伍「未知種」後
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侵入者こと、汎銀河戦線兵士に殺害された者は、スニラトゥやラグを含む五名となった。その亡骸は、広い倉庫の一角に集められ、並べられた。
皆、彼らの正装とおぼしき、分厚い布のゆったりした服を着せられている。
青葉号のクルー達が見守る中、儀式は始まった。
ネフスワ達は静かに、とても静かに、たっぷりと時間をかけて別れの儀式を行った。
そして、銀色の箱に亡骸を詰めてそれを密封した。
『おつかれさまです』
「どうも……」
儀式が終わり川村達の前に出て来たネフスワ達は、一様に暗い影に覆われていた。
だが涙は無い。やはり、地球人とは違う。
『これから、あの棺を宇宙に葬るのですね、ネフスワ船長』
一番乗りだった三宅が、なんとなしに訊いた。
「そんなこと、死者に失礼よ」
そこへ突然、ネフスワの影から「小さな」アクァーラが割って入った。
『わっ、びっくりした。違うのですか?』
「大きな」三宅はアクァーラを少し見上げて言った。
ネフスワが「アクァーラ、あなたも失礼よ」と、さらに割って入る。
そして、こう付け加えた。
「どんなに腐って形がなくなろうとも、土のある所に葬るもの」
よこからアクァーラが「そうそう!」と相づちを入れる。
『そ、そいつは失礼しました』
じっと見下ろすネフスワの視線は遥か上。
しかし、そのさらに下にあるアクァーラと目線が合った。
しばしの沈黙……
『そーちょー、どーしましたぁ~?』
横に居た津田が、見かねて三宅を小突いた。
『な、なんでもねえ。ああ、失礼しました。我々は宇宙で死んだ者は宇宙に返すのが礼儀なので』
三宅は慌てて弁明した。
「ふーん、で、なんですか、それは?」
と、アクァーラ。
いつの間にやら、三宅は片手を上げて頭の横につけていた。いわゆる敬礼のポーズだ。
『こ、これは、相手に敬意を示す動作であります! では、海賊どもの処置がありますので、わたくしはこれにて!』
そして、奇麗な姿勢で回れ右。
そのまま三宅は駆け足で、その場を去った。
津田が『失礼します』と言って慌ててそれについて行く。
「へんなの」
津田の翻訳機が、そんな言葉を拾った気がした。
『若いって、いいな』
津田たちを見ていた川村が言い、翻訳機が直訳した。
「あら、あなた方も、そんなこと思うのですね」
ネフスワが意外そうに言った。
『銀河広しと言えど、たいていの生き物は老いて、死にますから。我々も』
「死なない生き物、っているのかしら」
『さあ。自分でもよくわからん、っていうのなら会ったことあります』
「あはは。きっといる、とは思ってたけど、この宇宙にはいろんな生き物がいるんですね」
『こんなにそっくりで、大きさだけこんなに違うのは、多分珍しいですがね』
川村はそう言って肩をすくめてみせた。
ネフスワがよく分からないけど真似してみる。
『ところで、はるばるここまで追って来たわけは、やはり……』
「ええ、仲間を迎えに。儀式も終わったから、改めて探しに行かなきゃ」
それを聞いた川村が『そのことなんですが』と遠慮がちに言った。
『残念ながら、あの船には居ません』
ネフスワが「え?」と拍子抜した声を上げた。
「それじゃ、どこに?」
『あ、それがその、ちょっと』
「ちょっと? そうか、あなた達の習慣で、宇宙に葬っちゃったのか」
がっくりとその大きな肩を落とすネフスワ。だが、川村があわてて否定した。
『そんな、死んでもないのに、葬りませんよ。ただ』
「ただ?」
『銀河連邦に未参加である文明の方には、そのテリトリーの外に何があるか、教えてはいけないことになってるのですよ』
「では、どうすればいいのかしら」
『方法は二つ。あなた方の世界が、銀河連邦に加盟する手続きを取っていただくか、このまま引き返していただくか』
川村は真剣な目をして、答えが一つしかない二者選択をせまった。
「勿論、引き返す、はないわね。私だって、生存者に会いたい。ああ、父さん」
『ああ、お父様が乗っておられたのですか。なおさら、再会できるようにがんばらないと』
「ええ。で、その手続きとは?」
『まずは、連邦の代表を呼びます。それから、あなた方の代表か、識者の方との話し合いをもちます。こちらの代表は、文明や生命形態により、こちらの方で調整しますのでご安心を』
川村は型通りに説明した。
「拒否されることってあるかしら」
『殆どないですね、よほど危険でない限り。コンタクトを取ってしまった以上、来るものは拒みません。拒まれたら、またの機会ということに』
「でも、私は単なる船長なので、本星までいかないと」
『要請があれば、いつでもどこにでも、代表を呼べますよ』
「わかりました、呼んで下さい。ちょっと時間がかかるけど、本星に行きましょう。到着まで、気長に待ってるわ」
『いやいや、気長に待つことはありません。本当にいつでも来ますから』
age2 第伍話 完




