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異世界転移考察シリーズ

異世界人が現代地球で暮らす方法

作者: 陽乃優一

『Re:CREATORS』第1話を見て思いつきました。第2話はまだ見ていません。あっちはどうするのかな…。

「お願い!正樹だけが頼りなの!」

「…頼む」

「そう言われてもなあ…」


 高校に入学して約半年。週末が終わって明日からまた学校という日曜日の夕方、同じクラスの女子生徒、由羅が俺の自宅に押しかけてきた。

 すっげーイケメンの金髪美青年と一緒に。腕を組みながら。独り身の男子生徒へのあてつけか。ちくしょう。


「まあ、由羅がこの週末に異世界で勇者やってたというのは信じるけどさ」

「もう信じるの!?」

「いやだって、ヨハン…だったか、そいつの喋り方を見ればな」


 明らかに日本語以外の言葉を喋っているのに、その意味するところは正確にわかる。異世界モノの定番ではないか。

 あと、由羅が先週から若干成長している…ように見える。向こうの世界での一年がこっちでは一瞬だった、と言われると納得できる程度に。

 実は隠れ超能力者とかの可能性もなきにしもあらずだが、嘘をつくならはるかにもっとマシな嘘もあるだろう。


「そうなの!文字も読めるのよ!すごいでしょ!」

「由羅は落ち着け。お前も思念飛ばしまくりながら喋ってるの気づかないのか?」

「あ、今までのクセで。ヨハンは精神感応も得意だから、あたしが思念飛ばす必要ないよね」


 こいつ、俺とクラス委員やってるのにいつも落ち着きがなくて、脳筋が過ぎるというか。ムードメーカーなのは確かだけどさ。

 そんな愉快な脳筋の由羅でも、魔王を倒した暁には王子様で聖騎士なヨハンと結婚、とかよろしくやってたらしい。ふたりの左手薬指の婚約指輪が光る。

 その指輪が、ふたり一緒に地球に戻った原因のようだ。そもそも、由羅はラスボスだった魔王に召喚された。人類に希望をもたせた後、絶望に陥れるために。


「魔王が召喚しなければユラに出会えなかった、というのは複雑な気持ちだがな」

「あたしたちの愛が魔王の野望を超えたのよ。本来ならあたしだけが元の世界の時間軸に戻るところ、こうして一緒にいられるんだし」

「おい、イチャつくならよそでやれ。ヨハンがこっちの世界で暮らす方法がわからないっていうから、相談に乗ってやってるのに」


 両親や兄妹、友人を説得できる自信がない。でも、普段ラノベとか読んでて関心を持ちそうな俺なら。ついでに、アパートで一人暮らしでもある。

 あれ?御都合主義ってんなら、俺が勇者召喚される立場じゃね?いやまあ、俺が召喚されてたら魔王の策略にはまってたかもだが。くそう。



「はあ…。で、ヨハン。お前、精神操作系の魔法は使えるか?」

「精神…操作?感応ではなく、か?」

「ラノベとかの定番筆頭は、役所の人を操って戸籍や住民票をでっち上げることだしな」


 俺はヨハンに、国籍やら本人確認やらを説明する。


「生まれた時点で全員の身元が保障されるのか。こちらの世界の住人は皆、身分がはっきりしている貴族のようなものなのだな」

「そういう捉え方になるのか…。そういうわけで、その身元保障の仕組みをでっち上げるのが手っ取り早いのだが」

「あいにく、そういう能力はない。魔王やその部下なら、あるいは」


 まあ、精神操作は明らかに悪いことだしな。洗脳にしろマインドコントロールにしろ。人の感情や記憶をもてあそんではいけないか。


「物を作り出す類のものは?元となる文書を精密に複製することとか」

「そうか!正樹って原付乗り回してたわね!免許証早く出しなさい!」

「由羅はしばらく喋るな」


 しゅんとなる由羅を放置しつつ、俺の免許証と、あと、パスポートを出した。家族が外国に移住したので、パスポートも作ってあるのだ。


「基となる材料があればなんとかなると思うが…これは、紙なのか?」

