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第六話 お母さん

『ARINOS』の営業時間、いつものように閃夜が一人、スタッフルームでお菓子を食べている間、双子も客が来ない間、会話の花を咲かせていた。

「絶対嘘だ」

「本当だって」

 レジの椅子で向かい合い、一方は冗談だという笑みで聞き流し、だがもう一方は真剣な面持ちで話している、そんな光景。

「いくら何でも、あの店長が素手で熊を倒すとか、そんなことできるわけないでしょう」

 そう。会話の内容は先日三人で行ってきたピクニックについて。

 帰る前、森の中で迷っていた時、一体何があったか。

 閃夜に車まで、お姫様抱っこの状態で連れて帰られた、そんな凪の姿だけでも咲にとっては十分楽しめるものだった。だからそんな状態に至るまでの過程はさぞ面白いのだろうと、恥ずかしがる凪から聞きだしていた。

 だがそれによって聞き出せた話が『熊退治』とは、さすがの咲にも予想できず、そもそも事実として認識することが困難だった。

「う~ん……じゃあ、その話しも『店長の不思議』かな?」

「それだけの価値は十分あると思う」

 先に説明した、閃夜の持つ数個の不思議、それが文字通り『店長の不思議』。

 今までにも様々な閃夜の意外な部分を見てきたが、何も全ての意外な部分が『店長の不思議』となる訳ではない。二人の作ったその言葉を与えるにも、二人の間でちょっとした基準がある。

 その基準とは主に、

 第一に、どれだけそれが意外であるのと同時に衝撃的であるか。

 第二に、どれだけそれが常識的に考えておかしいと感じられるか。

 第三に、どれだけ本人の性格とのギャップがあるか。

 このどれか一つにでも該当するようなら不思議となり、該当はしてもそれほど驚くべきことでもなければ不思議とは呼べない。要するに、二人にとって、その不思議を閃夜にあてはめることがどれほど面白いか、という基準に尽きる。

 そして今回新たに加わった、『実は熊を倒すだけの実力の持ち主』。上の三つの条件全てに該当し、また普段の閃夜の姿に当てはめても、十分に面白い事実だった。


「お客さんが来るよ~」


 めでたく第五の不思議が生まれた瞬間に、閃夜が現れた。

 さしもの双子もこんな状況には慣れてしまったため、突然客と言われても、三秒後には客を迎え入れる体勢となり、閃夜が店の前に、双子がレジに立つ。そんな理想形が完成していた。


「いらっしゃいませ。ARINOSUへようこそ」

 開いたドアに向かい、閃夜はいつもと同じ笑顔を作った。

「こんにちは……」

 そう声を出したのは、双子よりも背の低い、おそらく中学生の少女。

 彼女もまた、閃夜の美しい顔に見惚れ、顔を赤らめた。

「何をお探しでしょう」

「あ、えっとですね……」

 赤くなった顔の目を逸らしながら、改めて視線を閃夜に合わせる。

「えっと、『ナンベイオオアリ』ってありますか?」

「『ナンベイオオアリ』?」

 名前を再び聞き返し、そうだと返事をされたところで、閃夜もまた返事を返す。

「申し訳ありません。その蟻はこの店では取り扱ってないんですよ」

「じゃあ、注文とかは?」

「すいません。何せうちでは取り扱っていない物で、予約注文もできないんです」

「そうですか……分かりました。すいません」

「いえいえ。またのお越しをお待ちしております」

 そう、お互いに挨拶を済ませて、少女は店を出ていった。


「……」

「店長?」

「ん?」

 凪の呼びかけに、閃夜はようやく入口から振り向く。少女が出ていってからずっと、入口を見つめたままだった。

「今の子がどうかしたんですか?」

「……ううん。何でもない」

 言いながら、スタッフルームに入っていった。

(店長……?)


