銭湯民族ガイア人のスーパーエリート王女!ロリータ様の襲来Z
この作品で既視感を覚えたあなた!きっと気のせいです!
俺の名前は加賀六斗。
どこにでもいる普通の浪人生さ!
そしてデッキブラシ片手にこっちを睨んでいる禿げたおっさん!
あれは亀田仙人さん。
ここ、【亀の湯】の店主だ。
みんなは亀さんって呼んでるけどね。
「ぼさっとしてねぇーで働けフリーター!」
「やだなぁ、ちょっと2浪こじらせただけでフリーターじゃ」
「うるせぇやい!来年は3浪になんだからフリーターでいいだろ」
「ちょ、酷!」
そう、僕は浪人生。
家で肩身の狭い僕は、塾の時間以外はなるべくバイトを入れている。
お金も貯まるし、ここなら変な気遣いもない。一石二鳥さ。
「なんでもいいやい、儂ぁ男湯磨いてるから、お前は女湯磨いてこいや」
「へいへい」
ちなみに、うちでは朝風呂はやらない。
営業時間は17時から23時で、ただいまの時刻は15時半。
営業開始まで残り1時間近い。急いでやりますか。
と、思って女湯の扉をスライドさせたら……いたんだ。
あの恐ろしい地底人達が!!
目の前には見知らぬ女人が二人、立っている。
1人は身長が高くて……なんかやけにガタイが良い割りにおろおろした短髪の女。
いろいろでかい。
もう1人は日本人形みたいな髪型の小さな少女。幼女……ではギリギリないと思う。
何故か偉そうに腕を組んでいる。
意味不明な事に二人ともゴスロリファッションだった。
「あの、営業前なのですが」
「ふん、菜葉!」
「お、おう」
いや、話しを聞けよ。と、言う暇もなく。
小さい方が大きい方に何やら指示を出したみたいだ。
菜葉と呼ばれた女性がこちらに歩み寄ってきた。
「これを」
の一言と共に、無理矢理、棒状の何かを握らされた。
「すまんな、しばらく握っていてくれ」
「はぁ」
どうしよう。たぶん、きっと。ちょっと変な人達な気がする。
通報した方がいいのだろうか。1人は俺より身長高くて強そうだし。
いや、でも小さな子供もいるから、あまり警察沙汰にはしない方がいいのかな?
なんて考えていたら、握っていた何かからアラームが鳴り響く。
「よし、返してくれ」
握っていた物を大きな女に渡す。
その時初めて、俺が握っていた物が温度計だと気がついた。
実際温度計なのかはわからないが、少なくとも形状は酷似している。
菜葉と呼ばれた女は小さい女の元に戻ると、温度計を手渡した。
少女は温度計を見ると一言。
「ふん!銭湯力たったの5か……ゴミめ!!」
「出てけ!営業妨害だ!出てけ!!」
後から聞いた話しになるが、銭湯力=銭湯内での戦闘力らしい。
もうそれ、戦闘力でいいだろ、と思った。
〜〜〜〜〜〜〜
「はぁ?地底人?」
この二人に素性を聞いた俺だったが、困惑を隠しきれない。
少女は地底人を名乗った。
どこの世界にゴスロリの地底人がいるんだ。
笑ってやりたいが、営業時間が差し迫っている今は笑えない。
「えーと、菜葉さん?だっけ。あなた保護者でしょ?なら連れて帰ってくださいよ。こっちも暇じゃないんですから」
「くっくっく。おい、聞いたか?菜葉。お前は私の保護者らしいぞ」
「いや、保護者だと思う」
「保護者じゃねーよ!私は地底人の王女でスーパーエリートだぞ!?」
意見に相違が見られるが、やはり菜葉さんが保護者なのだろう。
ここはなんとか菜葉さんを説得して、穏便に帰ってもらおう。
と、その時。
「あっ!いたいた!もー、いるなら返事してよね!」
女湯の暖簾を潜って朗らかな声の女性が顔を出す。
眼はクリクリして可愛いが、全体の顔立ちは凛としている。
俺が勝手に地球人最強の美少女と呼んでいる栗林さんだ。
栗林さんは地元大学の一回生で、亀の湯に牛乳を卸てくれるアルバイトさんでもある。ポニーテイルがとってもキュートなんだよなぁ。どうやら入り口で呼んでくれていたらしいが、全然気がつかなかった。亀さんも仕事に集中してる時は耳が遠くなるしなぁ。
「む?地球人の増援が来たか?」
相変わらず小さい方は偉そうだ。
地底人も長い目で見たら地球人だろ、と思わないでもないが。
