乳首
「なぁ…」
「なんだよそんな神妙な顔で。」
「何を言おうってんだこいつァ……!」
「乳首ってなんで二つあると思う?」
「基本的に体は左右対称だからだろ。」
「2人で吸うためでは?」
「そうか……」
「なんだよ。」
「ほんとになんだよ。俺のフリを返せ。」
「俺さぁ……」
「さっきから間がなげぇよ。」
「何を言おうってんだこいつァッ……!」
「乳首3つあんだよ……」
「悪くない。」
「あれだ……牛よりは……まし……だろ?」
「2つしかねぇやつらにはなんとでも言えるさッ!」
「いきなりどうしたんだ!座れ!落ち着け!」
「い…今から学校抜けてっ…牧場にでも行くかっ…?」
「いきなりじゃねぇよッ!!
昨日の夜、風呂でサードニップレスを見つけた時から、
あぁ…俺っていびつな存在なんだ……
プールの時とかどうだったんだろ……
こいつはちゃんと乳首2つなんだよなぁ……
それに比べて俺は3つ……
こんな劣等感が消えねぇんだよォッ!!」
「お前が悩む気持ちはわかった……落ち着け……早まるな……窓際から離れてこっちへ来るんだ……。」
「今から行ける範囲で、乳搾り体験ができる牧場が1個だけある……!
よかったなぁ田舎で…!!」
「よくねぇだろッ!!
さっきからなんなんだよッ!お前はよッ!!
牛の乳首を見てぇ!
うわぁ!俺より乳首多いやついたんだ!
なんて安心できるわけないだろッ!!
うわぁぁぁぁぁ!!!」
「待て田中!」
「なんだよォッ!」
「手術があるみたいだぞ。
乳首を切除する手術が!
だから戻ってこい!
気になるなら手術すればいい!
金が足りないなら3人でバイトでもしよう!
俺たちは友達だ!
友達が死ぬほど悩んでんなら手を貸すのは当たり前だろ?」
「そうだぞ!」
「秤……織田……
ありがとう…」
「ふぅ…とりあえず…どうにかなったな……!」
「あぁ……よかった……田中が死なずにすんで。
じゃあ気を取り直して牧場へ行こう。」
「いや行くわけないだろ。」
「ホームページに書いてあんだよ……採れたて濃厚ソフトクリームってな……」
「だからなんだよ。」
「行こう…」
「田中!?」
「あぁ行こう……!」
「はぁ?」
「なんかあれだな、」
「なんだよ。」
「すげぇぇ……ドンドン出てきやがる……」
「こうして牛を見てみると勇気が出てくるな…
コイツらはこんなにたくさん乳首があんのに、悩みもせず、乳を搾られてる。」
「田中……」
「でもあれだな、生で搾ってみると結構汚いなぁ。」
「俺乳首が3つでもいいや!」
「お前!
遠慮しなくていいんだぞ!?」
「バカ!
親友に遠慮なんかしねぇよ!
ほんとにいいんだ!
こんな数の乳首を抱えながらも、それを意に介さない、誇り高い立ち振舞いを見ちまったらよ、ほんとにいいと思えたんだ……!」
「田中……」
「おいお前ら全然搾れてなくね?
見ろよ俺のバケツ!
メダカ育てられるぞ!!」
「俺達はちょっと話ししてたんだよ!
お前がうまい訳じゃねぇからな!!」
「そうだぞ!
調子に乗るなよ織田のくせにな!!」
「じゃあ一番搾れなかったやつがソフトクリーム奢りな!」
「乗った!」
「いいだろう!」