表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

 さて――。

 運命の道しるべ。

 あるのは交差点。

 何の変哲もない、どこの界隈にも存在しているただの小さな十字路。路傍ろぼうには石ころが転がり、生い茂った雑草は根を生やしている。ぐるりと辺りと見渡してみても、コンクリートで塀ブロックが並んでいる平凡な住宅があるだけ。申し訳程度に、観葉植物やら松の木やらがひょっこり顔を覗かせている。ある電信柱には、町集会、6/25、9:30より開始、と書かれた紙が貼ってあった。みんな来るんですからきてくださいよぅ。村おこしの一環で生を吹き込まれた二次元の小人キャラクターたちが紙面で踊る。ここは自動車なんてそう通らない。自転車もあまり通らない。そんな田舎じみた風景が広がる場所の交差点。

 しかし。それはともかく――。

 空は快晴。一転の曇りもない淡青色の色彩。今は、春に充填されたエネルギーが躍動しはじめる、初夏の季節。

 




 そう、まさにこの瞬間であった。

 その場所に差し掛かろうとする少年と少女がいた。 

 六時の方角からやってきた男の子。彼は未来への希望を抱きながら、上を向いて歩く。時折、一リットルの牛乳パックをごくごくと飲み、大股で自信を持って闊歩する。かたや、九時の方角からやってきた女の子。彼女は地面をきっと睨みつけ、下を向いて歩く。手にしていたバスケットかごの中身は、購入したばかりのりんごでいっぱいだった。二人は足早にそこの地点を過ぎ去ろうしていく。無論、特に立ち止まる理由もないから当然であろう。だけど、やがて衝突してしまうとは知らずに。しかも、それが偶然ではなく必然だというのに。ただ、蒔いた種が根をはり、葉を重ね、実をつけていく過程のための始まりだったのだ。


 これは、今ここで二人が出会ってから何年か先の話。もう一度この場所で邂逅かいこうを果たしてから一年後に、世界がくるくるとまわりだした物語である。





 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