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Art Ranger  作者: なすとだるま
第壱章 始動
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第壱話 造られたヒーロー

なにはともあれ先ずは人員確保であった。


すでに閉鎖されているであろう"工場"により建造された新型合成ヒーローは覚醒より3日、昼夜問わず歩き続けていたが、町のまの字も見当たらないのであった。


「やはり世界はすでに滅んでいたのだなぁ」


と記録を参照しながら風景の間違い探しなどしていたところで見つかるのは増えた瓦礫のみであり、これでは救う世界もないのでは。すでに存在意義の危ぶまれる合成人間の思考回路はそう結論づけていたが、もちろん作った側もそのような自我システムの崩壊は予想していたことであり、回路内物質により人間でいう"不安"に該当する感情は抑制される。残るのは虚無であった。



また5日、脳内の風景記録を更新しつつ合成人間は北へ歩き続けていくと、10キロ先まで見渡せるというその驚くべき視力によって、ようやく灯りが認められた。文明の匂いである。彼は自身の身体の許す限りの加速で走りだすとものの数分で初めの集落に着く。

着いてみると、しかしそこは集落ではなかった。灯りだったものは燃えた家屋であり、火を囲んで血まみれの死体と死体と死体達、あと1つは死にかけの子供だった。神として合成されされなかった彼は死体を救うことはできないが、命さえあればほぼ死体からでも救うことができるのである。彼は光と音、温度から彼女のバイタルチェックをすませつつマニュアル[医療]を実行。喉にある器官で合成した薬用成分を唾液として分泌すると手首に吸い付き静脈から投与する。

ついで身体の隅々まで舐めとり身体を清潔にし、簡単な手術を執り行なった。無事手術は成功し、点滴を準備して安静にした後、彼は瓦礫や空気を体内に取り込み始めた。生体核反応炉であるその身体は質量さえあれば任意の元素を産み出すことが可能であり、多少エネルギーを消費するものの、彼女には食料と水が必要だったのは確かであった。彼女が目覚めるまで彼はそうやって過ごしていた。


目覚めたのは2日後の朝だった。彼はまず水と食べ物を勧めた。彼女は事態を飲み込めていないようだったが素直にしたがってゆっくりと口に入れていく。美味しいとは言わなかった。

その後2週間と少し、十分体力が戻るまでその集落跡で過ごした。いくらか彼女に質問をしたが、言語をよく理解しないのかなにも答えはしなかった。彼は用意しておいた装備一式を担いで集落を出るとき、彼女に一緒に来るかどうかを尋ねたが、結局ついては来なかった。彼は十分生きていけるだけの装備を置き、人員確保のため一人旅立った。



さて、このお話の主人公は合成ヒーローではない。合成ヒーローがただ一人救ったこの少女である。ならず者たちに暴力にひび割れた心に、ヒーローとの数週間はどれほどの潤いを与えたのかを彼は知らなかった。彼女は暴漢の異常な性癖により声を失っていたし、何より男を恐れていた。ヒーローの優しさを理解するのに時間をかけてしまったことを責めることはできないだろう。


29年と4ヶ月、彼女はヒーローになることを決意する。受け継がれた光に支えられた彼女は、加えて強さを手に入れていた。彼の行った手術には治癒力を高める遺伝子の簡単な操作を含んでいたのだが、彼女の体は極めて稀な細胞の進化を遂げ、その細胞分裂速度は光速に達し、また複製の精度は100%である。皮膚表面や筋繊維などは超回復に次ぐ超回復により三代分の進化を可能とし、細胞強度と筋力は超人的なそれを持つに至った。少女のような、若々しい外見は寿命の長さを物語っていた。

今、世界はある一人の男によって復興し、そして同じ男によって暗黒に支配されていた。もちろんその男とは、その後旅をし続けたものの救う世界を持つに至れなかった合成ヒーローその人である。世界を救わねばならぬとプログラムされた彼は、まず救うべき舞台を整えたのであった。



資格は十分であった。彼女はヒーローが残してくれた装備を携え集落を出る。


なにはともあれ、先ずは仲間を見つけることからであった。


自由にやっていいそうなので暴れてみようと思いましたが、少し王道過ぎました。ごめんなさい。


だるま

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