03.奇襲
バトル!血!肉!
話を聞き終え、私は状況を整理。
ウェトによるとある日魔術師はゴロツキ共と一緒にこの街へとやってきて、元々住んでいた住民のことなど知らず暴れ回っているらしい。何でもこの街は鉱山があっただけあって資金調達に最適らしく、追い出そうにも追い出せない状況とのこと。
ウェトはそんな魔術師が暴れている所に偶然居合わせてしまい、襲われそうになっていた所を情報屋に助けてもらい今に至るらしい。
「どうかな?中々に良い情報だっただろう?」
私の機嫌を確かめるかのように情報屋が得意気に聞いて来る。
…まあ、ここまで詳細に情報を集められていたとなると流石に凄いと認めざるを得ない。
「…そうだな。ウェトのお陰で魔術師の情報を知れた。ウェトには感謝してもしきれない。」
「そりゃどうも。まあ僕は情報屋として当然の……って、え?僕じゃない?」
情報屋は予想外だった様であっけに取られている。
「当たり前だ。私がお前に感謝などする訳ない。」
「はあ、今回情報集めるのは本当に時間がかかったんだから君から感謝の一言くらいは欲しかったんだけど。」
情報屋は落胆したらしく、座っていた椅子にもたれかかってふてくされている。
「何か勘違いしている様だがな、情報屋は情報を集めて客に教える。当然のことだろう?客の私がわざわざお前に感謝するなど意味が分からない。」
「あのさぁ君費用対効果って知ってるかな?今回情報収集にかなり時間がかかったし、加えて場所も場所だったから使い魔も何匹かやられちゃって採算があって無いんだよ。僕としては大赤字も大赤字さ。」
「そんなもの知らん。お前の事情を持ち出すな。」
「薄情だなぁ…これからが思いやられるよ。」
ぶつぶつと情報屋が文句を言っているがこの際無視しよう。
それより、ウェトがもじもじと何かを言いたそうにしているのが気になる。
「あ、あの…」
「どうした?」
「あの人たちをやっつけてくれるんですか?」
淡い、希望を見つけた様な目。ここは虚言であったとしても啖呵を言うべきだ。
「ああそうだな、私が──」
ドカンと言う爆発音。その音は私達の会話を遮るのには十分な大きさだった。
私はすぐさま剣を抜き、爆発音がした方向、玄関へと走る。
「奇襲だ!情報屋はウェトを頼む!」
それだけ言い残し、私はリビングを去った。
◆◆◆
廊下を抜け、玄関──いや、もはや瓦礫となった所に辿り着くと、待ち構える様に二人の男が立っている。一人は体に不釣り合いな程大きい大剣を、もう一人は片手に短剣を持っておりそれを振り回しながらこちらを見ている。
「へえ、ボスから侵入者を消せと言われ来てみればまさかこんな奴が隠れていたとは。」
「おいおい女がいるなんて聞いてねーぞおい!」
敵は二人…では無さそうだ。目では見えないが死角に一人いるな。
つまり3対1、数的不利だ。私はより一層力強く剣を握り締め、奴らと相対する。
「この攻撃、お前らがやったのか?」
そう奴らに問う。
「どうだかな、俺に答える義理は無えよ。所でお前、剣持ってるけど俺らと戦う気?もし今武器捨てて降伏するってんなら生かしてやるが…どうする?ま、払えるもんは払ってもらうけどな。」
そう言いながら奴は私の体をじろじろと見る。
「…吐き気がする提案だ。」
「そうか、俺は悪くないと思ったんだが───残念だ」
そう言った瞬間、短剣を持った奴が大きく跳躍しそれを振りかぶって私の懐に飛び込んで来る。しかし私はそれを軽く躱し、カウンターの一刀を奴の首元に振るう。が、
「させる訳ねーよなぁおい!」
いつの間にか間合いを詰めて来た奴の大剣に私の剣は弾かれてしまった。
「…っ!!」
惜しい、と思ったのも束の間、私の背後に気配を感じ下から上に剣を振り上げる。そしてキン、と言う剣同士がぶつかる金属音と共に、今まで隠れていた三人目が私の前に姿を現した。
「...外した。次は当てる。」
奴はそう言うと逃げる様に物陰に隠れる。追いたい所だが残りの二人に邪魔されてそう上手く行かない。
「ちっ」
これ以上追うのは難しいと判断し、後ろに一歩飛んで体制を整える。
まあ、こんなものか。これで大体コイツらの実力は測れたな。
「フン、初撃は防がれたか。まあ防がれた所でいつまで持つかの話になるだけだが──」
そう言って再び私と距離を詰めて刃を振おうとして来る。しかし、
「所詮この程度、ぬるいな。」
その刃は私の前に出て来る事は無かった。短剣を持った奴が首元から血を出しながらその場に倒れる。首に出来ていた傷は、さながら剣で斬られたかの様に鋭かった。
「なっ、俺はちゃんと防いだ筈…お前なにしやがった!!」
私はそう吠える声を無視し、思いっ切り踏み込んで大剣を持った奴目がけて跳躍し、剣を振るう。
「え、はや──」
それで奴の腹と腰は泣き別れとなった。
とその時、
「…取った。」
「遅いな、そして気配が消しきれてない。」
また背後から切りつけようとする奴がいたがそれを一太刀の下防ぎ切り、再び逃げようとするのを逃すまいと足元を斬る。
「がっ...」
「今ので腱を斬った。逃げようとしても無駄だ。」
しばらく奴はじたばたと足を動かしていたが、無駄だと理解したのか私の方へと顔を向けて来る。
「お前…一体何を…」
「貴様に教える理由など無い。」
そして奴に顔を近づけて、
「私を襲って来たんだ、覚悟くらいは出来てる筈だよな?」
そう、冷酷に言った。
◆◆◆
「私はこれから魔術師の拠点に乗り込むが…お前はどうする?」
奴からあらかた情報を聞き出した後、そう情報屋に問いかける。
「そうだね、良い道具が手に入ったことだし僕はそろそろこの街を去ることとするよ。今回は君がいたから良かったものの、こんな襲撃されちゃ命がいくつあっても足りないからね。あ、ウェト君は僕が預かっておくから。君の仕事が終わった後、ほとぼりが冷めたら街に帰らせる。」
「ああ、そうしてくれ。」
そうして、私は情報屋と別れた。