 ……

 …………

 ………………


「お疲れ様」

 閉店時間、閃夜はいつもの陽気な笑顔を見せながら、二人に給料を渡していた。

「……店長」

「ん?」

「どうかしたんですか?」

 給料を受け取った後で、そう尋ねたのは凪である。

「どうしたって、なにが?」

「さっきから変ですよ」

「変って、どう変なの?」

「なんというか……いつもと違って、笑顔が硬いというか、暗いというか、とにかく何か、悩んでるように見えるっていうか……」

「ほえ~、よく見てくれてるんだねぇ」

「え……」

 一気に顔が熱くなってしまう。この店にいる間、少なくとも咲以上には閃夜のことを見ている凪は、いつしかその変化には敏感になっていた。

「でも本当に何でもないから、安心して」

「……そうですか」

「まあまあ、店長がこう言ってるんだし、多分あんたが気にしなくてもいいことよ」

 咲からも笑顔でそうたしなめられ、凪もこれ以上の追及はやめた。

「分かりました。じゃあ、また明日」

「ん?」

 別段、特に変わったことは無い凪の挨拶。それに閃夜は、どういうわけか疑問の声と顔を上げた。

「ん? て……?」

「ん? ああごめん。明日は休みにするよ」

「え……」


『えぇ!!』


「うぉお……」

 閃夜の突然の発言に、双子は悲鳴を上げ、その悲鳴に閃夜はたじろいだ。

「どうしたんですか!?」

「突然休みなんて!?」

「二人とも、落ち着いて……」

 目の前まで迫ってきた双子を、閃夜はどうにかたしなめる。

「理由は何ですか?」

「大したことじゃないよ。何だか蟻の調子がよくなさそうだから、明日はお休みにして蟻の様子見てみようかってさぁ」

「ああ、なるほど」

 閃夜の説明に、咲は納得を見せた。蟻に関してはプロである閃夜のその言葉は、すぐに納得できた。

「そういうこと。明後日はいつもと同じように開店するからさ」

「分かりました。じゃあ、また明後日」

「はーい。気を付けて帰ってねー」



「にしてもびっくりした。いきなり休みにするなんて、何事かと思った」

「うん……」

「凪?」

 帰り道を並んで歩く双子のうち、咲は閉店の理由に納得していた。だが、凪はずっと、最初に閃夜に質問した時から、表情は変わらない。

「まだ納得できないの?」

「……うん」

「気にすることないって。多分あんたが店長のこと変だと思ったのも、蟻の調子が悪そうだったからだって」

「……多分違う」

 一人納得している咲とは違い、凪には分かった。

「何で違うの?」

「だって、店長の顔が変わったの、あの女の子が帰った後だよ」

「……ああ、さっきの。その後になって気付いたんじゃないの?」

「店長だったら、朝からそれくらい分かると思う」

「いやまあ、確かに……」

 閃夜の説明もそうだが、凪の説明もまた、咲を納得させるだけ力を感じさせた。

「まさか店長……」

「まさか……?」


『……』


「私みたいな女子高生より、中学生が好きなのかな……」

「それは無い」

(……多分)



「どうした? またえらく元気ないな」

 いつもの仕事を終わらせ、目の前には大好物のチョコレートサンデー。なのに、テーブルの家に腕を組み、その腕の上に乗せたその顔には、いつもなら見せる子供のような食欲を全く感じさせない、その他の感情や、更には生気すら感じさせない、全くの『無』の表情を浮かべるだけ。

「……すみません。ちょっと今日、仕事を受ける気にはなれないです」

「……心配すんな。今日はお前への依頼は一件も入ってねーよ」

「……」

 門口の言葉に、溜め息か、安堵の吐息か、どちらともつかない吐息を一つ。

 顔も上げず、サンデーには手を付けない代わりに、サンデーの器に左手を触れさせた。

「うえぇ……」

 過去にも何度か見せられた光景だが、未だ慣れない門口は不快の声を隠せなかった。

 器に触れた閃夜の左手の、手首から先のあらゆる部分から、種々様々な蟻が顔を出し、器に群がっていく。

 それまでは閃夜の完食した器の残りを蟻達に食させていた。それが今日は、全く手を付けていない山盛りのサンデーの白に、無数の漆黒が群がっている。いつもなら器の外側から見せられるそれを、サンデーの盛られた皿の上という、遮る物のない場所で繰り広げられる。生で見ている人間にとっては、あまりにも凄まじい光景だった。

 やがて、サンデーの山は数秒の内に低くなっていき、閃夜の中から出て十秒後には、器は洗ったようにピカピカになり、蟻達は閃夜の中へと戻っていった。

「……ああ、いつも言ってますけど、猛毒持ってるのも多いからちゃんと熱湯消毒してから使って下さいね」

「分かってるよ。にしても洗剤使わなくて良い代わりにそれじゃ、損か得か分からねえな……」


『……』


「門口さん」

 沈黙を破ったのは、閃夜だった。

「何だ?」

「……」

 閃夜は門口をジッと見つめ、無言で右ひじを着き、テーブルの上に右手を立てた。

「……うお!!」

 その変化に見慣れている門口は、最初は無言で見ていた。だが、それはあまりにも、今までの変化のそれとは違い過ぎ、声を押さえることができなかった。

「そいつも蟻か!?」

「ええ。それで聞きたいんですけど……」

 視線を右手に向けながら一度口を閉じ、出していた蟻を全て体の中に戻した。

 戻した後で、もう一度門口と向かい合う。

「この蟻、門口さんは欲しいって思いますか?」

「……思わねえな。でかすぎて気持ちが悪い。第一、俺は蟻のことは全然分からねぇが、見るからにヤバいだろう。その蟻」

「……」

 門口の返事を聞き、なぜか閃夜の表情には微笑が生まれた。

「……そう思うのならよかった」

 それだけを呟き、席を立つ。

「今日はもう帰ります」

「……そうか」

「すみませんが、裏から出てもいいですか?」

「あ? 別に好きにしろよ」

「どうも……」

「……?」


 いつも仕事の時にだけ使う裏口から裏路地へ。

(来た……)

