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眼帯姫はたくましい  作者: 里和ささみ


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38/79

眼帯姫の秘密会談

更新ちょっとばかし遅れました。

短めです。

「初めまして、えと、クワン・チュンイェンです。でいいのかな。」


「わたくしはエリザベッタとモーシマス。ヨロスクお願いします。」


「え、何で片言……?」


「それには事情があってね……。」


 エリザベッタの生い立ちを話すと、魔王クワン・チュンイェンは涙を流した。


「ひどい!なんてひどいんだ!やっぱおじじたちの言う通り人間世界は腐ってるのか!?」


「いやいや、ウチの家族がおかしいだけだから。平民は貧富の差があれど平和よ。ていうか、おじじって誰?」


「おじじは祖父の眷属です。」


 ヴィオランテは三人の話を聞きながら考える。朝、チェレステから「魔王と会うので同席しろ」「騎士団には言うな」「知っておいて欲しいことがある」と言われたのだ。チェレステとエリザベッタが、何か暗号めいた言葉で話し合っているのは知っている。二人は隠し切れていると思っているが、そんなはずはない。ただ二人の身分から誰も言わないだけだ。まあ、それを止めているのはヴィオランテなのだが。


「ねえ、クワンさんは〝青天に金の月〟って少女マンガは知ってる?」


「ええと、タイトルなら、一応。アニメやってましたよね?」


「内容は知らない?」


「いやあ、さすがにそっちは……。」


「ここが〝テンツキ〟の世界って知ってた?」


「えっ、そうなんですか?」


 どうやら魔王は知らなかったらしい。前世のエリザベッタならばうらやんだであろう白磁の肌が青に変わる。


「じゃ、じゃあ、俺、死ぬ……?」


「結末は知ってるのね?」


「知りませんよ!知らなくてもどう考えても魔王に転生なんてフラグ立ってるじゃないですか!!」


 ヴィオランテは()()という言葉に引っかかったがもちろん顔には出さない。この世界にも輪廻転生の思想は存在する。大陸語で放たれた言葉を咀嚼するのに時間はかからなかった。


「わたくしだってそうよ!悪役令嬢ポジ、しかも裏切って婚約者に成敗されるのよ!」


「ええ!?」


「ヒロインはエリザベッタ。それは分かる?」


「あ、ヴィジュアルは見たことあるので……そういえば瓜二つだ。」


「〝テンツキ〟の中ではわたくしはヒーロー英雄ランベルトの婚約者。第一次魔王討伐で魔王を滅し……本当は寸でで逃げたのだけど、英雄として帰還したランベルトは王女で聖女のわたくしと婚約するの。王命でね。だけど、ランベルトは不遇の王女エリザベッタと恋に落ちる。」


「ああ〜、少女マンガらし〜!エリザベッタ殿下はいわゆるドアマットヒロインですよね?」


「原作ならそうでしょうけど、実際はもっと悲惨だったんだから、転生者で良かったのか悪かったのか……。どうせヒロインとヒーローは最終的に結ばれるんだから、とっとと二人をくっつけてしまえとわたくしとランベルトの婚約は回避済みよ。まさかエリザベッタまで転生者だと思わなくて、あんなクズを押し付けることになってしまって……。なんとかしてあっちの有責で婚約破棄にでもならないかしら。」


「ヒーローってそんなダメ男なんですか?強かったし、何度でも立ち上がる不屈の根性で、最後は血まみれアザだらけでアンデッドみたいでぶっちゃけ怖かったんですけど。」


「貴方の魔の力を削ぐのに集中してたから細かいところの治癒までは手が回らなかったのよ。怖がらせてごめんなさい。」


 そこは魔王に謝るところなのだろうか。エリザベッタとヴィオランテは疑問に思ったが、決して口に出さなかった。


「殿下も素晴らしかったです。チェンもイチオシの……あ。」


「イチオシ?」


「あの、俺の嫁さんに、って……。」


 魔王は体格に似合わずもじもじしながらチェレステをチラ見して明かした。

 魔王につられて顔を赤くしたチェレステもまたもじもじし始めた。これはむしろ最初の目標が叶うのでは……?そんな考えがエリザベッタの脳裏を過ぎる。


(これがモダキュンてやつなのかな?)


 エリザベッタの感想は些か的を外れている。この二人は両片想いと言えるのか否か。人類の存亡をかけたもだキュンなどみなお断りだろう。まあ、人型である魔族たちの目的が婚活なので人類が考えているような種としての滅亡は有り得ないのだが。


「と、とりあえず、今後をどうするかよね……。」


「またマゾクオソウクル、大変。」


「ウチの眷属を……説得してみます。ただちに人質を解放して、撤退するように。」


「大丈夫なの?」


「怒られると思いますけど……俺に結婚なんてまだ早いです。ま、まともに女の人と話したことないのに……。」


「今ハナシテル。」


「い、今は!その、話さなきゃいけないこと決まってますから!その、雑談?が、苦手なんです。女の人と共通の話題なんてないし。魔界は男しかいないし。俺、元々男子校だし。」


『魔界は男しかいなくて、前世も男子校だったんですって。』


『へえ、そうなんですか。』


『あれ?日本語で話すのはオッケーなんですか?』


『別に禁止にはしてないわよ。ヴィオランテがいるから、どういう話をしてるのか分かってもらった方が安心だと思っただけよ。』


「ヴィオランテ。コレ。言葉。えーと?」


 エリザベッタは困ったポーズをし続けているのでチェレステが説明を代わった。三人のぶっ飛んだ会話内容を咀嚼しつつ、エリザベッタの語彙をもっと増やさねばと思うヴィオランテであった。


「わたくしたちの前世の世界で使っていた言語よ。わたくしたち、異世界からの転生者なの。三人とも同じ世界の同じ国から来てるのよ。みんなそれなりの年齢の記憶があるから、エリザベッタはその知識を活かして暮らして来たのよ。ね?エリザベッタ。」


「はい。わたくしはコドモデハアリマセン。」


 今まで言葉がつたないせいで子ども扱いされがちだったのを不服に思っていたエリザベッタは、ようやく言いたいことが言えたと大きく息を吐き出した。肩の荷が下りた。

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