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眼帯姫はたくましい  作者: 里和ささみ


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眼帯姫のWデート①

「ええっ!?だっだっだっ、Wデート!?」


「そ。明日な。強制参加だから。」


「むむむむむむむむむむムリですよぉっ!」


「ムリじゃねえっ!するんだよっ!」


「ひええええ!!!!」


 教会からは外出許可をもぎ取った。騎士団長からもかなり渋られたが、副団長のアシストにより護衛なしを勝ち取った。


 お膳立ては済んだ。あとはクワンが頷くだけだ。


「拒否権なし!お前が来ねえと俺がエリザベッタと話し合いができないんだからな!ぜってえ連れて行く!」


 そう。ランベルトはチェレステに通訳を願ったら足元を見られてWデートに同行するように命令されてしまったのだ。エリザベッタとデートするのはやぶさかではないが、正直言ってWデートなどしたくない。デートのお手本?今までまともにデートっぽい雰囲気出したことないですけど?な心境だ。


(エリザベッタは手本をみせることには前向きだった。このまま俺たちの仲も進展させる!)


 ランベルトの意気込みは魔王討伐よりすさまじい。


「おはようございます。」


「よお。」


「お、おはよ……。」


「オハヨウゴザイマス。本日はよろしくお願いします。」


 大変事務的なご挨拶である。ランベルトは不安になった。


(これで手本になんのかね。エリザベッタだって俺以外とデートしたことないだろうし。いや、あんのか?前世で他の男と……ムカつくな。)


 とはいえ、気まずくて隠れてしまったチェレステと話しているエリザベッタも鼻をふすふすと鳴らして気合いが入っている。さて。どうなることやら。


「マズは手をツナギマス。コイビトツナギ。コレ。」


「はっ、ハードルが高すぎるわ!」


「〝じゃあ〟ワタシハマチアワセカラヤリナオス。」


「はっ?」


「ランベルト、オマタセ。」


「へっ?あ、ハイ。」


「待った?」


 ハンドバッグを両手に持ち、上半身を傾げて上目遣い。あざとい。あざといぞ、エリザベッタ。


「ま、待ってないよ。今来たところ。」


「ヨカッタ!ワタシタチハ今日どこへいく?」


「えっと、雑貨見て、カフェでランチしよう!最近出来た店が洒落てて美味しいって評判なんだ。」


「わたくしはタノシミです。行きましょう。ハイ、ココデ手をツナグ!」


 果たしてこれはなんの苦行だろうか。確かに平民のお付き合いっぽいような気もするが、ランベルトはこんな清い交際をした記憶がない。なくはないが、常に下心と計算があった。しかも、エリザベッタは本気ではなく、単なる再現、もしくはレクチャーとしてのデートとしてしか捉えていない。


(む、むなし……)


 これまで女を泣かせてきた罰だと思えばいい。そうに違いない。


「手をツナグ、キョリトラナイ。腕、当たるくらい。コレクライのキョリ。」


「密着しすぎでは!?」


『日本なら普通です。クワンさん、横浜出身ですよね?みなとみらいにはこんなカップルわんさかいたはずですよ?』


『横浜は横浜でも、田園都市線の方なんですッ!』


『だったら渋谷とか行きません?』


『乗り換え以外では使いませんでした!』


(むう。手強い。)


 それ以上に完全に固まったチェレステを気遣ってやった方がいい。顔を真っ赤にして硬直している。


『本日のデートイメージ的には自由が丘で雑貨屋デートです。分かります?』


『降りたことないですよ……』


『テレビでしか……』


『まあ、その辺はいいとして。とにかく手をつないで歩きましょう。』


 面倒になってきたのか、三人は日本語で会話をしだした。つないだ手の温もりを喜びつつも、疎外感を覚えるランベルトであった。デートのお手本のはずなのに、相手に寄り添えてないエリザベッタはお手本になるのだろうか。


「ランベルト、ごめんなさい。スコシダケツキアッテ?」


 自分の顔を窺うように見上げてくるエリザベッタはやっぱりあざとかった。しかし、色男のランベルトであっても無垢な少女と思っていたエリザベッタのこの行動に心臓を撃ち抜かれる。


(かっ、かわ……!)


 こうして顔が真っ赤な三人と、使命感に燃えるエリザベッタのWデートが始まった。


「〝わあ、コレかわいい!〟ドウ?」


 イヤリングを耳に合わせてランベルトに見せるエリザベッタに彼は答える。


「似合うよ、かわいい。買ってあげる。」


「んー、コッチノ色。ドッチイイ?」


「紫をつけてくれるとうれしいな。」


「ランベルトの色。わたくしもうれしい。〝じゃあ〟ムラサキにします。」


 用があると手を離し、用が終わればまた手をつなぐ。もちろん、恋人つなぎなので指は絡めている。時折いたずらっぽく指を撫ぜられ、ぴくりと反応すれば見上げて笑うエリザベッタに、ランベルトはドギマギしていた。


(自分だって似たようなことやってきたのに……落ち着け俺、冷静になれ……俺がリードするんだ……!)


「お姉さま、クワンさん。〝お腹空きません?〟」


「え、いや、まあ……」


「なんだって?」


「腹減らないかって。」


 チェレステとクワンもずっと手をつないでいる。手をつないでいるだけだ。そして、エリザベッタとランベルトのお手本を眺めているが、あんな風に見上げたり、見つめたりなどはできないし、イチャつけもしない。


 しかし、エリザベッタの真意はお手本を見せることにはない。


(奥手な二人に吊り橋効果!的な!強制的にドキドキさせて、お姉さまに恋心を自覚してもらう!)


 効果はばつぐんだ。確かにチェレステは強制的にドキドキさせられていた。しかし、手をつないで歩くのがやっとで、反対の手は足と共に前に出ている。ぎこちない動きはクワンも同様。けれど、彼の方は喜びも感じていた。


(手、ちっちゃ!指、ほそ!もう満足だ。今日の思い出を冥土の土産にしよう……)


 不老長寿なクワンが冥土に行けるのはかなり未来の話なはずだが、生まれてから人の人生の何倍も生きてきてコレなので、幸せな未来がどうしても想像できないのだ。


 勢いあまってプロポーズしたことも少し後悔していた。


 あれから露骨にチェレステに避けられていたから。


(きっと気持ち悪がられてるんだ。今だって手がふるえて。俺なんてイヤだよな。ごめんなさい。今日だけは許してください。)


 避けていたのは二日三日の話なのに、随分と後ろ向きになってしまっている。魔王なのに感情の乱高下が激しすぎる。


「デート楽しい?」


 カフェに入るとテラス席に案内された。この四人は目立つ。長身の美貌の青年クワンに英雄のランベルト、王女で聖女のチェレステに眼帯姫のエリザベッタ。


 眼帯に少し引き気味な通行人や店員たちをランベルトはいちいち睨みつけていたが、その度にくいっと手を引っ張られて、下を向けばエリザベッタは微笑みながら首を横に振る。


「よく、わかりません……」

「よく、わからないわ……」


(ま、そうだよね!とりあえず意識はしてる。今だってチラチラお互いの顔見てるし、いい感じ。でも、焦りは禁物。まだまだこれからだ!)


 Wデートは後半戦に続く。

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