 直後、閃夜の耳にその音は、匂いは、姿は届いた。常人にはまず分からない、また、分かろうと考えることもまずない、数匹の蟻。その足音、匂い、存在。

 そしてそれはやがて閃夜の足下へと寄ってきた。閃夜はそれに体を向けて、ひざを着いてしゃがむ。右手の人差し指を地面に着け、そこへ蟻達は昇っていった。

「一匹も欠けず、全員いるな」

 全ての蟻達が手の甲まで登ってきたのを見届け、そのまま蟻を見つめる。

「母さんに教えてくれ。今お前達が見てきたもの、全部」



 ……

 …………

 ………………



 夏休みと言えば、大抵の子供は遊んでいる。今時は娯楽の発展によって、外で遊ぶ子供を見かけることは少なくなったとはいえ、それでも日常的に見掛けるほどには子供の姿を見ることができる。

 そんな子供の光景を、彼女もまたベンチに座って眺めていた。

 他に子供や人の姿の無い中、砂浜で一人遊ぶ男の子。ただ、黙々と砂をいじっているその男の子には、その年代の子供にあるべき、表情と呼べるものが見られない。ただ無表情で、砂をいじっている。

 そんな光景を、少女は無言で見つめるだけだった。

 男の子が少女の方を向き、目を合わせる。少女は微笑みかけたが、男の子はまたそっぽを向き、続きを始めてしまう。

(前は今よりずっとたくさん笑ってたのに、どうしたんだろう……)


「こんにちは」


 少女が思考したちょうどその時、挨拶が聞こえた。

 そちらを見ると、

「……昨日の、店長さん」

「どうも」

 思考するまでもなく、昨日会った男性だと分かった。

 かなりの長身で、なのに良い意味で男性には見えない美形な顔で、髪もかなり長い、そんな男性。一度見ると二度と忘れられない姿なのだから。

「隣に座っても良いかな?」

「え? ど、どうぞ……」

 尋ねてきた美しい笑顔に心臓がときめきながら、それでも普通に返事をし、ベンチの右隣を勧めることができた。

 そして閃夜は、少女に促されるまま右隣に座った。

「昨日はごめんね。欲しい蟻を売ってあげられなくて」

「あ、いえ、そんなこと……売ってないのなら仕方がありませんよ……」

 なぜ現れたのかとも思ったが、どうやら昨日のことでの挨拶らしい。だから謝罪の言葉に対して、笑顔での言葉を返した。

「ごめんね。そうだ。よかったら名前教えてよ」

「私、ですか?」

「うん。ちなみに俺は、昨日着けてた名札見てくれたかな? 高遠閃夜」

「へぇ、綺麗なお名前ですね……」

「ありがとう」

「……!」

 礼を言われながら見せた、満面の笑み。この人の笑顔はいちいち心臓を高鳴らせる。だが、それが心地よかった。

「えっと……さか……じゃなくて、『岡崎(おかざき) (さや)』です」

「彩ちゃんね」

「はい。あと……」

 名前を名乗った後で、もう一人紹介するため、砂浜に目を戻した。

「あの子が弟の、『(しょう)』です」

「翔君、か……」

「……?」

 翔に目を向けた瞬間、閃夜の目が、少しだけ変化したように感じられた。

「あの……」

「ところでさ」

「はい!?」

 話し掛けようとした瞬間、また閃夜が声を掛ける。もろに驚愕の声となってしまったが、閃夜は構わず話し掛けてきた。

「昨日買いにきた、『ナンベイオオアリ』だけど、買ってどうする気だったの?」

「え?」

 唐突な質問ではあったが、別段隠すことでもない。彩は正直に話すことにした。

「翔への、誕生日プレゼントです」

「翔君への?」

「はい」

 また翔へと視線を戻した。

「もうすぐ、あの子の六歳の誕生日なんです。あの子昆虫が大好きで、最初はカブトムシとかクワガタとか、男の子が好きそうな虫をとも思ってたんですけど、翔は特に、蟻に凄く興味があるみたいだから、蟻をプレゼントしようかなって」

