思い出作るんだよ!
……片付けを始めて、1時間が経った。何卒の部屋は引っ越しを済ませた時の様に片付いていた。ほぼ未任せにしていたから、早く片付いても当然である。何卒は後半は指揮を執っただけなのだから。
そして、未はグッタリとして、横に倒れていた。
『ふはぁあ……。やっと……終わったんだよぉ……』
「お疲れ様! よく頑張ったわね! さすがは未来から来た未確認飛行物体!」
『そういう名前じゃないんだよ! ちゃんと未って名前があるんだよ!』
「あはは、冗談だよ。冗談。さて、頑張ってくれたお礼に何か好きなものご馳走してあげるよ!」
『ほんと!? やったぁ!』
未は無邪気に喜んで飛び回った。その無邪気な顔を見て、何卒は微笑みの表情を浮かべた。しかし、心の中では腹黒い事を思っていた。
(ふっ……! やっぱり、ちょろいな……!)
「それで何が食べたい? あんたのとこじゃ見たことないものと言うか、古い料理とかそういうのになるんだろうけどさ?」
『ぼくね……? クレープが食べてみたいんだよ!』
「えっ……? クレープ……? 何、あんたの時代にはクレープが存在しないっていうの……?」
『ぼくの時代は携帯食料が一般的なんだよ……。デザートも携帯食料化して、味気ないのだよ……』
「へぇ~? それはそれで便利な世の中なんじゃないの?」
『良くないんだよ……。形状はないし……、袋に写真が載ってるくらいなんだよ? 味はちゃんとしてるんだけど……』
徐々に未が切ない顔になっていった。
それを見て、何卒は慌てて、家を出る準備をした。
「ほ、ほら、未ちゃん! クレープね!? クレープ買いにいくよ!!」
『……うんっ! 行くんだよ!』
何卒は未の手を取り、外へと向かった。
「おかっさ~ん、でっかけてくるよ~」
『あれ? おばぁ……お母さんいたの……? 誰も声がしなかったから、てっきり誰もいないかと思ったんだよ……』
「んっ? いないよ? 仕事行ってるから、わたし1人だけど?」
『ぼくをからかうなぁっ! もぉっ!』
「そんなに怒らないで~? 美味しいクレープご馳走するからさ?」
『むぐぅ……食べ物で釣られてる気がするんだよ……』
そう言いながらも手を繋ぎながら、一緒にクレープの売ってる店まで歩いていく2人………
『ねぇ……おか……未来ちゃん……?』
「んっ? どうしたの? 未来ちゃん?」
何卒は微笑んで問い返した。
『むぅっ……同じ名前だと少しややこしいんだよ……』
「ふふっ、そうだね~。でも、なんだか不思議ね……。未来ちゃんといると親近感を持つんだよねぇ……」
『っ…………! な、なんで……だろうかな……?』
「なんでかな~……? もしかして、わたしの将来の子どもだったりして?」
『えっ……!? そ、それは……あの……』
「あっははっ! 冗談だよ、冗談! ほら、クレープ食べに行くよ!」
『あっ……ぅん………………お母さん……』
未はまた小さく呟いた。
しかし、今回は何卒の耳には入っていなかった。これでよかったと思いながらも聞き返して欲しかったという気持ちが未の中でぶつかり合っていた。
そんな未が気持ちの葛藤をしている間に例のクレープの店に到着していた。
「ほら、暗い顔してないで選びなさい? どれも美味しいクレープよ?」
『わぁ……こんなにいっぱいあるの……? 携帯食料にはこんなにたくさんないよ……?』
「そんなに少ないんだ……。じゃぁ、今日は思い出になるものを一緒に作ろっか? せっかく来たんだしさ?」
『ぇっ……? それは……』
「まずかった?」
『ぅうん……。思い出を作りたい……! いっぱい、未来ちゃんの事知りたいんだよ!』
「よ~し! それなら、まずはクレープから食べよう!」
『食べるんだよぉ~!』
二人はクレープを買って、空いている席へ座った。そして、楽しくに話しながら、クレープを食べ、未はクレープを堪能したのだった。
その後、プリクラ変顔や抱き合った姿などを撮り、画像をデコレーションして、プリントされたものをカットした後、それを未へプレゼントした。
その時の未の顔は会った中で一番良い顔をしていた。そして、とても無邪気に遊びまわった。 過去の世界にもこんな楽しいものがあるのだと、未もこの時代を楽しんでいた。
本当の友達の様に2人はその日を過ごしていった。
そうして、あっという間に時間が過ぎていき……
『はぁ……とっても、楽しかったんだよ! 今日は来てよかったよ!』
「それは良かった。わたしの財布の中身がスッカラカンになった事は置いておくとして……。未来ちゃんの言う12年前も悪くはないでしょ?」
『うんっ! よかったよ! こんなに幸せな時間を過ごせるとは思わなかったよ!』
「あははっ! わたしを幸せにするのに、未来ちゃんが幸せになっちゃってどうするの?」
『そうだねぇ。今はお互いが幸せだよ!』
2人の顔は微笑みを通り越し、純粋な少女達の笑顔になっていた。見れば見るほど、微笑ましい光景である。
しかし、時間は残酷なものだ。
もうじき、お別れの時が来るのだから……






