11話 vs鉄の処女
11話 vs鉄の処女
4時間目の魔法の授業は実技を中心に行うようで全員魔法実技棟の練習場に集められていた、周りを見ると、カウスト、律、リーフェルにベガがいた、その馴染みのメンバーに20人ほどを混ぜた人がここにいた
そして目の前には金髪をロングにしたおっとりとした女性がいた
「これから、魔法の授業を始めます、その前に自己紹介しますね、3年のSランク2位アルテルフ・アウバです、よろしくお願いしますね」
そう先生が言った瞬間に周りの空気がどよめいた、それはそうだ、Sランクが直々に教えてくれるのだから
「まさか、あのアウバ様に教えていただけるなんて…」「俺この授業とってよかった」
「アウバ様…」
などと各所から聞こえる
「はいはい、静かにしてくださいね?では授業を始めます、みなさんも知っている通り、魔法は偉人によってまた、念じ方によって人それぞれ詠唱が違います、初歩的な魔法はかなり似通ってきますが、上位魔法に行けば行くほど詠唱の仕方は違ってきます、では上位魔法、中位魔法、下位魔法の定義を答えられるのは?」
「はい」
そう言って直ぐに律が手を挙げた
「では律さん」
「下位魔法の定義は魔法の出現個数が5以下、または相手を殺傷できないレベル、中位魔法の定義は魔法の出現個数が6から30、または相手に殺傷できるレベルです、そして上級魔法は魔法の出現個数が31から上、またはその魔法で街ひとつを滅ぼすことが出来るレベルです」
先生は満足そうに頷く
「満点の回答です、では上級魔法の上の究極魔法はどのような定義でしょう」
「究極魔法はそれひとつで大都市を滅ぼすことの出来る魔法で、禁忌魔法として使用を禁止されています、現在確認されている究極魔法は5つしかなく学園の第1期卒業生の生徒会長の《重浮遊》、第7期卒業生の治安部長の《灼熱地獄》、そして現在2年生の生徒会長、治安部長、監査委員長の3名がそれぞれ持っています」
律の完璧な回答に俺自身も感心しているとそこに水を差すように先生がもう一つ質問をする
「正解です、それでは、魔法とスキルの違いはなんですか?」
先生がそう聞いた瞬間皆一様に黙ってしまう
「正解はないです」
全員が驚いたようにアウバさんの方を向く
「だって、スキルの中に魔法ってあるじゃないですか?はい終わりです、では実技に移りましょう」
全員が呆けている中先生はそう言うと強引に始めるのだった
「ではこれから1対1の魔法戦を毎日やってもらいます、まあ各自適当に組んでください、余った人は私とやりましょうね」
アウバさんはニコッと笑って言う
「春夜やろうぜ?」
カウストがそう聞いてくる、もちろん受けたいが…
「ごめん俺はアウバさんとやりたいんだよね」
「お前勇気あるな…あの『鉄の処女』とやりたいなんて」
「どのくらい強いんだ?」
「そうだな、例えて言うなら今まで1度も相手を近づけさせたことがないということだ」
近づけさせたことがない…か、ということは魔法士の中でもトップクラスに入るんだろうな
「だからこそ1回はやらないとね…」
笑いながらそう言ってアウバさんのところにいく
「ではやりましょうか」
彼女はニコッと笑う
「はい」
「風よ-舞え」
速攻で魔法を唱え、速さだけの魔法かと思ったら、周りを全て囲まれていた
「なっ…」
「手加減したつもりだったのですが」
周りを見ると既に風の玉が20個囲まれていた
「水よ-囲え」
水の中位防御魔法【エリアウォール】で周りを囲んで全てを防ぐ
「なんとか成功したな…」
一息つこうとほっとしたのもつかの間
「まだまだですよ」
「炎よ-殲滅せよ」
アウバさんが詠唱した瞬間、彼女さんの後ろには約80の魔法陣が描かれ、そこから火の槍が放たれ、こちらに向かって撃たれた
彼女の強さは想像以上だった、攻撃は最大の防御とはよく言ったもので、こちらに攻撃の隙を一切与えては貰えなかった。
「水よ-囲え」
もう一度同じ技を発動し防ごうとするが、やはり強さが全然違うようで10発防いだだけで壊れてしまった
