一般男子高校生の現実 〜鈍感系に!俺はなる!〜
ほぼ処女作です。
ラブコメを読んでいて、お前一度くらい刺されろや!って思ったことのある人に読んでいただけると幸いです。
「はぁ〜、もっと欲望に忠実になれよ」
俺の名前は天城海斗。成績は中の上くらい、容姿も普通。陰キャではあるが友達0という訳でもない至って一般的な高校2年生の男子である。
最近はラブコメにハマっていて色々な恋愛を見て、妄想してきたが現実は非情である。
中3の頃に1度彼女ができたが俺が奥手だったし受験シーズンに近かったということもあって特に甘ったるいこともなく直ぐに別れてしまった。
正直俺はラブコメのような恋愛がしたいというよりは色々な女の子から好意を持たれたい。要するにモテたいしあわよくば色々なこともしてみたいという欲望に忠実な男である。
そんなわけだから俺にはどうしてもラブコメが素直に楽しめない。その原因は、殆どのラブコメは、美少女数人から言い寄られている癖に結局1人としか関係を持たないということである。
まぁ、確かに倫理的にはいけないことだとわかってはいるんだが、そこはまぁ、創作物だし?手を出してもいいんじゃないかと思っている。
というか、もし俺がその立場になったら絶対に我慢できないと思う。
「俺もラブコメの世界に入りてぇなぁ」
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翌日、俺は学校に来ていた。
「おはよー」
「死ねっ、リア充が」
「おぉーこわいこわい」
教室に入ると幼馴染である浅井が話しかけてきた。ラブコメだったら幼馴染っていうと可愛い女の子なんだけどなぁ…
浅井は普通の男だし特別モテはしないが性格は良いし彼女もいる。うーん、羨ましい。
「なにかあったの?」
「いやさ、ラブコメしたいなぁって思って」
「ふーん…なら海斗が主人公っぽくなればいいんじゃないの?」
「は?どういうことだよ」
「海斗が主人公っぽく振る舞えば海斗も主人公になれるんじゃないのかな?って」
「なるほど、一理ある」
「それでラブコメの主人公ってどんななの?」
「んー、じゃあ俺陰キャぼっちで鈍感系主人公風になるわ。まぁこの学校何故か女子だけは揃ってるからな」
「へぇ、まぁ頑張れってね」
そう、この学校にはラブコメのヒロインになれるような人がしっかりいるのである。
だからここで俺はいけるんじゃないかと思った。否、思ってしまった…
こうして俺とヒロイン(予定)の勝負が始まった…
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俺が鈍感系陰キャぼっちになりきると決めた翌日。メガネを掛けて教室の隅っこの方でぐでーっとしていると…
「寝るな雑魚」
「は…?」
なんと学校内でも美人なことで有名な学級委員長が話しかけてきた。
え、これマジでラブコメ始まるんじゃね?と思いながら委員長の方を見ていると、
「何ジロジロ見てんのキモ」
「ぐふっ」
よ、容赦ねぇ…こいつ美人だけど言葉キツすぎだし可愛げ無いんだよなぁ…
まぁ1部の生徒にはそんなとこが人気らしいが生憎と俺はそういう趣味ではない。
ハッ、いや待てよこれはもしやこいつ実はツンデレなんじゃないか…?ワンチャン脈アリ?
よし、ここは鈍感系らしくいこう。
「あ、すいません…」
「学校でダラダラしてんの見ると腹立つから死んでね」
そう言って委員長は去っていった。
あ、これ脈ナシです対戦ありがとうございました。
てか鈍感発動すらさせてくんないのな。
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数日後、俺は忘れ物を取りに放課後に教室に戻ってきた。するとそこでは…
「あ、あの、俺、皆川さんのことが好きです!」
「ごめんねー?私他に好きな人がいるの」
なんと告白シーンに出くわしてしまった。
この皆川という女子も学校では有名な元気系美少女である。なんでも百人斬りしたとか…
いやまぁ噂に尾ひれがつきまくった結果ではあるが実際にモテモテなのは知っている。
これは男が去った後に素を出したりしてそこをたまたま目撃してしまって仲良くなるパターンなのでは?とか考えていると…
「あーあ、みんな同じかぁ…」
お、これはもしかするんじゃないか?
「ガタッ」
「だ、だれ!?」
「あー、すいません」
「聞いてた…?」
「えーっと、はい、聞いちゃいました」
「ふーん」
そう言って俺の顔をジロジロ見てきた。
わぉ、これ絶対ラブコメっぽいフラグ立ってんじゃん。
「モブ顔…」
「えっ?」
「私、イケメンが好きだから、それじゃ」
「フ、フラグクラッシャー…」
現実は非情である。
くっ、やはりイケメンじゃないとラブコメは成立しないのか!?