 話しているうちに、つい嬉しくなってしまった。そんな気持ちのまま、また閃夜に顔を向けた。

「それで、せっかくだからちょっとお金をはたいて、珍しい蟻にしようかなって。最近ずっと元気が無かったから、それで少しでも元気になって、くれたらなって……」


「……へぇ。そうなんだ……」


 閃夜から尋ねられた質問を、彩は普通に答えた。

 それだけなのに、いつからかは分からないが、質問してきた時に見せていた笑顔は、顔から一切消えてしまっていた。

「えっと、どうか、しました……?」

 直前まで感じた、親しみやすそうな雰囲気は皆無となっていた。この質問をすることも、正直、かなりの恐怖だった。

「……」

 閃夜は彩を見たが、口を動かす様子は無い。だが代わりに、右手をズボンのポケットに突っ込んだ。そこから取り出したのは、あの店にいくつか置いてあった、薄く小さい、円状の透明なケース。

「これ」

 それだけ言われて、渡された。受け取って、一体何だと見てみると……

「……きゃっ!!」

 中身を見た瞬間、つい、ケースを放り投げてしまった。だが宙に舞ったそれを、閃夜は上手いことキャッチした。

「何ですか? それ……」

 閃夜はキャッチしたそれを、もう一度、嫌がる彩の目の前まで持ってきた。

「これがナンベイオオアリだよ」

「え!?」

 突然の言葉に、愕然とした、そんな声が彩の口から漏れた。

 ケースの中で蠢く、数匹の黒い生物。

 長い二本の触覚と、その下に置かれた怜悧な目。長く伸びた六本の足でケースの中を移動しながら、顎は鋭く、また尻の部分は鋭利に尖っている。

 何より、その大きさは蟻と呼ぶにはあまりにも大き過ぎた。よく見かける蟻のサイズがせいぜい米粒よりも大きいか小さいかというのに対し、この蟻は、小さな蟻でも五百円玉サイズ、大きい物は、一円玉を二枚並べたほどの大きさがある。

「体長は二十五ミリから三十五ミリくらい。蟻の中でも相当でかい部類で、ハリアリの中では世界最大だよ」

「へぇ……」

 説明にしみじみと聞きながら、もう一度ケースを見た。普通の蟻よりも遥かに大きなその姿は、彩にとって、あまりにも不気味に映った。

「何て言うか、怖い見た目の蟻なんですね……」

「見た目だけじゃない」

 また閃夜が言い、彩はまた閃夜を見た。

「『ハリアリ』って言ったでしょう」

「はい……」

「ハリアリっていうのは、その名の通り、蜂みたいに針を持ってる蟻のことだよ。蟻と一緒で人間でも刺してくる」

「え……」

「特にこのナンベイオオアリは、針に強い神経毒を持ってて、威力は蜂の中で一番怖いスズメバチ並って言われてる。刺されたら、最悪死ぬ危険性だってある」

「え……!!」

「君はそんな危険な蟻を、六歳になる子供にプレゼントしようとしたの?」

「え……えぇ!?」

 あまりに突然の話しに、思考が追いつかなかった。

 突然昨日行った店の店主が現れ、プレゼントしようと思った蟻を見せられ、その蟻の説明を受けた。その蟻は、大きな体と不気味な見た目をしていて、おまけに蜂のような毒を持っていて、すごく危険なのだという。

 そして、そんな蟻を、六歳の子供に渡そうとしたのかと、怒っている。

「どうなの?」

「ちょ、ちょっと待って!!」

 これ以上頭が混乱する前に、急いで答えを口から出した。

「待って下さい!! そんな危ない蟻だなんて知らなかったんです!! 本当です!!」

「じゃあどうしてこの蟻を選んだの? 珍しい蟻ならまだたくさんいたし、聞いてくれれば予算内で良い蟻を見つけてあげたのに」

「それは……!」

 迷ったが、この人には正直に言った方がいい。そう感じ、真実を話した。

「……お母さんが、その蟻にしなさいって」

「お母さん?」

「はい。翔に蟻を買ってあげようって決めた時、お母さんに相談したら、一番良い蟻を調べてくれるって言われて、それで提案されたのが、そのナンベイオオアリっていう蟻で……それで、外国の蟻だけど、昨日のお店にならきっと売ってるから、そこへ買いにいきなさいって言われて……でも、売ってないって言われてから、諦めたんです……」

