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眼帯姫はたくましい  作者: 里和ささみ


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眼帯姫の世界は変革の時代

 さて。エリザベッタたちとは関係があるようでない話をする。


 魔界改め魔族連合国との講和が決定し、ある程度の方向性が定まると、続々と解放されるカプセルの中の人たち。人質に取られている間、カプセルの中で魔界観光をして来たらしい。


「すんげえデッカいドラゴンがいた!カプセルのまんまだけどドラゴンに乗って魔界周ったんだよすごくね!?ちょっとした大木よりデカいんだぜ!?」

「マジで男しかいない。あれは可哀想。騎士団の寮でカンヅメされてるみたいだった。でも、眷属たちは三大欲求ないらしいし、魔力さえあればいいらしい。」

「ドラゴンでの空旅も乙だけど。転移装置。アレすげえよ。パッと行ってパッと帰って来られるんだもん。千人くらいだったら一気に運べるヤツもあったわ。」

「各国に雲にも届く塔があった。伝魔塔というらしい。そこから発生する魔力で、音声や映像の情報を広い範囲で届けられるそうだ。」

「俺ら見てるだけ聞いてるだけだったけどさぁ!ラジオもいいけどテレビとかいうやつ!いい暇つぶしになったわ!オマンザイ見られなくなったのツラいわぁ!」

「そうそう!しゃべりの上手い眷属のな!いやでもラジオも面白かったぜ?俺、ちょっと仲良くなった眷属に頼んで代筆でハガキ出してもらって採用されたよ。読んでもらえて嬉しかった。」


 ランベルトと仲が良い騎士なんて三バカと同レベルの人間しかいない。こちらが大変な思いをしている間、飢えることなく魔界で楽しく生活していた彼らに憤る者も少なくなかったが、それらの技術や娯楽がすぐにこちらの世界に入ってくることになる。民間レベルの交流も案外期待できるかもしれない。


 一方、別室で報告を受ける宰相。


「空が紫色で、雲が黒かったです。星がなくて、太陽も月もないらしいけど、太陽の代わりに魔力玉を浮かべてる間が昼間と決まっているようです。魔力玉を作るのは魔王の仕事の一つだそうですが、歴代魔王、魔界大公レベルの魔力があれば誰にでも出来ることだそうです。こちらの金の月も魔王の魔力玉であり、万が一のための予備魔力として使われるそうですが、今までそれを使うまでに至るような甚大な被害が魔族側になかったと説明を受けました。」


「これまでは聖女を生け捕りした時点で敗退したように見せかけた戦略的撤退だったそうです。生け捕りの記録がない?恐らく戦死したと伝えられているのではないでしょうか。ああ、アッズーラ大公妃から聞いた話です。連れ去られ、無理矢理妻にされたことで心を病んだと魔族たちは考えているようですが、魔力の過剰摂取による精神異常の可能性もあると聞きました。一度大公たちもこちらに夫婦で来て、大公妃たちのガス抜きしたいと考えているようです。魔力を抜けば病んだ精神が治るかもしれない、と。」


「こちらの世界で魔力が発生したのは次元の亀裂が開いている間に流入した魔素が原因だと教えられました。魔族が通れるほど大きく開くのは百年に一度ですが、その間も薄らとヒビがあり、そこから魔素が流れ込んでいるようです。結果的に魔素に耐性のある聖力を持つ人間が誕生したので、彼らならば魔界で暮らせるのではないか、妻にできるのではないかと考えてこちらへの侵攻を開始したようです。」


「あちらの世界は元は何も存在しない世界だったそうです。最初の魔族がいた元の世界の神が語るには次元の墓場で、混沌すらない深淵だった、と。そこに大地を作り、森を作り、眷属を生んで営みを作り、後から来た他の世界の魔族たちと力を合わせて世界を開発したんだそうです。言うなれば創造主としての能力を持っているというわけです。魔族の一部も単純に過ぎた力を持つ種族というのもおりますが、元の世界では神であったり、堕天した神の眷属であったりした者やその末裔が多いと言います。」


「神の権能を有したまま魔族となった大公の話では、あちらの世界もいずれは消滅するのだそうです。次元の消滅と同時に彼らを消す算段が神々の中でついているとのことで。ですが神々にも派閥があり、反対派に属していたこちらの創造主である女神が彼らの受け入れを決定したようです。とはいえ、女神ご自身はすでに新たな次元の創造に着手しておられるので、こちらの世界は時折観察する程度で、基本は世界の営みに関わらないそうなんですが。」


「勝手に墓場を作って、元々不安定な次元だったのにも関わらず、力ある者を好き勝手に捨てるせいで更にこちらの次元との壁の崩壊が起きたのだと聞きました。とばっちりを受けた女神はそれに怒り、神々の中では中立だったところ反対派に立場を変えたのだと。ただ外部干渉により世界の本質が変貌する例は余りないそうなので、このまま経過観察をしたいとお考えのようです。こちらの世界の魔素が飽和量に達する頃にまた見に来ると伝言が初代魔王の下に来たのだと。」


「というわけで、何千年も先の話ということですが、いずれは魔族がこちらの世界に移住してくることになるでしょう。今回の講和で一方的な侵略という可能性は低くなりましたので、我々人間はこれまで通りに生活していて問題はありません。魔素がある程度中和したところで、次元の扉は閉めるそうです。あの固定装置がなければ、こちらの世界に流れ込む魔素の量が少なく、万が一異世界の神との戦争が起きたときにこの世界ごと消される可能性があるのだと言います。そんなことをしたら女神ら反対派と魔族排除推進派の全面戦争となるので。」


 概ね、聖国での講和会議で伝えられたものと変わりなかった。会議では、女神からの頼まれごとで、人間同士の戦争が起きないように魔族が抑止力となることを求められたらしい。戦争ばかりしていると世界が発展しないからだそうだ。

 魔族との戦いで失われた命は多いが、魂まで失われたわけではない。肉体が失われることに関しては神にとっては些少のことである、と言われてしまうと、卑小な人間にはもう言葉がなくなってしまう。


「しかし、こちらの世界にイレギュラーな魂が入り込んだというのはどういうことなんでしょう?」


「なんだ?その話は。」


「講和会議では話されなかったのですかね?魂が三つ、この世界で生まれたものではないものが存在しているそうです。」


「……それを知ったところで、我々にはどうしようもない。それらがいることで悪影響はあるのか?」


「いや、そういうことはなさそうなんですけどね。ただ女神がおもしろいと思って、それぞれに特別な力を分け与えたようで。むしろ良いことのようですよ。」


 思い当たる節はあった。


 だからといって、それを追及したところで、彼の決めた道筋の障害となりはしない。


 今はただ、変わる世界に振り落とされぬよう、必死に食らいついていくことだけが、彼の使命だった。

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