再会を願う
「、王さま死んじゃったね」
「シンジャッタ!」「シンジャッタ!」
灰が空へと舞い上がる。
王様─吸血鬼として夜を統べた者─の灰が。
風がふんわりと私を撫でた。
頭上を二羽の大型のオウムに似た鳥が輪を描いて飛んで新しい朝を喜んだ。
久方ぶりの外。
そのまま何処かへ行けばいいのに、赤と青のオウムは私の肩に戻ってきた。
どこかで喜ぶ声がする。きっと勇者だ。
王様が「迎えに行くからここで待っているように」と結界まで施していた理由はなんだったか。
護るためだとしたら、似合わなさすぎて口元を歪める。
そしてオウムに問う。
「ねぇ、君はどう思う?」
「サァネ、君ハドウナノサ」「ドウナノサ!」
私が王様に質問された時のお決まりの台詞を返してくるオウム。
あぁ、目を閉じれば思い出す。
吸血鬼の館で過ごした非日常な日常を。
私は元は糧として連れて来られた一人だった。
それも、この異世界にいつの間にか飛ばされていた一般人。
不思議な老婆にいきなり占われて、変な薬やら呪文やらにもがきにもがいて、不思議な力を手に入れた。
それは精神を具現化したようなものらしい。
私の心は気高い孤高のけものだった。
私自身、気高くもなんともないのにね。
〝「ほう、お前の心はなんとも美しく、糧にするのは惜しい。
そうだな…わたしの下につけ」〟
〝「生きれるんだったらそれでいい。」〟
王様の部屋に連れて来られた瞬間に言われた言葉を甘んじて受け入れた。
最初は生き残りたかっただけだったのに、あまりにも王様がかっこよくて…少し抜けているというか、お茶目なところがあって
だんだんと惹かれていった。
ねぇ、王様はどう思ってた?
どうも思ってないと思うけど。
(泣かぬのか、それがお前──詩音という人間か)
いつぞやに問われた問いが過る。
「違うよ…」
泣けないんだよ。
どういうわけか、こちらに飛ばされてから感情に制限がかかっているように感じていて。
泣きたいのに、泣けなくて、どうしたらいいかわからなくて。
そう思ったとき、心のけものが飛び出して、空へと吼えた。
代わりに泣くように、何度も何度も繰り返し、吼えた。
下の人たちは気付かないのだろうね、こんなにも哭いているのに。
私と同じ、心を具現化出来る人にしか聞こえないのだから。
さようなら、王様。
生きていたのなら、貴方はこの泣き声を聞いてどんな顔をしましたか?
しょうがない奴だと困った顔で笑ったのでしょうか。
ねぇ、王様。
もし次があったとしたら、その時はまた、私を拐ってください。
思いっきり。
また会えるようにともう一度、けものが吼えた。