「……」

 閃夜は目を細めながら、顔を正面に向けた。その視線の先には、翔がいた。

「悪いけど、翔君を呼んでもらっていいかな?」

「え?」

 理由は分からないが、その真剣な表情を見ていると、断る気が起きなかった。


 言われた通り、翔の名を呼び、こちらに手招きすると、翔はこちらへ歩いてきた。

「翔、あのね……」

「翔君」

 彩が話し掛ける前に、閃夜が翔に話し掛けた。

「こっちに背中を向けてもらってもいいかな?」

「……」

 翔は答えず、無言で言われた通りにした。

 閃夜は背中を見つめながら、右手を背中に触れさせた。

「……!!」

 突然、翔は声にならない声を上げ、大げさに体を硬直させた。

「ちょっと……!!」

 何をするのか。

 そう叫ぼうと思った時には、閃夜は翔の肩を掴み、服に手を掛けていた。

「何ですか!? ちょっと……」


「っ!!」


 今日だけで何度目になるか分からない、だが、その中で間違い無く最大の驚愕が、目の前に現れた。

「な……に……?」

 服を上げ、露出させた、翔の背中。それを、閃夜は無表情で見ていた。だが、彩はその光景に固まり、翔本人は、体を震わせていた。

「なに、これ……翔?」

 これ以上はいけない。そう閃夜は思ったのだろう。服を下ろし、隠した。

「翔……」

 震える声で呼び掛けるが、翔はこちらに背中を向けたまま、何も言わない。

「翔……!」

 両肩を取り、正面に向かい合う。翔はあからさまに視線をずらした。

「誰がしたの?」

「……」

「もしかして、お母さん?」

「……」

「そうなのね! お母さんがやったのね!?」

「……」

 そして、とうとう翔は、目から大粒の涙を流し、嗚咽を吐いた。

「翔……」

 その姿にいたたまれなくなり、思わず抱き締めた。その背中にこれ以上の痛みを与えないよう。極力、背中に腕が当たらないよう。

「ごめんね……気付いてあげられなくて……ごめんね……」


「心当たりは?」


 二人の光景を眺めた後、閃夜がまた切り出してきた。

 こんな状況で聞いて欲しくない。そう思いもしたが、やはりこの質問も、閃夜の顔を見ていると、無視することができなかった。

「……私と翔は、本当の兄弟じゃないんです」

「……」

 泣き止む気配を見せない翔を抱き締めたまま、彩は話し続けた。


「お母さんは、元々シングルマザーで、私のことをずっと一人で育ててきました。それが、三ヶ月前に今のお父さん、翔のお父さんと結婚して、名前が坂木(さかき)から、岡崎に変わりました。お父さんはバツイチで、息子の翔を連れていて、最初は抵抗がありました。けど、お父さんは他人である私に、本当の娘みたいに優しくしてくれて、翔は、とても人懐っこい性格で、私のこと、お姉ちゃんて呼びながらいつも甘えてきて、私が二人のことを、本当の家族だって受け入れるのに、全然時間は掛かりませんでした」

「でも、お母さんは、私みたいに簡単にはいかないみたいでした。お父さんのことが好きになって結婚したんですけど、翔のことを、息子として見るのは抵抗があるみたいでした。翔の方は、性格が性格だから平気でお母さんに接してたんですけど、でも、お母さんずっと抵抗があって、息子として愛することができないっていうふうに見えました」

「だから、なのかな? 本当の息子じゃない翔が邪魔になったのかな? だから、こんな酷いことして、猛毒の蟻を、翔にプレゼントしようなんて考えたのかな?」

「翔が、お母さんに、一体なにをしたの……?」


「……君はお母さんにどうしてほしい」

「私は……」

 答えるのに、迷った。だが、腕の中の翔を感じながら、言葉が勝手に口を突いた。

「お母さんには、感謝してます。ずっと一人で、私のことを今日まで育ててくれて、すごく大変だったんだってこと、知ってます。でも、だからって、何も知らない翔に、こんなことして、こんなことができるなんて、しかも私にまでそんなことさせようとして……許せない! お母さんには、罰を受けて欲しいです!!」

 力の限り叫びながら、涙がこぼれた。翔を抱き締めながら、翔と共に、自分の嗚咽も漏れる。

 感謝の気持ちがあるのは嘘では無い。

 だからこそ許せなかった。

 義理の息子を傷つけて、実の娘にまでそんなことをさせようとして。

 だから、こんなことをした罪は、罰を受けて償ってほしい。


「……うん」



   ◆



 住宅街に立つ家の一件、『岡崎』の表札が掲げられた家。

 そんな家の中の台所。そのテーブルの椅子にその女性は煙草を片手に座っていた。

「はぁ……」

 座りながら、大きな溜め息を一つ。吐きながら、ブツブツと一人ごちていた。

「さすがにもうどれも飽きたわね。猛毒の蟻をプレゼントにしようと思ったらお店には売ってない……て、まあ、普通客が危険になるようなもの売ってるわけないとは思ったけどさぁ……」

