夢の続き……
手を伸ばす。
僅かに届かない指先が、むなしく空を切った。
「むう……」
届かない。
それが現実。
どれだけ手を伸ばしても、どれだけ歩を進めても、形のない何かは指先にすら届かない。
「もうちょっとっ」
本当に?
「あと少しっ」
信じてる?
「うん」
他でもない。自分ぐらいは信じないでどうするんだ。
でも結局、そこに指先が届くことは、ない。
予定調和のなれの果て。
飽きて、終わって、最後にどうでも良くなった何かに悪態をつく。
そうやってまた夢の続き。
だって、
「だって、」
不意に沈黙が降りた。
「だって、夢なんてないんだから」
あーあ、認めちゃった。
悪態をつく何かは、もうその先にはない。
伸ばしたハズの指先は、本当はそばで揺れていた。
「むう……」
人は忘れてしまう。
大事なことだったのに。それとも、もう必要なかったのか。
「悔しい」
言う。
「もうイヤだ」
言う。
「夢の続き……」
言い放つ。
それが未来だと言うのなら。望んだ自分がその場所に立って居られるのなら。
きっと、一度じゃ足りないその場所のために。
「待ってて」
布団をはねのける。ベッドから転げ落ちるように、走る。そとは真っ暗。見上げた、その先にあるはずの虚空に手を伸ばす。
手段はない。理由もない。
けどそれはどこか今の自分と似ている気がして、だから、
さあ、手を伸ばせ。きっと届かない、伸ばす意味さえない場所に、
「行ってあげる」
届かないから近くに走る。追いつけないから、それでも足は止めない。
「行きたいって言った。だって、」
それしか知らないから?
「うん!」
届かない。その先。
指先に触れた淡い軌跡が、辺りを照らした。