こちらも残念ながら脈ナシであった…
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さらに数日後…
俺は休日に普段の行動範囲から少し離れたショッピングモールに来ていた。浅井の誕プレを買うためである。幼馴染のくせに男だということが納得いかないがそれでも俺の大事な友人であるしなんだかんだ仲は良いのでやっぱり誕プレくらいは送ってやりたいと思う。
誕プレについて考えながら歩いていると…
「ねぇねぇお姉さん、俺たちと遊ばない?」
「え、あの、友達を待っているので…」
「えー、いいじゃん少しだけだしさ」
「いや、あの…」
ほえー、今どきこんなナンパするやついるんだな。まぁとはいえこれはチャンスだ。ここでカッコよく助けることで惚れてしまうというシナリオが出来上がる。ふふふ、俺こう見えても意外と勇気はあるんだぜ?そうやって助けるカッコイイ俺の姿を妄想していると、
「ほら、とりあえずさ、一緒に来てよ」
そう言ってナンパ男が女性の手を掴んだ…
瞬間、
「穢らわしい手で触んな!」
「ひえっ」
ドスの効いた声で女性がナンパ男を背負い投げしていた。え、なんで?どういうこと?
「俺は男なんだよ。それともあれか?そっち系のやつなのか?」
えぇ…あんな綺麗なのに女装なのかよ…
周りの人も同情の目を向けていた。
主にナンパ男の方に…
それっぽいフラグは立つくせにことごとく潰されている気がするなぁ?
やっぱり俺には主人公にはなれないのだろうか…
そんななんとも言えない気持ちになりながらも俺は買い物をした。
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数ヶ月後…
俺は自宅で父親と向き合っていた。
「海斗、大事な話があるんだ」
「何?」
「母さんが亡くなってからは今まで父さんは1人でお前を育ててきただろう?」
「そうだね、感謝してるよ」
「あー、それでだな、実は…うーん…」
「うーん?んー、もしかして再婚とか…?」
「あ、あぁ、そうだ!父さん再婚しようと思うんだが、どうだ…?」
これは可愛い可愛い義妹パターンなのでは…?
「俺は父さんの好きにしたらいいと思うよ」
「そうか!ありがとな!」
「あーっと、ひとつ聞きたいんだけどさ、連れ子っていたりする…?」
「あぁ!いるぞ!喜べ!確かお前より一つ歳下の…」
pipipipipipipipipipipipipipipi……
はっ!
なんだ夢か。いやまぁそりゃ夢だわな。俺一般家庭だしちゃんと父さんも母さんも病気とかせず元気だし。
「海斗ー、朝ごはん出来てるわよー」
ごめん母さん。
夢の中で勝手に殺しちゃった。てへっ。
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さらに数ヶ月後…
朝のホームルームにて、
「今日からクラスに新しい仲間が増えるからな、今から自己紹介してもらう」
まさかの転校生きた!これは勝つる!
「え、この時期に転校生とか珍し!」
「可愛い子がいいよなぁ」
クラスメイトがザワザワとしている中、そいつは現れた。そいつを一目見て俺は思わず立ち上がった。
「あ、あいつは…!」
「うん?海斗知り合いなの?」
「………全然知らねぇ………」
「まぁ、男だしね、海斗興味無さそうだね」
「転校生で男とかあいつこそが主人公じゃねぇかああああああ!」
教室中に俺の魂の叫びが響き渡るのであった…
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「なぁ浅井、ラブコメって現実になると思うか…」
「あー、海斗は頑張ったと思うよ、うん」
「だよなぁ、俺頑張ったよな、うぅ」
「ほら、泣かないでよ、おーよしよし」
「浅井ぃぃ、やっぱり持つべきものは親友だぁ。ラブコメなんてなぁ、やっぱり夢物語なんだぁ」
「あ、あはは、元気だしてよ」
「大好きだ浅井ぃぃ、付き合ってくれぇ」
「や、それはさすがにちょっと…」
「うわぁぁぁ、男にも振られたぁぁ…」
浅井は泣き止むまで愚痴を聞いてくれた。
ひとしきり泣いたあとは幾分かスッキリした頭でこう決意した。
「俺は!人間を辞めるぞ!浅井ぃぃぃぃぃ!」
「が、頑張ってね、うん、応援してるよ…?」
俺たちの戦いは続く…
「え!なんで僕巻き込まれてんの!?」
「や、ほら、人間辞めるってなると転生じゃん?だからさ………ね…?」
「えっ?なんかヤンデレ化してるよこの人!
助けて!誰か助けてぇぇ!」
次回!海斗、死す!
次回を!待て!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
楽しんでいただけたでしょうか?
私は美少女に言い寄られているのに鋼のメンタルで手を出さない主人公を許しません。
美少女がいる時点で海斗は恵まれてる。うん。
刺されればいいのに(狂気)
ちなみに私は毒舌委員長が好きです。
ゾクゾクするよね…?
Frost先生の次回作にご期待ください。