「えーと、紙、だけじゃないな。プラスチックと紙が混ざっているとか聞いたような…。あ、そうか、ダメだこりゃ」

「複製のための『探索』を試みたが、金属も埋め込まれていないか?」


 最近はどちらもICチップが埋め込まれている。物理的な複製だけでも厳しいのに、記録データをどうこうするのは、精神操作に近い。むう。


「次の案は…幻を見せることはできるか?精神操作じゃなくて、視覚的に」

「そうか!カッコいいヨハンをもっとカッコよくして誘惑…イタタタタ!」

「なあヨハン、なんでこんなのがいいんだ?」


 由羅の頭を握りつぶしつつ素朴な疑問を投げかける俺。苦笑するヨハン。こんなでも好きらしい。あばたもえくぼというやつか。

 とりあえず、由羅は玄関から外に放り出す。なんか扉をガンガン叩きながら叫んでいるが知らん。今日はいい天気だ。


「で、どうだ?」

「他人のフリができるか、ということだな。できなくはないが、長時間は厳しいだろう。それに…」

「…ああ、言葉の問題か。実際に音声として喋れるわけではないからな」


 俺がそうであったように、喋ればその不可思議さがすぐわかってしまうか。頑張って地球の言葉を覚えるには時間がかかりすぎる。


「あとは、そうだな…。空間転移は可能か?異世界に戻れっていう意味じゃなくて、普通に遠く離れた場所に移動する方法だ」

「できるが、一度行った場所でなければ移動できない。あとは、目に見える範囲の距離だな」

「それはそれですごいが…今回の目的には無理か。いや、国籍とかがあいまいな国もあるにはあってな」


 そういうところなら身元もでっち上げやすく、パスポートもある意味正規なものが手に入る。日本のビザや渡航費用を工面してあらためて日本に来れば…とも思ったのだが。


「うーん…万策尽きた。まだ何もやってないが」

「そうか…」

「いやまあ、最後の手段があるけど。その精神感応、俺もできるよな?由羅ができるんだし」


 要は、ヨハンが堂々と地球で暮らせればいいんだよな。



『みなさん、御覧ください!ヨハン・ルミナス・グリーンスフィア殿下の力を!』

『僕にも、僕にもできました、転移魔法!』

『メディアでは思念がお伝えできず残念です。しかし、魔法は確かに存在しました!』


 まず、ヨハンや由羅が魔法を使いまくっているところを動画に撮り、あらゆる動画サイト経由で配信する。信じる信じないはともかく、とにかく世界中に広める。

 話題になったところで、あるテレビ局に突撃。今話題の超常現象、ということに加え、有名人も巻き込んで、簡単な魔法を使えるよう生放送で教え込み、実演させる。

 ここまでくれば、政府組織や関連企業がアプローチしまくってくる。既に社会の目が集まっている以上、暗躍まがいなことはできない。


「ヨハンに会えないー!せっかく国籍もらえて結婚もできたのにー!いそがしー!」

「結婚式は盛大だったからいいじゃないか。よっ、セレブ有名人。…ぷぷっ」

「ディスった?ディスったわね!?ツイートしてやるー!正樹も既に有名なんだからね!」


 とまあそんな感じで、ヨハンを地球規模で認知させると同時に、魔法文明がもたらされた。科学と融合したそれは加速度的に進歩している。

 異世界転移も近いうちに開発されるだろう。時間軸が調整できれば、ヨハンも元の世界に帰省できるようになるかもしれない。


「ヨハンとの結婚生活がー!いつも一緒にらぶらぶな生活がー!」

「いやさあ、ヨハンは王子で由羅は勇者だったんだろ?向こうの世界に残っても同じだったんじゃね?」

「そうかもだけど!一緒に暮らせるのが重要なの!何もなくても!」


 ああ、山奥の掘っ立て小屋に放り込むって選択肢もあったか。イマサラだけど。

異世界ネタばかりだけど、一応ローファンタジーだよなあ、これ。

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