眼帯姫の過激化
金曜日に更新できなくてすみません!
「お姉さま。どうしたの?」
「ちょっと話があって。一緒に寝ましょ?」
(夜にお姉さまが来るの久しぶりだなぁ。)
突撃は魔弓貸与の打ち合わせ以来なのでそこまで時間は空いていないが、転生者と分かってからはしょっちゅう入り浸っていたのでほんの一週間でも久々に感じるエリザベッタであった。
『ねえ、貴女、能力覚醒してない?』
『能力覚醒?』
『そう。まあ、原作と違う方向ではあるけど、魔弓なしで水の矢を具現化しちゃうなんてただごとじゃないわ。』
『ああ、アレ。本当に知らなかったんですよ。騎士の魔法戦闘は見学したことないですし、単純にファンタジーな世界だからそういうもんだと思ってやったら出来たっていう。』
『命中率が高いのは?』
『おぼろげですけど、多分、前世での経験があったからだと思います。それでもあんな百発百中っていうのは自分でも不思議ですけどね。』
『そうなの?』
『なんていうんでしょう?いわゆるゾーン状態に自分の意思で入れるんです。野生児って言われても仕方ないと思います。野生のカンみたいなところは自覚があるんで。』
野生の生物だって餌取りの戦果が百発百中なんてことはない。そこは魔力による補助があるのだろうとチェレステは思った。
『力が漲る感じはしない?』
『しませんねぇ。どんな状態なのかもよく分かんないですし。』
『能力の振り切り方が尋常じゃないだけなのかしら。普通の魔法はいまいちだもの。』
『あー、確かに。』
魔力には属性魔法の他に身体機能を高める効果がある。自在にゾーンに入れるという現象もそれに拠るものである。騎士ですらそんな者はなかなか現れない。剣の使い手ならば達人の域を超えて剣聖とでも呼ばれるであろう。
『お姉さま、もしかして、私に隠し事してます?』
『えっ、そんなことないわよ?何よ、私がウソついてるって言うの!?』
『ウソをついてるとは思ってませんよ。ただ、わざと言ってないことがあるんだろうなってことは分かります。辻褄合わないこともあるし。』
『た、たとえば?』
『まずは、そうですね。お姉さまがいくら前世の推しだからって、敵対する魔王とくっつこうとするか?っていう疑問です。なんだかんだでしっかり聖女としてのお役目は果たしてるし、王都防衛のこと、かなり奔走してるのに、侵略相手と結婚なんて本当にしたいのかなって。別に国に混乱を招きたいわけじゃないんですよね?』
『そうよ……。結婚は出来たらしたい。そう思ってるのは本当。そもそも魔王はね?一人じゃないの。次元の狭間、魔族が魔界と呼ぶ世界は、男しか生まれない世界なのよ。まあ、そもそもあんまり生殖活動して増える生物がいないんだけど。力のある生物は人間と同じ繁殖行為をしなきゃ次代を残せない。でも、魔界との時空が歪むタイミングは百年に一度でしょ?そしてその穴を通れるのは一人だけ。眷属は分身体みたいなものだから、大軍で攻めた来ているように見えて実質は一人なの。穴がない間は、こっちに嫁取りに来る人を決める戦争をしているのよ。前回と前々回は同じ魔王だったけど、今回は初めて嫁取り合戦に勝利した魔族なのよね。』
『え、単身で婚活に来てるだけなんですか?』
『最終的な野望としては穴を固定して自由に行き来することなはずなんだけど、それも自分たちの伴侶を探すためなの。』
『ええ〜、はた迷惑ぅ!』
『魔族は寿命が長いけど、それでも伴侶を得られる方が稀なのよ。高魔力者に惹かれる特性もあるし。』
『で、でも、今の時点で私、お姉さまより全然魔力低いですよ?』
『私は聖力の底上げがあるからね。魔力だけでいえばエリザベッタの方が本当は多いのよ。』
『聖力と魔力って違うんですか?』
『違うわよ。この世界に魔力量を数値化する機械はないけど、ホラ、やったでしょ?水晶光らせるやつ。』
『最初にやりましたね。』
『聖力を測る水晶はまた別なのよ。そして神殿にしかない。私の場合はそれと合わせての結果だから。あと原作のエリザベッタには心的ロックがかかってるからあんまり魔法が上手くなくて、魔力は王族として有用なほどないと思われてたのよね。』
