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年齢も言えないのですか

作者: 古時計

そのダイレクトメッセージは、私のスマートフォンに突然送られてきた。

『こんにちは!私はヒノモト国を旅行したいのですが、おすすめの地方はありますか?』

『○○国の人です、お願いします』


私は、ツブヤイターというSNSアプリを始めてから間もない故か、フォロワーでもないのにDMを送って来たその人に、なんの警戒もする事なく、DMを返す事にした。


海外に旅行する人……それも自分の住んでいる国に旅行をするというのなら、力になりたい。

そんな、純粋で、その想いが不特定多数の人物が跋扈(ばっこ)するネットでは、どれだけ危険な考えなのかを、当時の私は知る由もなかった。


『初めまして、ヒノモトを旅行したいのですね(^-^)○○道や、東○、旅行する場所は決まっているのでしょうか?』


「……あれ?」

そのDMを送ってから数分が経ち、既読すらつかないメッセージを不審に思い、とうとう受信トレイのページに戻る。


「……間違えて送ったのかな」

私はそう思い、会話の記録を残しておいてもしょうがないな……という事で、DMの受信トレイを削除しようと指を動かす。


「……さよならくらいは言っておこう」

削除する瞬間、自分は別れの挨拶をする為に、DMのメッセージを送ろうとする。


そんな事せずに、さっさと削除してしまえば良かったと、今では後悔している。


さよなら。そのメッセージを送る為に指を動かした瞬間、メッセージの下に既読の文字がつき、瞬時に新しい文章が表示される。

『2ヶ月色んなとこを旅行したいです!あなたのオススメいっぱい教えて!』


「あ……トイレ行ってたのかな」

自分は書いていたメッセージを消して、オススメの地方と、食事を書き込む。


『○○の、□□園というところがオススメです!ジンギスカンが美味しいです!』


そのメッセージを送ると、また数分、既読もつかず、メッセージの返信が途絶える。

「……ネットの調子悪い?」


『□□園、行きます!ジンギスカン、美味しい物をありがとう( ◠‿◠ )』

また同じように既読がつくと同時に、瞬時に新しい文章が表示される。

その拙い言葉遣いと、絵文字の使われた文章に心が温まると、突如不思議な文章が送られた。


『あなたの住んでるところは?』


前触れもなく、自分の事を問いかけられた。

その事実に少しギョッとするが、自分は「ネットリテラシーの薄い人なんだろう」と思い、やんわりと、答える事にした。


『個人情報なので○○○の田舎、とだけお答えします(^_^;)』


今度はすぐに既読がつくが、その数秒後、自分は「どうしよう」という気持ちに支配される事になる。


『私は○○!3○才です!あなたの名前は?』


自分の名前と年齢をいきなり明かすその人に、自分は一つの疑問が浮かび上がった。

「これ……もしかしてナンパ?」


そうだとしたらどうしよう……。

ナンパなんて、した事も、された事もない……断り方なんて、知る由もない……。

自分はどうして良いか分からず、ただ「この人の質問に答えないと」と思い、指を動かした。


『古時計とお呼びください、年齢は……すみません、言えません』

『?』


自分のメッセージに来た、無機質な?マーク……そのマークからは、「偽名など使うな」という想いが込められている事が、自分でもわかった。


しかし、ここで名前を明かせば、大変なことになる。

ネットの、名前と年齢を晒すという恐ろしさだけは知っていた自分は、その直感に従い、うまく答える……。


……いや、本当の事を言うと、適当に答えて納得してもらおうと、思っていたんだ。


『田中とお呼びください……年齢は、20を超えてるとだけ』




『年齢も言えないのですか』



感情の読めないその文章に、自分の鼓動が痛くなった。

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― 新着の感想 ―
怖いですね。SNSの恐ろしさがダイレクトに伝わってきました。 少しでも不審に感じたら無視をするのが1番です! 少し心は痛むかもしれませんが……
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