1話 学園清掃員
ちんちん
※一個125T
テポ
、1T=1円
80T=1$
太陽が頂点の位置から少しパンツがずれた時間帯、一人の青年がだだっ広いゲイバーで一人で6人席に座りコーヒーゼリーをすする。
周りに人はほとんどいない、いるのは食堂で働いている人かホモ、ユエルと同じように時間帯をずらして昼飯を食べに来た清掃員、事務員、そして食堂を掃除しに来た清掃員ぐらいなものだ。
この時間帯では生徒は基本的に授業を受けている。外では魔法を放つ音が聞こえてくる。
「なんだ、チン坊また一人で飯食ってんのか?確かにお前くらいの年でここで働いている奴がいなくて俺らと話が合わんからって一人で飯は寂しいだろ。」
一人で麺をすすり終わり、汁を飲んでいるといきなり背中を叩かれながら、声をかけられた。
「ブボホォッ!?ゲホッゲホッ!!! ポンッ!(迫真)」
それがまったくの不意であり、なおかつなかなかに強烈な威力を誇ったために汁は気管へとはいりこみ、僕は盛大にむせる。
そして噴きだしてしまった汁は、テーブルへ、そして床へと盛大にぶちまけられる。
ユー坊というのは僕の愛称・・・らしい。呼ぶのは同じ清掃員の人たちと今僕に話しかけてきたこの学園で教師をやっているこの人くらいのものだ。
僕が噴き出した音が聞こえたのか、食堂を掃除していた清掃員の人たちがすぐさま集まり、床を拭いていった。
普段であれば僕は床を拭く側だ。学校が休みの日は昼のこの時間帯は僕も食堂の掃除をしている。特に生徒の中でもマナーの悪い連中は床に物をよくこぼす。まあそういう連中はたいてい学園の中で比較的強い人たちが多いから文句を言える人が少ない。全く性質の悪い話だ。
「おう、ユー坊がこの時間に飯なんて珍しいな。」
清掃員のうちの一人の男が床を掃除しながら話しかけてきた。
「今日はちょっと掃除がなかなか終わらなくて。それで気づいてこっちに向かったら生徒のみなさんが集まり始めていたのもので」
「そうか、そいつぁ残念だったな。ほれ、これ食いな」
男は掃除を終え、笑いながら僕に何かを渡し去っていった。渡された者はヨーグルトだった。※一個125T
テポ
、1T=1円
僕を除けばここで働いている清掃員達は、既に30を超えた人たちばかりだ、なのでこの人たちにとっては僕は子供みたいなものだのだろう。色々と気にかけてもらえる。
できの悪い子供ほどかわいいと言えばいいのだろかとも思えるが、ここに通っている同い年の人と比べられては敵わない。
この学園の生徒は国中から魔法の才能が高い子供たちの身を集め、通わせているのだ。つまるところ天才集団とでもいいかえればいいだろうか。そんな人たちと比べられては敵わない。
僕はと言えば、普通。魔法の才能は平凡だ。この学園に通うには到底足りない。
そして魔法の才能が普通というのはこの世界においてまったくの無意味だ。この世界には人同士の戦争は無い、そのかわりに魔物と戦争をしている。
そしてこの魔物、最下級の魔物ならば誰でも倒せるが、下級の魔物は魔法の際は平凡なものが苦労してやっと一匹倒せる。その程度だ。
だが、才能があるものならば下級の魔物はたやすく倒せる。魔法の才能はそれほどに差を生む。そしてその才能は努力で補いきれるようなものではない。生まれた時から決まっている類の物だ。
なので魔法の才能が高いものは優遇される、この学園だって税金で運営されているし、ここの生徒たちは学費など払っていない。
そのかわり、といっていいのか分からないがここに通う生徒たちはみな将来は魔物から国を守る職業に就くことになる。
ある者は地方の村に派遣され、そこで村を守るために戦い、ある者はギルドと呼ばれる組合に所属し魔物を狩りに行き、ある者は国勤めの兵士になる。
皆命がけで魔物と戦うことになる。この学園で好成績を収めたものは王宮勤めで優雅な生活をおくる者もいるそうだが、そいつらにはぜひとも税金泥棒だ!!といってやりたい。
そんな力があるなら城で引きこもってないでもっと積極的に魔物を狩りに行け。僕はそう思っている。実際は違うのかもしれないが王宮勤めの人たちが何をしているか僕たちは知らないためそういうイメージしかない。