『それって今の私の状態と同じじゃないですか?』
『全然違うのよ!じゃなければあんな水の矢を出さないから!おかしいから!ていうか、水の矢を出せるのになんで普通の訓練だとショボいのよ!?そっちの方が意味分かんないのよ!』
『ショボい……』
『あ、ごめん。』
『いえ、いいです。ショボいのは分かってるんで。なんでしょう。こっちの手順を踏んでるからですかね?イメージしづらいんですよ。水は蛇口をひねれば出るもの、火はコンロとかライターとか、とにかく自分から出てるイメージがないんですよね。』
『それは分かるわ。』
『だけど、矢はいつも持ってますし。水で同じ形のものを作ればいいのかなって。ただそれだけだったんです。』
『それであの殺傷力が出るっておかしくない?』
『そうですか?水で岩を切ったりとかの映像を見たことがあるのでおかしくはないと思います。あとは消防車の放水とかなら結構敵を動揺させられそうですよね?』
『水の攻撃って基本そんな感じよ。水の矢だって本来魔弓で使わないし水鉄砲レベルなの。危なくない練習用って位置付けなのに、なんなのアレ。』
なるほどと頷いた。魔法はイメージと言いながら、そのイメージは教本に記載された固定観念に囚われているのではなかろうか。他にも有用な使い道があるはずなのに、基本から逸脱しない。その停滞はエリザベッタは何とも言い難く、眉間を寄せた。
『正直、私が戦力になれると思いません。人型の魔族に同じことを出来るかって言われると自信ないです。』
『慣れよ、慣れ!』
『いやいや、まず最初の一歩が踏み出せそうにないんで。』
チェレステの容赦のない攻撃を見たらエリザベッタはドン引き必至だろう。同じ時代の日本人であったとは思えないほどチェレステは魔族に対して無慈悲である。それはエリザベッタと出会うまで、お互いの素性を知るまで、この世界はマンガの中であり、出てくる人物もキャラクターと捉えていたからだと思われる。お姉さまはテンプレの転生悪役令嬢の素質があるのである。
『魔物型ならいける?』
『魔物なら、狩りと変わらないので多分。』
『じゃあ、半人半獣なら?』
『そんなのいるんですか?』
『いるわよ。二足歩行の獣型が多いけど、知能の高い顔だけ完全に人間のヤツとか。』
『それは……どうでしょう。言葉を喋れたらアウトかもしれません。』
『そっか……。まあ、ランベルトはあくまで後衛ならって感じで貴女の戦闘参加に渋々賛成してくれてるから、あんまり気負わなくていいと思うわ。前衛は私とランベルトなのは前回と変わらないし。』
『そうですか。』
『スナイパー的な役割って考えてくれればいいわ。』
『それなら出来そうです。あ、ちなみに覚醒って、私覚醒したらどうなるんですか?キッカケとかマンガだとどうなってました?』
これを言っていいのか。チェレステは悩んだ。金の眼は高魔力保持者の証。つまり、魔族に近しい。魔の色であるというのは、ある意味で間違っていない。エリザベッタが覚醒して発現する力は……
『キッカケはランベルトの怪我ね。戦闘不能まで陥って瀕死の状態になるの。そこで貴女の心的ロックが外れて覚醒する。魔力が解放されて、使えるようになる力は〝闇魔法〟。その金の目は、やっぱり魔の色なのよ。こう言ったらなんだけど。あ、別に魔族の血が入ってるわけじゃないのよ?魔力量に影響されて金色になるって原作で魔王が自ら言ってるわ。ただ、今まで人間でそこまで魔力のある者が生まれなかっただけ。』
『うわぁ、やっぱり魔の色なんですね、コレ。』
『綺麗だと思うわよ。恥ずべきことじゃないわ。むしろ誇るべきことよ。』
『あ、その辺はもう気にしてないです。覚醒すれば見た目で差別するヤツはぶちのめせるくらいの力があるってことですもんね。』
『そ、そうね……。』
なんだか自分に感化されてきてるのではないのだろうか。エリザベッタの過激な発言にチェレステは反省するのであった。
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