第七話 入学試験
あれから一ヶ月が経過した。
私達は目的地のアルバニア王国へと入った。
ジルの話ではこの国北部に位置し、魔術に関する研究にかなり力を入れている所だ。
世界各国から優秀な人材を集め、出資を惜しまず、魔術に関する研究を進めている。
そして、私が今立っているここがアルバニア王国の中枢にして最も栄えている町、魔法都市カルクだ。
この都市には魔術キルド本部、カルク魔法学校、冒険者ギルド カルク支部がある
魔法都市カルクは耐魔レンガで組まれた魔術ギルドを中心に、
北にはカルク魔法学校を中心とした学生街。
東には魔道具工房を中心とした工房街。
西には民家を中心とした住宅街。
南には外から来る者や冒険者を迎え入れる、宿場街がある。
カルクに着いたら時刻は既に夕暮れだったから、私達家族は宿場街に宿を取った。
北部なので、暖房が完備された宿屋だ。
夕食を食べて部屋に戻るとサラに話しかけた。
「お母さん、試験ていつ?」
「シルフィー明日が試験だけど?」
サラが何だかまたとんでもないこと言った。
「え、明日が試験なの?」
初耳だよ、まだ着いて数時間だよ、早くない。
「お母さん日にちを間違えてたみたいなの、でも、シルフィーなら大丈夫よ」
「お母さんが保証する」
やばいその保証はすごく心配だ。
「え、あ、明日備えて早くね、寝るね」
「おやすみ、お母さん」
「シルフィー、おやすみ」
今回の受験はダメかもしれない。
翌朝
両親二人に見送られ私はカルク魔法学校の試験を受けていた。
試験の内容は一般的な読み書きと算術と魔術の実技。そして最後に面接である。
試験は手を抜こうと思ってる。妙な成績で目立つよりも一般的な方が目立たないですむ。
知識があると言っても現代知識と読書の成果だ。
テストの結果は読み書き62点、算術53点、魔術実技70点だった。
まぁ悪くない結果だったが読み書きの最初の問題は謎だった。
『自分の名前と年齢を書け』
簡単すぎてびっくりした。
取ろうと思えば100点余裕の内容だった。
最後は面接である。
コンコン……
「はいりたまえ」
「失礼します」
椅子の隣に立つと自己紹介をする。
「受験番号463番シルフィー・ロア・ブリュケッドです」
「ふむ……席に着きたまえ」
「失礼します。」
「私はここの学校の52代校長ゼクス・アルバ・アームストロングじゃ」
いきなり校長!?
「普段なら儂自ら面接することはない。非常にラッキーじゃよ。」
「だが残念じゃ、君は本来なら不合格じゃ。いくつか質問に答えてもらわねば君の入学を許可できん。」
「え、どういう事ですか?」
「…おぬし……テストで……手を抜いたな?」
「……」
「ふむ沈黙もまた肯定なり。この学校は一切の身分階級を認めん。平民も貴族も王族であっても学び舎では一生徒じゃ。権力を振り回す者はは即刻停学処分じゃ」
「この学校は学びたい向上心と努力を第一としている。」
「お主は今年の受験生の誰よりも早く試験を終わらせ、計算にしても難しい問題を正解し、簡単な問題を不正解という謎の始末じゃ」
「……」
「なぜ手を抜くのじゃ?自らの努力を偽り手を抜くのはよろしくない……どうしたものかのう……」
「知識、力を得るために学ぶのが努力なら、自分の身を守るために偽るのもまた努力なのでは?」
「ふむ……これは一本取られた。……そうじゃな、これからもう一度テストを受けるのじゃ。次は儂が隣で見ててやろう、もちろん結果は非公式じゃ、儂は君の実力が知りたい。」
「いいですけど。満点を取れたら何かいいことはありますか?」
「普通の試験の際も満点の学生はその年のその教科の授業免除じゃ、儂が講師に裏から手をまわそう」
「もしも、全ての教科で満点を取れたら特待生にしてやろう」
「特待生?」
「特別待遇生徒のことですか?」
「そうじゃ、特待生は授業免除かつ学費免除。
本校の蔵書や設備を使い、好きに研究や実験ができる立場の生徒じゃ」
「まあ、ここ8年一人もでていないがのう」
「わかりました。全力でやります」
「筆記の方はどうにもならんが魔術の採点は辛口にするがの。ほっほっほ」
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筆記は余裕で100点を取った。
魔術の試験をするために耐魔レンガ造りの建物に入っていく。
中は体育館のようにガランとした作りだ、床には半径5メートルほどの魔法陣が横一列で5つ並んでいる。
「この魔法陣はなんですか?」
「王級治癒術の魔法陣じゃ。攻撃を受けても瞬時に回復するぞ」
「へぇ、すごいですね」
「それで、私はなにをすればいいんですか?」
「お主の魔術を儂に向かって打つだけじゃ」
「魔術を使うだけでいいんですか?」
「うむ、正しい本気でやるのじゃぞ」
「よろしくおねがいします」
校長が魔法陣に入ると、魔法陣を発動させた。
魔法陣の中心点をはさみ、校長が構える。
「いつでもよいぞ」
私は杖を構える。
私は杖を持ってる右手で、氷の砲弾を無詠唱で作り出す。
「なんと!」
校長が驚きの声を上げたが無視で。
大きさは人差し指の先ほど。
回転速度と射出速度は高め。
狙いは校長の額どまんなか……は、やめとこう。
発射。
氷の砲弾は「キュイン」なんて音を立てぶっ飛んでいき、
校長の顔端を通り過ぎると、「シャリン」なんて快音を響かせて耐魔レンガの壁に当たって、砕け散った。
「……っ!」
校長の頬と耳から、つうと血が流れ、そしてすぐに傷口がふさがった。
校長は後ろを振り返って、氷の砲弾の行く先を確かめた。
はずして正解だった。
治癒魔術は万能じゃない。
直撃したら即死してしまった可能性もあった。
王級じゃあ即死は治せない。
魔術の試験は文句なしの100点だった。
「お主の事では驚くのがアホらしいの。聖級魔術は使えるのか?」
「使えません。むしろそれをを学びに来ました。」
「なんと、それだけの魔法の技術があって聖級魔術が使えないだと?もったいないもったいない」
「そうじゃ。在学の間儂の特別授業を受けんか。もちろん良い成績がであれば専門分野の合格判定もだそう」
「わかりました。お引き受けします」
「王級魔術師の儂に師事できるなんて王でも泣いて喜ぶのじゃがな」
この学校では基礎授業以外の授業はすべて個人の選択式である。
講師が各自決めた時間割での授業に参加し合格を目指す。
一年単位で授業をする講師もいれば1月単位で試験をし月初めにやたらに生徒を募集する講師もいる。
食事、授業に必要なものはすべて学費で賄われるが、嗜好品、娯楽に関しては自分の所持金から出せねばならない。
生徒同士のお金のやり取りは可能だ。
売店にあるものでお菓子を作って売る女子や宿題をお金でしてくれる生徒までいるらしい。卒業までに正しい金銭感覚を身に付ける為らしいが……怪しいものだ。
「こらからよろしくお願いします」
「うむ、ようこそ。カルク魔法学校へ。儂は君を心から歓迎する」
これからは二週間に一本になると思います。