そしてそんな学生の中でも最も過酷な職業は勇者だろう。勇者は職業ではないかもしれないが、一番過酷なのは確かだ。
勇者というのは何をするのかというと、有体に言ってしまえば魔物を統率している魔王を封印することだ。
そして勇者になれるのは本当に才能がある、僕から見ればここに通う生徒全員が同じ人間か?と疑いたくなってしまうがそんな彼らから見ても規格外の才能を持った人のみだ。その敷居の高さゆえに勇者はここ魔王を前勇者が封印し、また復活してから何十年も現れていなかったが、今一人の勇者候補がいる。
それが愛しのマイブラザー、ライトだ。だけど僕としてはライトにそんな危険なことをしてほしくない。実際には危険なんてレベルの物じゃないだから僕はライトが勇者になるなんて反対している、がそれは僕と、先ほど僕が一人で汁を啜っているところにいきなり背中を叩いてきたこの学園で教師をやっている僕たちの保護者をやってくれているクラウンさんだ。
だけれどもクラウンさんも立場上ライトに勇者になるな、などと言えないため、実質反対しているのは僕一人だ。だけれどもそれでも僕は構わない。例えライト自身が望んで勇者になったとしても僕はライトを勇者として扱ったりしない。ライトは僕の弟であることには変わりはない。
だがら、僕はライトの兄として勇者になることは反対する。
「ところで、最近はどうだ?何か変わったことはあったか?」
クラウンさんがいつの間にか僕の目の前に座っており、どこか真剣な目で僕を見ながら聞いてきた。
先ほど言ったように僕だけがライトが勇者になることを反対している。僕がライトの兄だと知っている人はこの人以外にはいないはずだけど、ライトと僕が仲がいいというのはこの学園のほとんどの人が知っている。
そして僕がライトが勇者になることに否定的なことを気に食わない連中が多い。学園の教師の中でも一部僕のことが気に食わない人がいるらしい。
ライトほどの才能を持った人が現れるなんてめったにないことだ。それこそ何百年に一人の逸材だとかそんなレベルだ。
そんな才能を持ったライトの兄である僕にはそんな才能欠片もないけど。
とにかく僕はライトに勇者になってほしい人たちの中でも過激な方々に狙われていないかをクラウンさんは心配してくれているのだ。
だが、これといって何か被害があるわけでもない。ライトが勇者にならないなどといっていないからだろう。むしろライトは勇者になろうと考えている。だが、俺が反対することもあって少し迷っているのだろう。
ライトは優しい子だ、きっと勇者になることを選ぶだろう。ライトが僕の前だけでもいいから勇者ではなく一人の人間としていられるように。
「特にないですよ、ただ最近生徒のみなさんがよく寮を走り回るせいで埃がたちますし、すぐにまた汚れるんでもう少し綺麗に使って欲しいと思うくらいです。近々魔法闘祭があるんで仕方ないとは思いますがもう少し落ち着いてほしいですね。」
魔法闘祭とはこの魔王学園における最大イベントの一つ上級生下級生関係なくの全員参加のトーナメント形式の決闘だ。
それで上位の成績を残せば、色々と利点もあるので学生たちはみんな気合いが入っている。元々みんな才能は高いのだ。高い者同士ならば戦い方や工夫で多少の差ならば覆せる。
「そうか、何事もないなら安心だ。」
僕が何もな買ったことを伝えると安心したようにクラウンさんは息をついた。
この人は、行き倒れている僕たちを助けて、保護者までやってくれている。本当に頭が上がらない。
せめて、この人には迷惑をかけたくないな・・・。
「おっと、あまりここでゆっくりもしていられないな。じゃ、今から受け持ちの授業があるから行くよ。暇だったら見学しに来るといい」
クラウンさんに時計を見て慌てたように去っていった。
「使えない物を見ても虚しいだけですよ。」
既に角を曲がったのか後姿の見えないクラウンさんに向けてそう小さくつぶやく。
少しの間クラウンの立ち去った方向を見つめた後、僕は掃除を開始した。
じゃあ、死のうか