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眼帯姫はたくましい  作者: 里和ささみ


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33/79

眼帯姫は花火師

遅くなってすみません。しかも、短め……。

更新、頑張ります。

「魔王がいた……?」


「間違いない。アレは魔王だ。闇色の髪に金の(まなこ)。そしてあの顔。」


「ああ、あの顔。」


「あ〜、お前と同じくらいお綺麗な顔ね。」


「俺の方がイケメンだろ!?」


「そこを張り合うな。だが、怯えて逃げたんだな?」


「はい。」


「魔王が怯えて逃げるって……おかしくない?」


「そんなん知るかよ。とにかくアレは魔王だったし、俺に気付いて逃げたんだ。」


 ランベルトが魔王を見間違えるはずがない。戦いの場で、誰よりも一番間近でその顔を見たのは彼なのだから。


「警邏の騎士を増やす。顔は前髪で隠してたんだよな?」


「はい。髪の色はそのままでした。」


「あの髪色のまま動いてるとは思えない。今は(かつら)を使用してるかもしれないな。だが、目の色は変えられない。とにかく顔を隠すようにしている長身の男を探す。」


「危険では?」


「声はかけさせん。根城を見つけるのが先だ。眷属の魔人もいるかもしれないからな。ランベルト、ピエトロ。一時殿下方の護衛を外れてもらう。第一次討伐で生還した者は顔や特徴をよく知っているだろう?お前たちは特に最後まで残っていたからな。今回同様気付かれるかもしれない。市民に変装しろ。」


「団長。私はエリザベッタの側を離れたくありません。」


「そんな我儘は聞かん!」


「休暇中です!」


「なら護衛任務もやめろ!」


「やめません!」


「団長ぉ〜、それ言ったら私もですよぉ?」


「ピエトロは第五王女殿下の食事に釣られただけだろ。」


「いや、そうなんですけどね。」


 ピエトロが休暇返上でチェレステについているのは噂に聞いたエリザベッタの料理に興味を引かれたからだった。エリザベッタ付きを希望したが何故かランベルトに却下され、チェレステ付きに納まっている。

 騎士団長のインノツェンツォは嘆息すると再度命令を下した。


「ランベルト・クリザンテーモ。ピエトロ・ナルチーゾ。王都内で魔王の捜索を命ずる。騎士団はこのまま第二次魔王討伐に入る。ステファノ・ソッフィオーレは引き続き弓兵の魔力調節訓練の指導を行え。巻きで行くぞ。チェレステ王国の意地を見せろ!」


「はっ!」

「はっ!」

「はあ……。」


 気の抜けたランベルトの返事に、騎士団長と副団長パオロ・ジラソーレは頭を抱えた。英雄になっても相変わらずの問題児ぶりに頭痛が痛い状態である。


「そういうわけで、当分の間、お側を離れることになりました……何で俺が!!」


「いや、当たり前でしょ。」


「お前も参加しろよ!」


「参加したいけど、あちらはわたくしの聖力に対して敏感なのよ。ムリムリ。すぐに逃げられるわ。」


「じゃあ、仕事しろ!」


「してるわよ!だから神殿に行ってるじゃない!!」


 また始まった口論も最早よく耳にするBGMである。エリザベッタとピエトロはカップを傾け、茶を啜った。


「ピエトロはキヲツケル。シヌナ。」


「もちろんですよ。」


「エリザベッタ、俺には!?」


「ランベルトハシナナイ。わたくしは知っている。」


 信頼されている!ランベルトはそう思った。エリザベッタの根拠は単にチェレステによる入れ知恵なのだが。ヒーローは死なない。最後はヒロインと結ばれるという最大の仕事が待っているから。そのヒロインが自分自身であることをすっかり忘れているエリザベッタなのであった。

 喜色満面のランベルトは放っておいて、チェレステは真面目な顔をして語り出した。


「最後はどうしてもエリザベッタを引っ張り出さざるを得ないわ。」


「んだよお前の聖力で何とかしろよ。」


「今代の魔王の魔力量はわたくしの聖力を上回るはずよ。わたくしの聖力だけでは難しいわ。」


 実際には拮抗する力を手に入れているのだが、未だにそのことに気付いていないチェレステである。


「エリザベッタ殿下が必要な理由は?」


「エリザベッタの本気の魔力量が魔王を上回るからよ。」


「はあ?」


「エリザベッタ。」


「はい、お姉さま。」


「全力全開で魔弓を天に放って。」


「はい、お姉さま。」


 エリザベッタは立ち上がり、魔弓をヴィオランテから受け取った。空に向かって魔弓を構える。目標はない。ただ、青空に浮かぶ雲に向かって魔力の矢を放つ。エリザベッタが魔力を込め始めると魔王のような威圧を皆が感じる。ヴィオランテに至っては気を失いかけているが、何とか気力で耐えている状態だ。

 エリザベッタはここ数週間、チェレステと共に夜も訓練をしていた。込められた力は魔弓ですら耐えるのが精一杯だ。しかし、それ以上の変化がエリザベッタ自身にあった。最初に気付いたのはステファノだった。


「殿下の目が……。」


「目?」


「金色に……?」


「えっ、元からですよね?」


「そうじゃない!左目だ!」


 見守っていた騎士たちもじっとエリザベッタの左目に注目した。


「魔の色だ……。」


「両眼、金……。」


「やはり、呪われて……?」


「おい、今呪われてるっつったの誰だ!」


 ランベルトの怒号は、エリザベッタの放った焔の矢にかき消された。雲を切り裂き残ったものは、一面の青空に咲く……


「花火?」


「花火だな。」


「アレって菊の花?」


「何だ、ランベルト、愛されてんじゃねーか!コノォ!」


 前世でよく見た、大輪の(クリザンテーモ)であった。

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