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言葉  作者: 言葉の魔術師せな
1/1

乳首

「なぁ…」

「なんだよそんな神妙な顔で。」

「何を言おうってんだこいつァ……!」



「乳首ってなんで二つあると思う?」

「基本的に体は左右対称だからだろ。」

「2人で吸うためでは?」



「そうか……」





「なんだよ。」

「ほんとになんだよ。俺のフリを返せ。」



「俺さぁ……」





「さっきから間がなげぇよ。」

「何を言おうってんだこいつァッ……!」




「乳首3つあんだよ……」







「悪くない。」

「あれだ……牛よりは……まし……だろ?」

「2つしかねぇやつらにはなんとでも言えるさッ!」

「いきなりどうしたんだ!座れ!落ち着け!」

「い…今から学校抜けてっ…牧場にでも行くかっ…?」

「いきなりじゃねぇよッ!!

昨日の夜、風呂でサードニップレスを見つけた時から、

あぁ…俺っていびつな存在なんだ……

プールの時とかどうだったんだろ……

こいつはちゃんと乳首2つなんだよなぁ……

それに比べて俺は3つ……

こんな劣等感が消えねぇんだよォッ!!」



「お前が悩む気持ちはわかった……落ち着け……早まるな……窓際から離れてこっちへ来るんだ……。」

「今から行ける範囲で、乳搾り体験ができる牧場が1個だけある……!

よかったなぁ田舎で…!!」

「よくねぇだろッ!!

さっきからなんなんだよッ!お前はよッ!!

牛の乳首を見てぇ!


うわぁ!俺より乳首多いやついたんだ!


なんて安心できるわけないだろッ!!

うわぁぁぁぁぁ!!!」

「待て田中!」

「なんだよォッ!」

「手術があるみたいだぞ。

乳首を切除する手術が!

だから戻ってこい!

気になるなら手術すればいい!

金が足りないなら3人でバイトでもしよう!

俺たちは友達だ!

友達が死ぬほど悩んでんなら手を貸すのは当たり前だろ?」

「そうだぞ!」


(はかり)……織田(おだ)……


ありがとう…」


「ふぅ…とりあえず…どうにかなったな……!」

「あぁ……よかった……田中が死なずにすんで。

じゃあ気を取り直して牧場へ行こう。」

「いや行くわけないだろ。」

「ホームページに書いてあんだよ……採れたて濃厚ソフトクリームってな……」

「だからなんだよ。」

「行こう…」

「田中!?」

「あぁ行こう……!」

「はぁ?」





「なんかあれだな、」

「なんだよ。」

「すげぇぇ……ドンドン出てきやがる……」

「こうして牛を見てみると勇気が出てくるな…

コイツらはこんなにたくさん乳首があんのに、悩みもせず、乳を搾られてる。」

「田中……」

「でもあれだな、生で搾ってみると結構汚いなぁ。」



「俺乳首が3つでもいいや!」 

「お前!

遠慮しなくていいんだぞ!?」

「バカ!

親友に遠慮なんかしねぇよ!

ほんとにいいんだ!

こんな数の乳首を抱えながらも、それを意に介さない、誇り高い立ち振舞いを見ちまったらよ、ほんとにいいと思えたんだ……!」

「田中……」

「おいお前ら全然搾れてなくね?

見ろよ俺のバケツ!

メダカ育てられるぞ!!」

「俺達はちょっと話ししてたんだよ!

お前がうまい訳じゃねぇからな!!」

「そうだぞ!

調子に乗るなよ織田のくせにな!!」

「じゃあ一番搾れなかったやつがソフトクリーム奢りな!」

「乗った!」

「いいだろう!」

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