異世界
「…」
目が覚めた、全然知らない天井…夢だった?実は誰も死んでいないとか…でも…まだ……ハッキリと…あの感覚は…夢じゃ…
脳裏には腕だけになった恩人の姿と鼻腔をつく…鉄のーーー
「うぅッ!うげぇ……げはっげはっ!」
なんで…こんな…ッ!俺が…こんな目にッ!
「あらあら〜大丈夫ですか?…今片付けますね〜」
見るとそこには如何にも優しそうな感じのお姉さんが佇んでいた…というかなんだこのエフェクトは!?花が…周りに舞ってる…考えないようにしよう、言動と反して手を箪笥に突っ込みバタバタと動かしている…相当焦っているのだろう
「す、すみません!」
「あっ、いえいえ〜良いんですよ〜?私が好きで泊めただけですから〜…う〜んと、ありました!」
「えっと…何探してたんですか?」
「雑巾です〜」
そう言われ気付く…そしてついさっき自身の口から出た汚物に目を向け…
「あ…すみません!やります!」
「あらあら〜良いんですよ〜座ってて下さい〜!えいっ〜!」
そう言い俺の額にデコピンを…
「痛ッ!?」
そのデコピンは中々、いや、とても痛かった、そのデコピンの所為で枕に頭を打ち付け首を少し痛めた
「うふふ〜ごめんなさいね〜」
そう言いつつも目に止まらぬ速さで布団に付いたソレを片付け…って速度おかしいだろ!?やっぱりここって異世界?…と、考え事をしていると外から彼女は部屋に…やっぱりおかしいだろ!?
「はい、お片づけ終わりです〜」
「あ、ありがとう…ございます?」
俺は今、驚きも感じていたが…もう一つ疑問も感じていた…彼女は何故…ここまでしてくれるのかーーー
「あ!そうでした〜自己紹介がまだでしたね〜」
「本当だ…俺も忘れてました…」
って事は…俺は名前も知らない女の人にゲロの掃除させてたってわけか?いや、名前知っててもアウトだけど!
「うふふ〜では〜私はアルマ、といいます〜末永くよろしくお願いします〜」
「お、俺は瑛人っていいます、後、末永くって夫婦じゃないんですから!」
「あら〜?駄目ですか〜?」
「駄目っていうか…あんまりそういう事簡単に言ったら…なんか良くない事になるかもしれないですし…」
というか恥ずかしいし…
「まぁまぁ〜いいじゃないですか〜」
…あ…そうだ…あの人は!
「あの…すみません…あの、助けてもらった人にお礼が言いたいんですが…」
「…死にました」
「…死……!?」
やっぱり…アレは…夢じゃ…ない……?!俺の所為で……いや、俺があの人を…殺したんだ…!俺がこんな所に来なければこんな事には…ッ!あの人も死ぬ必要は…無かったッ!…ごめんなさい
「…彼女は…冒険者でした」
ごめんなさい
「いつも同じような事を言ってましたね」
ごめんなさい
「『人を助けるんだ』と、弟を助けられなかった罪滅ぼしに…と」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…ッ!!!!
「だから…ありがとう、と言えばいいと思います」
「ありがとう…?」
「彼女は最期にしたかった事を出来たのですから、それならーーー謝られるよりも感謝される方が嬉しいじゃないですか〜」
「……ありがとう……ッ!……ありがとう…ございます……!」
言われるがままに感謝を伝えた、有るはずのないあの世に…居るはずのない神に…
しかし、この『自分が殺した』は一生ついて回るのだ、これからも、ずっと…最期まで…いや、最期さえ超えて……
見てくれてありがとうございます!