 それでも、せっかく新しく思い付いた方法だと言うのに、それを実践できないと言うのはやはり落胆してしまう。

 今まで様々なことを、息子の背中に、飽きるまでしてきた。

 背中に煙草を押しつけもした。

 家にあるだけの裁縫用の針を背中に隙間なく刺した(当然刺した後の針は消毒した)。

 包丁で背中の表面を少しずつ刻みつつ皮を剥がした。

 針に裁縫用の糸を通して縫いつけ、その糸はすぐに引っ張りだした。

 熱したアイロンを、全体が当たるよう背中に押しつけた。

 生傷の部分にはカラシや醤油を塗り付けた。

 かさぶたができれば剥がし、傷が簡単には治らないようにもした。

 そして、それら全て、十回も繰り返すと飽きてしまった。

 下手なことをすると見た目でばれてしまうから、背中以外に何もできないのが歯がゆかった。

 とはいえ、背中にしかしていないうえ、夫は仕事で家を開けることが多いし、風呂に入る時は必ず自分と一緒に入っているから娘にもばれていない。

 傷めつけるのは飽きたから、そろそろ命を狙ってみようかと考えた。とは言え、普通に殺したのではまずい。そんな時、娘から息子へ、昆虫の、蟻をプレゼントしたいと相談され、チャンスだと思った。

 蟻には毒を持つ種類が多い。そのことをたまたま知っていたから、その中でも昆虫好きの息子が喜びそうで、且つ猛毒の蟻。それを、娘に買わせ、プレゼントさせる。

 息子はその蟻に手を伸ばし、間違いなく刺される。それで命を落とせば良し、落とさなくとも、また長く楽しむことができる。

 当然そのことで周りは騒いでくるだろうが、蟻を買ったのは娘なのだから、誰もが無知な娘が起こした事故だと思う。仮に自分が責められても、涙ながらに反省する素振りを見せれば、娘が真実を話したとしても、それは娘の言い逃れにしか見えない。

 完璧だ、と思った。

 だが、昨日になって、そんな物騒な蟻が、いくら専門店だからと置いてあるわけがない。そう気付き、案の定、娘は蟻を買ってくることは無かった。


(……まあ良いか。そのうちまた良い方法が思い付くでしょう。それまでは……たしか、倉庫に電動式ドライバーがあった。それにガスバーナーもあったし……そうだ! 扇風機もまだ使ってなかった!!)


 新しい遊びのアイディアがどんどん思いつく。どんなに残酷で、痛い目を見せるか。あの無駄に明るい息子から笑顔を奪うことのできる方法があるものか。それを考えるだけで、とにかく胸が躍り、結婚直後に右も左も分からず、ブルーになっていた気持ちは晴れやかとなり、今ではご近所でも良い奥さんで通っている。

 子を持つ専業主婦の特権。シングルマザーだった時代には感じられなかったそれを満喫し、明るい未来に胸躍らせていた。


 ピンポーン


 突然、呼び出し音が鳴った。

「はーい」

 お楽しみを考える時間を邪魔された。そのことに苛立ちながらも返事をし、煙草を消し、匂い消しの清涼菓子をかじり、玄関まで歩いた。


 玄関を開けた瞬間、

(まあ! イケメン!!)

 そこには、見知らぬ男が一人、笑顔で立っていた。

 見上げるほどの長身ながら、すらりとした体型で、一本に縛った髪は随分長く艶があり、女性のような色香の漂う美しい顔立ち。そんな美形の男の表情に、釘付けになった。

「こんにちは」

「……! ええ、こんにちは。えっと、どちら様でしょう?」

 挨拶で我に帰り、少し戸惑いながら、笑顔を作り、話し掛けてみる。

「あなたは俺を知らないでしょうけど、俺はあなたのことは大体聞いて知っています。『岡崎 悠子(ゆうこ)』さん」

 男は笑顔でそう言いながら、手を差し出してきた。

「は、はあ……」

少し赤面しながら差し出された手を握り返す。男はそれを、強く握り上下に振った。

(痛たた、顔に似合わず握力強いわね……)