「ここまでか…結局1発も与えられずに終わっちゃったな」
諦めそんなことを呟く。
そうして、壁を破ってきた火の槍がこちらに向かってきた
「ここまでか…」
そこで意識を失った
「力が欲しいかい?」
どこからか声が聞こえてきた、誰かわからないし、ここがどこかも分からない、それでも、この言葉の回答は決まっている。
「ああ、もう二度と何も奪われないような力が」
「なら僕が力を貸してあげよう、さあ、目覚めるんだ」
そうして目を開けると地面が見えた、少しの間倒れていたようだ。
「ゴホッゴホッ…」
咳き込み前を見るとまだ戦闘を解いていなく、魔法陣を50も用意しているアウバさんがいた、そして俺が立ち上がるのと同時にまた魔法を撃ってきた、今度は30を10ずつ撃ってくるなど生暖かいことをせずに、一気に50の火の槍を放ってきた
「さあ…僕の力を存分に使いたまえ」
そんな少年の声が聞こえると、何故かわからないがひとつの詠唱が浮かんだ
「我は猛者の剣なり-あるがままに戦い-敵を屠るためにある剣術なり-沖田総司」
その瞬間手に剣が現れた、そして目の前には三本の槍が迫っていた
「《三段突き》」
スキルを使うと目にも止まらぬ速さで3回突きを行うと火の槍は霧散して消えていった、そして残りの槍が直ぐにこちらに向かってきた、しかしそれら全てはとても遅く感じられた
「はぁっ!」
火の槍がこちらに向かってくるが、来れば切る、来れば切るを繰り返しているとあっという間に全てを切り終えた。
「あなたは何者ですか…?」
アウバさんは驚いた様子でそう聞いてきた
「まだ勝負は終わっていませんよ…ではこちらから行きますよ…」
そういうと、アウバさんのほうへ向かって走っていく、彼女もそれに合わせるようにこちらに魔法を放つ
「炎よ-殲滅せよ、水よ-打ち滅ぼせ」
向かってくる魔法を全て撃ち落とし彼女に肉薄して行く、あと10m、あと5m、近づくにつれてどんどん攻撃の数は増していく、しかしそれでも全てを打ち落とし迫っていく。
「ま、負けです」
アウバさんは俺があと残り3mという距離になると降参した
「全くかないませんよ、こんな新入生がいるなんて、はぁ…」
彼女はそう言って落胆するようにため息をつく
「じゃあ今日の授業はこれにて終了です、ではまた」
そう言って何事も無かったかのように、練習場から出ていった。
「お前、よく勝てたな…」
カウストがそう言って、褒めているのか貶しているのかよくわからない調子で聞いてきた
「ああ、おそらく…」
「おそらく、なんだよ」
「いや、なんでもないよ」
苦笑いしながらそう答えるが内心では火の槍の音に紛れて沖田総司と言ったのが聞こえなくてよかったと安堵していた。
「じゃあ俺達も出ようぜ」
話題を切り替えるようにそう言うとカウストも諦めたように
「わかったよ」
とだけ返事をした
その後、カウストに隠れてステータスを見てみると…
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【名前】:夏目 春弥
【偉人】:ピエール=シモン・ラプラス、沖田総司、?
【性別】:男
【年齢】:15歳
【総合力】:A++
【物理総合力】:139
【物理攻撃】:9768
【物理防御】:9536
【魔法総合力】:32.6
【魔力量】:12586
【魔力攻撃】:12679
【魔力防御】:9348
【速度】:10963
【思考】:9574
【思考速度】:10056
【統率力】:2254
【スキル】:《未来視》《並行思考》《魔法[風]》《魔法[雷]》《魔法[水]》
《三段突き》《超高速演算》《天然理心流剣術》
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「やっぱり…沖田総司、剣士の中じゃトップクラスの化け物だよな」
久々に見たステータスそれにほぼ全てのステータスが上がっていたことに喜んだのだった