ……は、はい? 推してた?」

「だってよく考えたら真っ当に努力家じゃん……俺、エレーン戦のメモリアルバトルだけは課金したし、1日1回は最強難易度のエレーンに倒されてたくらい好き……でも今目の前にいるエレーンは俺と一緒に育ってきた幼馴染でまだ闇堕ちしてなくて努力家なところは変わらなくてしかも前世知識でタイムストップの先行習得してるとか凄すぎて惚れてたけどさらに惚れた! 結婚して! しないならいっそ殺して!!」

「愛が重い!?」

「そうだよもう拗らせオタクだよ知ってる! でも俺は中の人も好きだと言いきれる!」

「中の人言うな」

「だってそうじゃん! というか姿形はゲーム通りのエレーンだけど、俺の好きな君の性格は中の人のものなんだから!」

「つまり合わさって」

「最強に俺の嫁」

「この拗らせオタクめ!」

「ネタ振る地点で君もオタクだから何も問題ないね!」

「というかこれだけ拗らせてる奴によく婚約破棄を口に出させたよね……」

 どやかましい(まだ)婚約者をいなしつつ振り返ると、サトコちゃんとエリックとアレオスが遠い目をした。

「何だったら全てが終わったらお前を廃嫡追放してエレーン嬢とくっつけてやるからって頑張って説得した」

「えっ私まで知らない間に巻き込まれてる!?」

「流石にその時はリストラリア家の領地に王都から遠いけど暮らしやすい伯爵領があるし、それを姉上に譲ろうかと」

「人生計画立てられてるー!?」

「とりあえずその時には俺も廃嫡されて着いて行って、地元の騎士団に就職してやるからって」

「私が転生者じゃなくても勝手に決めていい範囲を超えてない!?」

「フラグが……」

「怖くて……」

 まーたフラグか!!

「転生者だったら物理現象として起きることは避けられないけど、起きたことに対する違和感には気づけるし、後から周囲の状況には修正というか強制力が働くけどある程度は回避もできるんだよ。でも……」

「私が転生者じゃなかった場合、私に話したこと自体がどんな形で修正されるかわからなかったってことでオーケー?」

「だいたいその通りです」

 サトコちゃんの言葉にその場の全員が頷いた。

「あとやっぱりエレーン様、擬態上手すぎて……」

「一般人かと思ってしまって……」

 フレディムとキリルの文官ズが頷く。全くもって余談だけど、騎士団の魔術師団と宮廷魔術師は完全に別管轄で、個人的交流はあっても職務的な協力はほとんどない。なので宮廷魔術師のキリルは文官である。

 だから騎士団のアレオスよりも宰相子息であり既に文官としての配属が決まっているフレディムとの方が接点も多く距離は近い。

 ……ん?

 いやそれにしても近すぎない?

 ふと気付いた可能性にその真偽を確認すべく、私は慎重に口を開く。

 ――結論から言うなら全くこの時に解明しなくてもいい事実だった。寄り道にも程があった。しかもつついたら特大の蛇が出た。

 私も思考力が鈍ってたんだよもう!

 いきなり急展開すぎるんだもん!

「気付かなかった私が言うのもだけど、貴方達の擬態が下手なのでは」

「うっ」

「やめて前世の古傷が疼く」

「ほらそういうとこ! ホイホイ古傷と右腕と邪気眼疼くとこ!」

「流石にそこまで厨二はしてなかった!」

「ちょっと掛け算しただけで?」

「そうそう掛け算……はっ!?」

「な、フレディム!? そんな……」

 がくりと膝を着くフレディム。だからそういう全てが芝居がかってるとこだぞこれだからオタクは。

 ちなみにこの「これだからオタクは」は基本的にオタク同士での自虐系やり取りなので、外部から言われるとめちゃくちゃ怒る。そういう難儀な生き物なのだ我々は。

「すまない、キリル……私は、私は腐女子だ!」

「今は腐男子だけどなー」

「アレオス茶々うるさい」

「あ、ちなみに俺は雑食なんでもあり」

「聞いてない」

「そんな、フレディム……それじゃ、僕と一緒にいたのは……」

「ああ……」

 フレディムがゆっくりと立ち上がり、小柄なキリルの肩に手を置く。

「君と私のカップリングが1番好きだったんだ!!」

 うん知ってた。

「ぼ、……僕も……」

 この展開も読めてた。

「まさか、キリル……」

「そう、僕も君とのカップリングが1番好き!」

「キリル!」

「フレディム!」

 がしりと抱き合う2人。ちなみに私もBL二次創作も読むので特に問題はなかった。

「おめでとー!」

「おめでとー!」

「おめでとう!」

「めでてえな!」

「おめでとー!」

 みんなで拍手で祝福。自分達同士が推しカプなのと恋仲になったのは微妙に違う概念じゃないかと思ったが、気にしないことにした。

「キリル……これで僕達のフレキリ生活が幕を開け」

「あ゛?」

 おおっとここでキリルの口からドスの効いた声。

「んん、聞き違いだよね! めくるめくキリフレの……」

「はいぃ?」

 フレディムからは某推理ドラマの刑事みたいな疑問形!

「おっ戦争か?」

「アレオスは脳筋感覚で煽らない! カップリング論争は後でやんなさい!」

「でもこれだけは!」

「譲れないところ……!」

「そろそろ私の魔力が限界!」

「え」

「それって」

 そう、この空間は私が維持しているもの。

 ゲームと違っていくらでも延長はできる。魔力が続けば。

 あくまで! 私の魔力が! 続けば!!

「とりあえず私の処遇については根回し済んでるのよね?」

「もちろん!」

 力強く頷くサトコちゃんの横で、テオが泣きそうな顔で叫ぶ。

「急いで迎えに行くから! 今回のことでエレーンも転生者だから強制力に抗えるってわかったし、また一緒にいられるようにするから!」

 目を潤ませ始めたテオに、一同が次々にツッコミを入れる。

「殿下そういうとこが重いんですよ」

「ヤンデレ手前ではあるよね」

「そこでカップリング論争してたお前らが言うな!」

「してたじゃない」

「まだ終わってない」

「だろうけど続きは2人だけでやってよ!」

「ベッドの上で?」

「アレオスは黙れ」

 ほーらまた脱線してるこれだからー。

「ほら! とりあえずテオが『それな』って言う直前まで戻すから続けて、流れはだいたい覚えてるから私が合わせるわ」

「えっ時間戻す魔法まで使えるの!?」

「同じ魔導書の記述応用してみたらいけた! でも馬鹿みたいに魔力食うからもうそろそろ使うわよ!」

「オーケー! はいみんなも立ち位置戻って!」

 動き出したサトコちゃんと側近ズの中でまだこっちを見つめたままのテオに、私はびしりと扇をつきつけた。

 そりゃあもう、悪役令嬢仕草の粋と言わんばかりに。

「私が貴方より良い男を見つける前に来なさい」

「え、……え、ぁ、ええ!?」

「私、重い男より待たせる男の方が嫌いなのよね」

 ツンデレか。

 言ってて自分で思ったけどツンデレか。

 ――でも。

「はい!!」

 予想通り、テオはめちゃくちゃいい笑顔で頷いて――そのまま魔力の輝きが私達の間を遮る。

「すぐ行くから」

 僅かに聞こえた声と共に――私達は断罪の場に戻ってきた。

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