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眼帯姫はたくましい  作者: 里和ささみ


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52/79

眼帯姫のお姉さまはお付き合いが何か分からない

 エリザベッタとチェレステの話し合いはもう少し続く。


『で、どうします?お付き合い、してみます?』


『つつつつつ、付き合うってどうすればいいの!?』


(確かに。この世界の健全な付き合い方ってなに?娯楽も大してないしな。)


 ではここで、王国きっての伊達男にご登場いただこう。


 いや、この場に最初からいる……むしろ彼の方が先にこの部屋にいたのだが。


「ランベルト。こっちに来てください。」


 弾かれたように壁にもたれていた身体を正して、早足でエリザベッタの隣に座った。


(なんで隣……まあ、いいか。お姉さまと向き合ってもらった方がいい。)


「話し合いは終わったの?」


「まだよ!なんでコイツ呼んだの!?」


『この世界の健全なお付き合いの仕方が分からないので、聞いてみようかと。』


『こんなヤツ、爛れたお付き合いしかしてないわよ!?エリザベッタがクワンさんに聞いてきてよ!』


『魔族だとお付き合いという概念もなさそうじゃないですか?クワンさんの話だと、即結婚即子作りって雰囲気がしたんですけど。』


『うう……』


「もういいだろ。今度は俺の話だ。」


「私は嫌いです。強引。」


「俺のこと……?」


「あー、〝お姉さま。通訳お願いします。〟」


 チェレステが頭を縦に振って同意した。コクコクというよりカクカクと言った方が良さそうな動きだったが。まだ動揺しているのだろう。


『私は強引で人の話を聞かない男が嫌いです。』


『それを伝えればいいの?』


『お願いします。』


「エリザベッタは強引で人の話を聞かない男が嫌いです、ですって。」


「な……」


『チャラチャラした遊び人も嫌いです。』


「チャラチャラした遊び人も嫌いです、だって。」


「それは前も聞いたよ!」


『二面性のある人は男女共に信用できません。』


「二面性のある人は男女共に信用できません。」


「俺、二面性あるか?」


『二面性あるか?だって。』


『お姉さまと私への態度が違いすぎます。いつか自分もお姉さまにするように怒鳴ったりされるのかと思うといい気持ちはしません。そもそも私の姉で唯一家族と言える人に、親しいからと言って暴言を吐くヤツを好きになれと言われても困ります。』


「ぷっ!」


「おい、なんで笑った!?」


「エリザベッタはアナタのそういうところがイヤなんですってよ?私とエリザベッタへの態度が違いすぎるって!いつかは自分にも怒鳴ったりするのかと思うといい気持しないし、自分の姉に対して親しいからと言って暴言を吐く男を好きになれと言われても困るって!」


「お前と親しくしたことなんかねえぞ!?」


「そういうところ。嫌い。」


 エリザベッタに直接言われて、グッ!と肺が押しつぶされたかのように息が苦しくなった。思わず胸を押さえてしまったランベルトだった。


『とりあえず大人しくなりましたね。本題に移りましょうか。』


『そうね。』


 エリザベッタの話したことは本心ではあるが、ランベルトの自分が自分がの相手をするのが面倒だったので多少攻撃的に言った自覚はある。だがランベルトは少し反省した方がいい。


『この国の恋人同士の付き合い方を教えてください。定番のデートとか、プレゼントとか。』


「この国の恋人同士の付き合い方を教えてください。定番のデートとか、プレゼントとか。」


「っは!はぁ、はぁ、恋人同士?」


「そう。」


「別に……普通だろ。」


『私たちは王女なので普通が分からない、と伝えてください。』


「わたくしたちは王女だから普通の恋人同士のことをよく知らないのよ。」


「そういう付き合いがお望みならいくらでもしてあげるよ。」


「わたくしではありません。」


「え……じゃあ、なんで?」


「いいから教えなさいよ!」


『あ、健全なお付き合いの仕方でお願いします。』


「けけけ健全なお付き合いの仕方よ!分かってるわよね!?」


「わーったよ!あ……あ〜、もうクソッ!」


 ヴィオランテはこの茶番劇にも動じず、冷めたお茶を淹れ直している。しかし、そのようなことを知ってどうするのかは疑問に思っている。


「大体平民のカップルはお互い仕事してるからな。仕事終わりにちょっとメシ食ったり、休みの日に待ち合わせして買い物したり、金に余裕があれば芝居小屋行ったり、天気がよければピクニックに行ったり。まあ、休みの前日から相手の家に泊まることもあるけど。」


「健全なお付き合いの仕方って言ったでしょ!?」


「そこは切っても切り離せないだろ。お前が物知らずすぎんだよ。」


「仕方ないじゃない!経験がないんだから!」


「前世でもねーの?」


「ないわよ!」


 ランベルトは笑いそうになったが、エリザベッタの手前口元を隠した。しかし、バレバレである。


『仕事してる人が多いから、仕事終わりにしょくじ食事したり、休みの日に買い物行ったりお芝居見たりですって。あとはピクニック?』


『あー、日本と大して変わんないんですね。』


『そうみたい。』


「もういいか?」


「まだよ!」


『あとはデート中にどんなことを会話で話題にしてるのかですね。』


「デート中って何を話すの?」


「何って……最近の流行りの食べ物屋とか、近況報告だろ。」


「キンキョーホーコク?」


『近況報告だって。』


『なるほど。アクティビティ的な遊びってあるんですかね?』


『アクティビティ?』


『聞き方変えますね。んー、王都周辺のオススメデートスポットを教えてください。』


「王都周辺のオススメデートスポットを教えてください。だって。」


「あー、じゃあ、紙に書くわ。どうせアレだろ?クワンと行くんだろ?」


「うっさいわね!アンタからの質問はいらないのよ!」


「そんなんじゃクワンにも愛想尽かされて一生独身だぞ。」


『お姉さま、なんて?』


『そんなんじゃクワンさんに愛想尽かされるって!失礼じゃない!?』


『お姉さま。だけど、ツンデレはほどほどにした方がいいですよ。二次元なら可愛らしいものかもしれないけど、現実じゃ振り回される方はたまったもんじゃありませんから。』


 珍しくエリザベッタから厳しい言葉をかけられたので、チェレステは少し落ち込んだ。


『お姉さまはただ恥ずかしがり屋なだけってことは知ってます。でも、少し落ち着いて言葉を考えましょうね?』


「うん……ごめんなさい。ランベルトも。」


「お姉さま、イイコ。」


(なんか……立場逆転してんな……)


 全くもってその通りなのであった。

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