「息子さんは、可愛いですか?」

 突然、男はそう尋ねてきた。

「え? え、ええ。可愛いです」

 実際にそう思っている。痛みに上げる悲鳴も、自分を見る度に脅える様も。普段目障りに感じていた息子も、そんな時の姿だけはどれも可愛らしく、何度も見たい、そう思った。

「そうですか。その可愛い息子さんに、あれだけのことができるんですね」

「え……?」

「すごいですね。翔君の背中」

「っ!!」

 笑顔は変わっていない。だが徐々に、声のトーンが落ちていく。

「あんなに可愛い子の背中を……あれじゃ、一生人前で服は脱げないでしょうね」

「え……」

「むしろ、あんな背中でよく翔君は平気でいられたな。普通あの年齢で、普通に歩くのも無理ですよ」

「あ、いや……」

「よくあんなことができるな……」

「ちょ、ちょっと……!!」

 直前まで輝いて見えた男の姿が、今は不気味で仕方がなくなった。だから、離れようと手を離そうとした。だが、男は強い力で握り、離してはくれない。

「離して下さい!! 大声上げますよ!!」

「……」

 だが、男はそれでも、手を離しはしない。

「何で……?」

 そんなことを知っている。男の表情に、そんな言葉が出そうになった。

 だが、男は、言う前に答えた。

「俺の子供達が、昨日この家を覗きました」

「は……?」

「子供達から全部聞きましたよ。あなたが翔君にしたこと」

「……」

 意味が理解できず、狼狽するしかない、そんな自分に、男は続ける。

「……実の子供じゃないと、愛することはできませんか?」

「はあ?」

 終始変わらない笑顔だった。なのに、その笑顔には、こちらの脅しなど全く通じない。そう、言葉にせずとも圧倒させられる力があった。

「義理でも実でも、翔君は子供で、あなたは母親だ。だったら、母親として子供を愛してあげるのって、当然のことじゃないんですか?」

「……」

「それとも、あれがあなたの愛情の形ですか? 見られなくなるくらい傷つけるのが?」

「……」

「別に偉そうなことを言う気は無いけど、母親が子供に向ける愛情の形の、何が正しくて、何が間違ってるのか、そんなこと、俺にだって分かりますよ」

「……るさい」

 そこまで聞いて、とうとう、侑子の中の何かが、音を立てて切れた。

「うるさい!! あんたなんかに何が分かるっていうのよ!!」

 今まで散々感じて、それでも我慢して、胸に溜めてきた気持ち。

「何が悪いのよ!! 私にだって娯楽は必要でしょうが!! 一人娘を育てるために働くのと、専業主婦じゃ苦労が全然違うのよ!! だからちょっと義理の息子で遊んだだけでしょう!! 子供のために私は頑張ってるのよ!! 子供だって、親に恩を返したって良いじゃない!! それがたまたまこんな形になっただけよ!! それを少し早めたくらいで何が悪いっていうのよ!!」

「……」

 結婚が決まった時は、働いている今よりも楽ができる、そう軽く思った。だが、専業主婦としての生活は、想像していた以上に過酷だった。会社の付き合いとは全く違うご近所付き合い、既に一人でも大丈夫だった娘と共に、育てる必要のできた幼い息子。今のような長期休みなら、一日中子供と一緒にいて、そんな自分にご近所の奥様方は目を光らせて、心の休まる暇など無い。

 毎日が大変で、苦痛で、容赦なく溜まっていくストレス。それを解消したくて、そんな時、たまたま目の前にいたのが翔だった。

 だから翔で遊んだ。

 ただそれだけなのに、どうして自分がこんなに責められる?

 主婦として、母親として、必死にやってきた自分だけが、どうしてここまで責められる?


「何を言っても無駄か……」

 そう、男が呟いた、その瞬間、


 ゾワワワワ……!


 唐突に生まれたその感触に、体中が震え、むず痒くなり、鳥肌が立った。

 まるで、足の、素肌の上にかなり大きな虫が歩いているような……

 その震えの元凶の、右足に目を向けた、その時、


 チクッ


「痛い!!」

 今まで感じたことの無い強い痛み、今度はそれが走った。

「……!」

 その直後、目がうつろになった。徐々に、目の前が暗くなっていく。


 徐々に朦朧とする意識の中、その声は、随分と遠くから、聞こえた。


「別に、あんたがどんな母親だろうとどうでも良い。けど、同じ母親としては、許せない。何より……」


「自分の子供どころか、俺の子供まで、よくも、人殺しにしようとしたな……」


「俺の子供達が、直接人を殺すことだけは許さない……子供達と一緒に人を殺していいのは、母親である俺だけなんだよ……」


「この……屑が」


 ……

 …………

 ………………



 目を覚ました時、白が目に映った。それが天井だと分かり、次に気付いたのが、随分昔に嗅いだ、アルコール等の消毒液、布の香り、その他様々な薬の香り。

(ここ、病院……?)

 訳が分からないまま辺りを見渡すと、そこには、深刻な表情の、男が一人、立っていた。

「あ、あなた……」

 意識がはっきりしたことで、夫を呼んでみる。しかし、微笑みかけてくれると思った夫の顔は、深刻なままだった。

 どうしたのか。自分はもう、平気だと言うのに。

 そう思いながら、よく見ると、後ろに見知らぬスーツ姿の二人組みの男が立っている。

「妻が目を覚ましました」

 夫が二人組に向かって言った。

「え、何……?」

 もう一度辺りを見渡すと、二人組の間には、翔と、彩の姿が見える。

 二人組は懐に手を入れながらこちらに近づき、それを取り出して見せた。

 黒の長方形と、その中心に貼られた写真、その下には金色の花。

 警察手帳。

「目を覚ましたばかりで申し訳ありませんが、岡崎悠子さん、翔君の背中の傷のことで、お話を伺いたいのですが」

 刑事の言葉に悠子は、笑顔とも泣き顔とも取れない表情を浮かべるだけだった。



   ◇



『逮捕されたのは『岡崎悠子』さん、三十七歳。悠子さんは夫、健一(けんいち)さんの連れ子である義理の息子に対し、健一さんが家に中々帰らないことを良いことに、毎日のように虐待を行ってきました。息子さんの背中には、無数の切り傷や刺し傷、更にはタバコやアイロンを押し付けた痕もあり、通常なら歩くことさえ辛いはずの状態であったとのことです。これらのことは、悠子さんが蜂か何かに刺され、倒れていた所を娘さんが見つけて救急車を呼んだ所、偶然その場に居合わせた息子さんの背中の傷に医師が気付いたことで、虐待が明らかとなったものでした。調べに対し侑子さんは……』


