眼帯姫と転生者たちの恋
金曜更新忘れてすみません!
当分、水曜と日曜に更新いたします。
時間は20時のままの予定です。
魔王の身柄は神殿にて保護することとなった。それと同時にチェレステも当分神殿で寝起きする。何かあったときに、対処出来る……とは言えないが、万が一彼の眷属が主人を迎えに来たときに威圧くらいは出来るだろう。
エリザベッタは寂しかった。
久しぶりに離宮へ来てみたが、なんだかつまらない。
チェレステもいない。ランベルトも魔王の監視兼護衛で駆り出されている。ついでにピエトロもだ。ピエトロは気さくな性格を発揮して、魔王と仲良くなりつつある。ランベルトは相変わらずツンケンしているらしい。
婚儀の準備も着々と進んでいる。なのに、置いてきぼりを食らったような気持ちになっていた。
(マリッジブルー……ってわけじゃないのよね。でも、このまま行くと、やっぱりランベルトと結婚……。)
魔族との共存が現実味を帯びてきた。そうすれば世界は平和。ランベルトとの結婚を伸ばす言い訳もない。
(お姉さま、どうするんだろう。やっぱり魔界に行っちゃうのかな。なら、私も魔界に……。でも、そうしたら……)
ランベルトとはお別れだ。きっと彼は、国を捨ててまでエリザベッタと魔界へ行こうなどとは思わないだろう。
胸がキュッとなり、鼻がツンとした。
(あれ?……え?ウソでしょ?)
思考を止めようとすればするほど、ランベルトとの数々の思い出が蘇ってくる。〝魔の色〟と蔑まれたことも思い出して一瞬スンッとなったが、一緒に果物を収穫して保存食を作ったこと、空き時間はいつも魔法の訓練に付き合ってくれたこと、領地や神殿での宣言、なによりも、エリザベッタが少しでも笑うと嬉しそうに大きな笑みを浮かべるランベルトが、エリザベッタの胸を締め付ける。
顔が熱い。
(ウソウソウソ!やだやだやだ!)
「ヴィオランテ!」
「いかがなさいました。」
「わたくしは狩りをいたします。今すぐに!」
ヴィオランテの方を振り返りもせず、護衛も振り切って、山へと一目散に走り出したエリザベッタであった。
一方、神殿では。
おはようからおやすみまで。さすがに就寝中は別だが、チェレステと魔王は常に行動を共にしていた。本部から受け入れ準備が整うまで、この神殿で待機を命じられている。
何度か宰相が魔王と面会をして、初めこそ頭を抱えていたが、彼の為人を知って信用してくれたらしい。ちなみに国王には未だに報告が上がっていない。
「今日はアルバイトなので……。」
「わたくしもついて行っていいかしら?」
「え!?ま、まあ、別に、問題はないと思います……はい……。」
監視兼護衛の騎士たちは毎朝毎晩、日中も、一体何を見せられているのだろうか。
逃げ出すといけないからという理由で、チェレステは魔王にストーカー、付きまとい、いや、行動を共にしているのだが、あの顔はどう見ても恋する乙女。あの苛烈なチェレステ殿下もこんな顔するんだなぁ、とぼやいた騎士もいた。
「はぐれるといけないなら手をつなぎましょ?これなら、デートに見えるし、絡まれないわ!」
町娘に扮したチェレステだが、彼女の顔は世界中に割れている。鬘を被ってはいるけれど、すぐに気付かれるのが関の山なのだが……
「おやめなさい。騒ぎになりますよ。」
案の定、アルフォンソに止められた。
「いいじゃない。慰問みたいなものよ。」
「だったらせめて彼に従者の格好をさせて貴女はきちんと聖女らしくしなさい。」
「いやよ、それじゃデートにならないじゃない!」
「でででででっ、でぇと!?」
いつ、どこで吹っ切れたのか、チェレステは魔王に対してガンガンいこうぜ!状態だった。せっかく横にある推しの顔。中身が違くとも恋人気分を味わいたいチェレステなのである。
そう、魔王の中身は推しとは違う。
チェレステにとって、ここは大きな問題であった。
かといって、クワン自身に嫌悪や無関心もない。
当たり前だ。同郷の友なのだから。
要するに、顔のいいホストとちょっと遊んでいるくらいの感覚なのだ。
前世のチェレステならば、絶対に出来なかったことだ。
(はぁ〜、やっぱりカッコいい!もう隠れなくていいから短髪の鬘に変えてから顔の良さが引き立つ!イケメンの破壊力ヤバイ!ゲームなら課金しまくりよ!課金勢じゃなかったけど!)
出会った当初は〝そのご尊顔を拝し奉り〟くらい大袈裟だったが今ではすっかり顔の良さに慣れきって、余裕を持って推しの顔を楽しめている。
チェレステは毎日が楽しかった。
さて。魔王はというと。
(こっこっこっこけっ、いやニワトリかよ!こ、これって脈アリなのか!?)
異性への免疫のなさから判断を間違えそうになっている。今だって、街を歩くのに手をつなぐどころか腕を組んでいるのだから。
「ねえっ!アレはなに!?」
チェレステのコレはイケメンはありがたいと言って触りまくるオバチャン的行動だ。動きに容赦ないので胸が当たっている。チェレステ本人は気付いていないようだ。
「あえ!?あっ、あれは羊肉の焼き肉ですね……。」
「〝ジンギスカン〟みたいなもの?」
「〝ケバブ〟のが近いと思います……。」
「そうなのねっ!食べてみたいわ!」
「えっ、屋台ですよ!?大丈夫ですか!?」
「いいわよ、みんな買ってるじゃない。行きましょ!」
腕を思い切り胸に押し付けられ、魔王クワンは息も絶え絶えだった。前後左右から軽装で監視をしている騎士たちは、涙目で真っ赤になっている魔王に同情した。
「んーっ!おいしーっ!そっちはどう!?」
クレープのような生地に肉と野菜を巻いたものだ。味付けが数種類あったので、それぞれ気になるものを選んだ。チェレステは定番の味、クワンはピリ辛だと店主が言っていた。
「あ、これ、〝醤油〟っぽい……それと七味?」
「本当!?匂いは確かに香ばしかったわよね。ねえ、一口ちょうだい?」
「え、食べかけですよ?」
「あ、気にするタイプ?じゃあ、最後の一口残しておいて。わたくしのは……どうしましょう。先にちぎっておけばよかったわ。」
「きっ!気にしません!」
「そう?はい、あーん。」
「ほえっ!?」
「ほら、食べて?それで食べたらわたくしにもそっちの食べさせて?」
結局チェレステに押されて一口ずつ食べさせ合いをすることになり、クワンは肉の味などもう分からなかった。
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