13話 家庭科
13話 家庭科
魔法実技が終わるとカウストにご飯を食べに誘われた
「それにしてもお前の剣術やばいな、あの『鉄の処女』を非処女にしちゃうんだから」
「おい、言い方が悪いぞ、まあ確かにあれじゃ並の剣士は近付けないだろうな…」
今思い返してみてもあれだけの弾幕をよく防げたなと身震いしてしまう
「『鉄の処女』の所以のあの弾幕の数は最大200らしいぞ、よくあれだけの数防げたな…」
「まあ、うん」
苦笑いしながらそう答える
「そういえばお前ご飯はそれだけでいいのか?」
机の上には学食の小うどんとうどんが置いてあった、普通のうどんがカウストで小うどんが俺だ
「このあと家庭科あるからな」
言うとカウストは驚いたような表情をする
「お前が家庭科だと…」
「そこ驚くとこか?」
「ああ、お前料理出来なさそうだからな」
「まあそうだな、本当は撮るつもりじゃなかったんだが、スピカが…」
その言葉を発した瞬間カウストはニヤッと笑った、瞬間的にしまったと思った
「スピカさんね」
「なんだよ…」
恥ずかしくなったので、そっぽを向く
「そういえば、お前今日の学園新聞の号外見たか?」
「みてないし、貰ってもないけど…?」
「見出しが「1年Sランク3位夏目春夜、同じクラスで7位のアリス・スピカをおんぶして学校まで送る」だ」
その言葉を聞いて一時ぼうっとしてしまった、なんでそんなことが話題に?なんで俺が?スピカが?
「内容を見ると…「学園でもトップスリーに入るランクで、顔立ちも整っていることから女子から密かに人気のある夏目春夜くんが、今日の朝アリス・スピカさんをおんぶしているのを目撃されました」らしいよ」
そう言いつつカウストはしっかり肩を震わせて笑っていた
「笑うなよ…しかしなんで俺が人気なんだよ…」
こいつあとで殴ると何回か思い、疑問に思ったことを聞く
「S3ってどういうことがわかるか?」
「分からないが…」
「次期トップ候補ってことだよ…それにお前顔いいからな…」
「それにしたってカフがいるだろ」
当然のことを言ってやった風に胸を張る
「カフとお前じゃ全然違うだろ雰囲気とかが」
「まあそういうことだよ」
「うん?」
「じゃあ、俺はこれで行くわ、お前とスピカさんあってると思うぞ」
最後にそれだけ言い残し消えていった
「俺とスピカか…」
そう言って机に伏すと時間までその事を考えていた
「なんとかギリギリ間に合った…」
走って家庭科室まで行くと、まだ始まっていなかったが、ほとんどの生徒は準備は出来ていたようで、ほとんど話しながらも用意を終えていた。
「もう、春夜さん帰っちゃったかと思いましたよ」
スピカは頬を膨らませて怒った
「ごめんごめん、考え事をしてたら…」
彼女の顔を見ると、つい意識してしまい直ぐにスピカから顔を背ける
「はるや…さん?」
(私…嫌われちゃったかな?)