 いつものように、凪と閃夜はスタッフルームに座り、テレビでそんなニュースを眺めていた。

「怖いねぇ」

「本当の家族じゃないから、これだけ酷いことができるんでしょうか?」

「さあねぇ」

 凪の問いかけに、閃夜は冷たく返すのみだった。


「……おっと、お客さん」

 突然の言葉。いつもと同じように凪は無言で立ち上がり、咲と共にレジに立った。

 そして閃夜も、いつもと同じように入口前に立ち、笑顔を作った。だが、その笑顔がいつもと違い、やけに嬉しそうにしている。そのことに、凪だけが気付いた。

 そして、ドアが開いた。

「いらっしゃいませ。ARINOSUへようこそ」

「こんにちは、店長さん」

 床に立っているのは、三日ほど前、蟻を買いにきて、置いていないからと諦めて帰っていった、中学生の女の子。

「本日は何をお探しで?」

「弟の六歳の誕生日プレゼントに、お勧めの蟻を教えて欲しいんですけど」

 閃夜は嬉々としながら、その子の案内を始めた。

 やはりその時の閃夜の顔は、いつも以上に明るく見える。まるで、互いにとても親しい間柄であるように、仲良く、友達のように。

(むむむむ……)

 そんな、女の子の姿が、凪には大変に、妬ましく映った。


「ありがとうございました」

 蟻と、必要な道具を選び終え、会計を済ませた後、入り口前でまた互いに向かい合っていた。

「どういたしました。翔君によろしくね」

「はい」

 そんな挨拶をした後だった。


 ガバ


(えぇ!!)

(わぉ……)

 低い背でつま先を精一杯に伸ばし、長身の閃夜の首に手を回し、互いに至近距離で触れ合う。

 その光景に、双子は興奮を見せた。だが、その興奮の根本たる感情は真逆の形だった。


(本当に、ありがとうございました)


 チュ


(なぁあ!!)

(おほぉ!!)

 最後には、閃夜の頬にキスをし、そのまま店を出ていってしまった。

「また来てねー」

 だが閃夜は関係ないとばかりに、平然と、店を離れていく女の子に手を振っていた。


「いやー、いやいやいや……」

 手を振り続ける閃夜に対して、声を掛けたのは咲である。

「店長も中々やりますなぁ」

「何が?」

「何がって、またまたぁ。もてますねぇ」

「ん?」

 先の言葉の意味を、まるで理解していない。そんな表情と声だが、咲は面白そうに話を続けた。

「店長って、以外と肉食系男子だったりします?」

「肉食? まさか。違うよ」

「じゃあ、草食系ですか?」

「違うと思うよ。強いていうなら……」

「いうなら?」

「う~ん……菓子食系?」

「……そんな言葉無いと思いますけど」

「じゃあ、う~ん…うん」


「母親系男子!!」


「……はい?」

 そんなことを、胸を張って堂々と言われ、咲の顔にもはてなが浮かんだ。

「だって俺は、この店で売ってる蟻、全部のお母さんだも~ん」

「ああ、なるほど……お父さんじゃなくて?」

「そ。お母さん。何なら二人のお母さんになってあげようか?」

「えっと、遠慮しときます……」

 相変わらずの閃夜の天然ぶりを見せつけられ、この人にはあらゆるちょっかいが通用しない。そう感じた。

「ところでさ、凪ちゃんはさっきからどうしたの?」

 いきなりそう尋ねられたことで、レジの方を見ると、凪はこちらに背を向け、レジの向こうの壁に手を突き、何かをぶつぶつ離していた。


(抱擁した上に接吻……抱擁した上にほっぺに接吻……)

(私はデートにお姫様抱っこ……デートして、熊から助けられて、お姫様抱っこ……)

(負けてる、絶対に負けてる……)

(やっぱ店長、女子高生より女子中学生なんですか……?)


「あー、あれは気にしないであげて下さい」

「あ~、うん、そうする」

 閃夜の疑問、咲の興趣(きょうしゅ)、凪の葛藤。

 それぞれが感じたそれらの感情は、次の客が来るまで無くなることはなかった。





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