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青山というイケてるメンズ



ここに分厚い台本がある。


主演の横には、新川美奈という文字が載っている。



演技って言われてもさ、こちとら今まで大学の単位をいかに楽に確実に取るかの方法しか考えてこなかったから全くわからないんだけど!てか芸能界って若干別世界として考えてたよ!?



・・・関さんにこれ言ったらあの人どうすんだろ。


「冗談とか似合わないんでやめてください・・」


とか言って病室の花とか替えに行きそう。つまりはまともに聞いてはくれなさそう。大体さ、入院中の人が魂の入れ替わりだの三途の川の天使だのを説明しだしたらそれこそ精神科とか行かされそう。


まあ仕事しなくていいならそっちのが良いけど。

新川美奈さん的には申し訳ない事になるだろうから止めておきたい。


この病院は芸能人御用達のセキュリティ万全な所らしいから、どっか他に相談できそうな、口の堅い芸能人とか居たらいいのに。そうすれば芸能人と友達になれるし、その上相談相手にもなってくれるしで一石二鳥だよ!


・・・・まあそんな都合よくいかないか。人生は甘くないよね。



そんなことを考えていると、看護師さんが病室に訪れてお昼ご飯を持ってきてくれた。


「今日は美奈さんと親しい方が病院に来られてますよー」


え。美奈さんて親しい人居たんだ・・!!


「えー、誰ですか?わからないなあ・・」


わからないのは当然である。


青山修あおやましゅう君?やっぱり本物はかっこいいわー」

「貴女と青山君が出てたドラマ、よく見てたのよね!あとで美奈さんのお見舞いに行くって聞いて嬉しくなっちゃった。」



・・・・・・・・。



青山修ってあの?

なんかすごい人気のイケメン俳優でしょう?


そういえばネットに付き合ってるって噂あったような・・・!!!!


キターーーーーーーーーー!!!!!

神のご加護キターーーーーーーー!!!!


これはあれですか??このままイケメン俳優と結婚しちゃって?お嫁さんになって?ハッピーなエンドで終われる感じですか????



有頂天な私を残し、嬉しい情報を教えてくれた看護師さんはいつのまにか食事を置いて出て行ってしまっていた。


いや、美奈さんと青山君の共演作とかぶっちゃけ私も見たことあるぜ!!

学園ドラマな!!共演者の恋愛始まるきっかけに多い学園ラブコメな!!


視聴率も良かったみたいだし、結構この二人はお似合いだと私も思ってた。

よし、このまま上手く付き合って、結婚まで持ち込ん


「ねえアンタいつまで仕事サボる気?俺も忙しいんだけど」


低音の綺麗な声が聞こえる・・・・

じゃなくて、おい何だその暴言は。私は事故で入院してるだけでサボってるなんて言われる筋合いは無い!!


意識を声の聞こえた病室のドア付近へと向ける。

不機嫌そうに顔を歪めては居るが、黒髪に小さい顔、印象的な切れ長の美しい瞳を持つスタイル抜群の男はまさしく・・・・彼だ。

青山修、本人のご登場である。



「あ、え、っと・・青山君、」


「え、何その呼び方」


「・・・・・しゅ、修君?」


「いや待て、恋人でもねえのにそんな風に呼ぶなよ。きもい」



はて。私は彼の恋人ではなかったようである。



うん・・・そんな気はしてた・・・。美奈さんの携帯ほとんどならないし・・・。恋人どころか彼氏なんて居そうに無かったもん・・・・・。


でも少しは夢見たって良いじゃん。イケメン俳優と美人女優ならお似合いだしさ!!中身私だけど!!


「おい、人の話を聞け新川。」


「・・さ、サボってるわけないじゃん。療養してんのよ。」


「マネージャーはとっくに回復してるがお前が仕事を避けると言ってたんだが?」


なんだこの男。突然現れて人の仕事事情に首突っ込むなんて失礼な奴である。


「あ、貴方には関係ないで」

「大ありだからムカつくんだよ!お前とは今度の映画で共演するんだっつーの!」


ま じ で か


台本ちゃんと読んでないから他の共演者の欄とかまだ見てないよ。完全なるネタバレだよ。

でもあの映画、新川美奈と青山修が出るんだー。キャスト豪華じゃんか!面白いのかな!!


「お互い映画での顔合わせだって済んでる。忘れたとは言わせねえ」


いや知らねえからああああああ

なんなら人生で芸能人と生で話したのもアンタが初めてだからね!?


とは言えないので黙秘。


「演技しか興味ないみたいな仕事人間のくせに、今更反抗期かよ。だっせえな」


・・・・・・なんなんだこの男さっきから!!

反抗期とか黙れよイケメン!顔とスタイルと声が良いからって何しても許されると思うなよ!!絶対いつか本性バレて不人気俳優になるんだ。むしろなれ!!


だっせえのは私の本分であり、仕事を避けるのは新川美奈さんを色んな意味で守る為の正当防衛だ。

事情も知らん輩にとやかく言われる筋合いなんぞ無いのである。



「・・・・何にもわかってないくせに」



イライラが頂点に達し思わずこぼれた言葉は、彼の耳に届いていたのだろうか。



私を見る彼の目が、少し変わった気がした。






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