「ああ、いやなんでもないんだ、そうだ、エプロンと頭巾とマスクと付けなきゃな?」
落ち込んでてもしょうがない、そうじゃない可能性だって全然あるんだからと自分を奮い立たせる
「そうですね、あと手洗いましましょうね」
そう言って、春夜に指示していくと直ぐに支度が終わったと同時に先生が声をかける
「では皆さんこれから家庭科の授業を始めますよ、今日はご飯、お味噌汁を作ってもらいます、作り方は各班のテーブルに置いてあるのできちんと作ってくださいね?」
先生の説明が終わると冷静に周りを見る、するとだいたい9割型が女子で、約50人の25組のペアがいた。そのうち男女のペアで作ってるのは俺たちだけのようでほとんどの生徒がこちらに注目していた。
「あれって朝の…」「春夜様…」
など各所から聞こえて少し気恥ずかしくなってしまう。
「えっとはじめよっか…」
小声でそう呟くとスピカも反応してくれたが同じ気持ちなようで、顔を合わせられなかったのか
「えぇ…」
とだけ返事をした
「じゃあ俺は簡単そうな今日ご飯をやるけどいい?」
机に置いてあったプリントを見るとご飯が簡単そうだったので、そう言って別々にやることを提案してみる
「まあ、初歩の初歩ですから、何もないと思うのでお願いしますね…」
お互い顔をそむけながらもそう言って料理を始める
「まずはご飯を入れて…」
プリント通りに従って御釜の中に米を入れていく、次にお米を洗うと書いてあったので洗剤を持つ
「春夜さん何してるんですか…?」
スピカからありえないことをしているような目を向けられる
「だってお米を洗うって…?」
自分の中でどんどん謎が深まっていく、洗うと書いてあるのだからもちろん洗剤だろう、そう思いながらスピカを見る
「まずその洗剤を置いてください」
スピカから有無も言わせぬ目を向けられ洗剤を置く
「お米を洗うというのはですね…まずは水を注ぎます、次に米をこのようにして研ぎますこれを繰り返してうっすら米が透けて見えるくらいになったら炊飯器に入れて炊飯のボタンを押せば終わりです、分かりましたか?」
「わ…わかりました」
言われた通りにお米を炊くところまで行くと、あとはスピカがお味噌汁を作るだけになったので、スピカを見ながら待つ。
「な、なんですか?」
見られて恥ずかしかったのか、顔を赤くしながらこちらに問いかけてくる
「いや、なんか、そうして作ってくれてるスピカも可愛いなって…」
「ほ、褒めてもなんにも出ませんよ」
さらに顔を赤くしながらも、それからは会話はなく、順調に作り終わった。
「はぁ、一時はどうなることかと思いましたよ、お米を洗剤で洗う人なんて初めて見ました」
疲れたようにそういうとこちらに哀れみの視線を向けてくる
「洗うって書いてあったからついつい」
逃げるようにてへっと笑ってみせる
「洗剤で洗ったお米なんて食べれるわけないでしょう…」
「本当に申し訳ありませんでした…」
誠心誠意心から謝ると許してくれたようでいつもの柔らかい笑顔に戻った。
全部の班が終わったようで先生が食事の合図をする
「では頂きましょう、いただきます」
「「「「「「いただきます」」」」」」
「やっぱり、スピカの料理は美味しいな」
お味噌汁を飲み、安心するような味に包まれるとついついそんな言葉がでてしまった。
「ありがとうございます」
「はっ、春夜さん私のも食べてもらえませんか?」
そう声をかけられ後ろをむくと一人の少女がいた
「いいけど、俺なんかでいいの…?」
その少女はかなり意気込んできたようで顔を真っ赤にしながらも続きを発した
「は…春夜さんに食べていただきたいんです…」
「ありがとう、貰うね」
そう言って一口飲むととても美味しかった
「とても美味しいよ、ありがとう」
そう言って笑顔で返すと喜んでくれたようで、帰って行った
「あ、あの春夜さん…」「私のも…」
そう言って続けざまに3人くらいが来たが
「ごめんね、今日はもう無理かな…」
本当にお腹がいっぱいでそういうと、みんな残念そうに帰っていってしまい、心苦しく感じた。
そう感じたのも束の間、隣からとてつもなく冷たい冷気を感じた
「あ、あの、スピカさんなにか怒ってらっしゃいませんでしょうか?」
震えながらもそう言う
「いいご身分ですね、もう私の料理はいらないですよね?」
もちろんそんなはずがない、スピカの料理が1番美味しい、何より…
「俺にとって1番美味しいのはスピカの料理だよ、何より心が暖まるからね」
苦笑いしながらもそう言うと吹雪は納まったようでいつも通りとまでは行かないが、少し怒った時の顔にまで戻っていた。