「え?誰、わっわわわわあ〜〜〜」
謎のゴスロリ女×2に驚いた栗林さんが足を滑らせ転倒する。そのまま風呂桶に突っ込むと、舞い上がった風呂桶が蛇口にヒット、水が勢いよく噴出し、近くにあった石鹸が押し出される。そして石鹸が向かう先には菜葉さんが石鹸を止めようと足を上げて待っていた。
「菜葉、よけろーーーーっ!!」
「ん?」
そして石鹸を見事足で踏み止めた菜葉さんは……案の定滑って転倒。後頭部から湯船に突っ込むと、一拍置いて浮かび上がってきた。ドザエモンのように。
「保護者気絶したーーーー!?」
「うわ〜〜!菜葉の馬鹿〜〜〜っ!どんな技か見切れんのかぁ〜〜!」
俺と少女、二人の絶叫が反響する。
困惑する栗林さん。
涙する地底人の少女。
そこに騒ぎを聞きつけた亀さんが現れた。
「な、なんじゃ?こりゃいったいどうなって……」
「あ、私!配達がまだ途中なので帰りますね!夜霧ちゃんが風邪で休んでいるから忙しいの!さ、さようなら〜〜〜」
栗林さんは逃げ出した。
ちなみに夜霧ちゃんは栗林さんの友達で、好物は天津飯と餃子だ。
って今はそんな事どうでもよくて!
どうしよう、カオスすぎて収拾つかないぞこれ!
「くそったれえ!菜葉は役立たずだし、新手はハゲてるし、こうなったら巨大化するしか」
「何言ってるんじゃ?ここは子供の遊び場じゃない!大体、巨大化なんてできる訳」
「やめろ!それはフラグだ!たぶん誰も幸せになれない!!」
嫌な予感がしたので念のため止めておく。
できるかどうかの真偽はどうでもいいが、止めたという事実が大切だ。
俺は止めたんっすよ。この一言を言えるか否かで俺にかかる責任の重さが変わる。
地底人は設定だろうが、万が一という事もあるかもしれない。
「そ、そうだ!まだあれがあった!」
何かを思いついた様子の自称スーパーエリート。
懐から緑色の粒粒が入った小瓶を取り出すと、コルクの蓋を開け湯船に放り投げた。
「わ、わーーー!何しよるかクソガキーーー!!」
「クソガキではないハゲ!私はロリータだ!!」
亀さんの心からの叫びが銭湯に響く。
それをまったく意に介さず、ロリータ(まんまかよ)は強気だ。
「これだけいい湯だからな、良い温菜マンが育つに違いない!」
言っているそばから、緑色の粒それぞれがお湯を吸って膨らみ始める。
色は赤く変色し、緑色のトサカをしならせ、形は丸く立派な……。
「赤カブか?」
大きさはバスケットボールくらい。
小さな手足の生えたラディッシュだった。
俺は尋ねた。
「えっと、これが、温菜マン?」
ロリータは答えた。
「そうだ!光栄に思え、この銭湯を皮切りに世界の湯を私が支配する!」
「そうか、本当に地底人だったんだな」
「最初から言ってるだろ!」
こんなものを見せられたら信じるしかない。だが!
「その温菜マンだが、のぼせてるぞ」
「……」
菜葉さんと同じポーズで湯船に浮かび上がる温菜マン達。
それを見て、スカートの端を握り震えるロリータ。
亀さんが指をポキポキと鳴らす。
「よし、今日のところは地底に帰ろう」
「おい、フリーター。ドア閉めろ。掃除が終わるまでこいつを逃がすな」
「オッス」
地底人に人権はない。
結局、その日の営業が終わるまで、ロリータは酷使された。
こうして、地底人の野望はとりあえず潰えた。
変わりといって何だが、翌日から無駄にプライドの高い同僚が誕生するのだが、それはまた別のお話。
「お、おのれぇフリーター群めぇ!私に掃除などやらせてぇ!」
「加賀六斗だ!スカート引っ掛かって中見えてるぞ」
「ひゃう!なんて下品な男だッ!!」
〜〜〜〜〜〜〜
次回予告 夜霧ちゃん、死す!
栗林「夜霧ちゃーーーーん!」
夜霧ちゃん「 」(焦げプシュー)
フリーター「私の年収は53万です」
戸蘭久子「この人が私の……母さん!?」
ロリータ「これが超ロリータの岩盤アタックだぁぁああ!!」
セミ(完全体)「ミーンミンミンミンwwwwwww」
来襲もまた!見てくれよな!!(※来週とは言っていません)
※たぶん続きません。