聞こえない
聞こえない
聞こえない
見えない
彼女が居ない
弱った。
と言うべきか。
ルカの奴は錯乱していた。
力ずくで止めているが・・・。
困った。
「離して離して離して離してよ。
エルデナを探さないと、探さないと」
コレはマジで、溺愛と同じぐらいだ。
心の声を聞くと、
エルデナ
の言葉、声が飛び交う。
恐ろしい。
「エルデナエルデナエルデナエルデナ。
何処何処何処何処何処何処何処」
ヤンデレか!!!
怖いわ。
心臓に悪いわ!!
そういえば、この世界、国の法律について調べてなかった。
あー、あー、うん。
済まない。
言えば、矛先は、わしになるんだろうな。
うん、言えないな。
「で、コウ。
これには、どう思う」
コウが考え込む。
いやね、長年ルカの傍に居たのがコウだ。
ルカの大体の姿を知っているのは、コウだと思うぞ。
流石に、こいつだってエルデナに対しては猫被っているはずだし。
「解らない。
多分、エルデナ=安定剤?」
まさにそれではないか。
エルデナ、使い魔の手綱は持っておいてくれ。
「でさ、カレル」
カレルに対し、大剣を向ける。
うむ、わしも聞きたかったのだ。
「殺しが罪ってのは、どういう事?」
場合によってはわしも殺すぞ。
こんな状況でも慌てないカレル。
傭兵の鏡だのう。
「他国の出身が?
それとも田舎の生まれか。
この国では罪だ。
この国での傭兵は守り、逃げの兵だ」
間違った答えではない。
聞きたいのは其処ではない。
「で、告げ口したのは御主か?」
「違う。
これでも、傭兵だ。
依頼人を売るわけにはいかない」
売る。
ようするに、傭兵でも告げ口はできると言うわけか。
この国では間違った行為だが、
わし等に対してはその対応は合っている。
万が一言えば、わしが殺しにいく。
一応は、使い魔を貼り付けている。
ルカみたいな特殊な奴ではない。
安易な盗聴、探知の使い魔だ。
それに、わしが下さなくても、ルカやコウが勝手にするだろうし
エルデナだって動く。
どう考えても、摘み、摘まれている。
よかったの。
「で、どうするんだ」
腕を組みこちらを睨む。
コウは未だに大剣を向けている。
「どうするとは?」
逃げるとか無しだぞ。
あー、ルカを止めるのには中々疲れる。
うつ伏せにして、伏せ!
という、感じの格好だぞ。
ちなみにわしは子供だ。
エルデナの魔力が低いせいでこの姿なのだ。
「はぁ、この際は共犯になってやってもいい」
はぁ!!
なぜだ!
傭兵と言うのは、自分の命が大事ではないのか!!
法律とか、こちらは違反して緊急事態になっているんだぞ!
「金なら無いぞ」
上乗せが狙いか。
それとも、体が目当てか。
意外に男狙いか。
どう出る、どう出るのだ。
「そうじゃない!
無償で、働いてやると、言っている!」
ワケ解らん。
まぁ、伝えるかの。
(コウ、大剣を向けるのをやめろ)
(え、何故に声。うん、やめる)
こういうのに弱いんだ。
斜め上にいった。
「ねぇ、ねぇ、
エルデナを捕らえてる馬鹿を殺してもいい。
いいよね。いいよね」
今、それを言うんじゃない!!
せっかくの助っ人が逃げるわ。
あー、水の泡になった。
口止めすべきか。
「この際は皆殺しを勧めるぞ。
俺は、殺しには一切協力しない」
いいのか!!
もう、どうなっている。
ワケ解らん。
「いいのか?
どうなっても知らんぞ」
「構わない。急いだほうがいいんじゃないのか」
確かにな。
ルカから、退く。
その顔には笑顔がペッタリ張り付いている。
「早くしよ」
風が勢いよく噴く。
どうでどうなれば、こんな事まで出来るんだ。
こいつは、突然変異か?
「空から観れば、解るよね。
ほら、あっちにエルデナが居るよ」
人の話を聞く気が無いのか。
というか、カレルにそれを見せていいのか。
何処まで突っ込めばいいのだ。
道を走るよりかは早いのだがな。
「こういう力もあるのか・・・」
飲み込みが早くて、嬉しいのう。
お互いが支えあって生きていた。
もし、傍に居れると思って、誰かに浚われたら?
酷く歪な関係だ。