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眼帯姫はたくましい  作者: 里和ささみ


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23/79

眼帯姫は雇いたい

下記のルールを前提にお読みください。


★主人公のセリフの見分け方

「 」異世界言語のセリフ(カタカナ表記は発音が上手く出来ていない)

「〝 〟」異世界言語のセリフの中にまざる日本語

『 』日本語のセリフ


※たまにチェレステのセリフの場合があります

 〝戦災孤児や戦争未亡人がいる。〟


 〝生活に困窮している。〟


 〝国の保障は行き届いていない。〟


 そんな話を視察中に聞いたエリザベッタは、そういう者たちを優先的に雇用したいと考えた。

 戦争と言っても人対人、国対国ではない。人対魔族である。以前は歯向かう者は皆殺しにしていたが、今回の復活では何故か討伐兵を回収していた。もちろん死者がいないわけではないが、眷属たちもなるべく生け捕りでと命令されているのか、人を生きたまま小さな玉に封じ込める魔法の道具を使って捕えて行っていた。


(モンスターのボールみたいね。もしくは魔法の筒。)


 チェレステの感想である。


 その後の囚人の扱いは知らない。生きて帰った者は一人もいないからだ。魔王のいなくなった居城で捜索も行ったが、影も形も見当たらなかった。

 死者ではないからと国が保障をケチったとまことしやかに言われているが、実際のところはエリザベッタには分からない。あの父王ならやりそうだな、でも宰相はまともだからそんなことないのかな、と思っている。ランベルトやチェレステにも分からないので、エリザベッタが知る機会はなさそうだ。


「子連れもいるが、それはどうするつもり?」


「子どもたちは読み書き計算を教わります。先生はヴィオランテ。子どももマナーを学ぶ。」


「女官長はそれでよろしいので?」


「集まればの話ですが。」


「赤ん坊を抱える者には?」


「コモリメイド。ヴィオランテのジョシュ。」


 福利厚生の一環として、託児室の開設と使用人の子どもへの教育を施すことにした。チェレステ王国では寺子屋があり、申し込みが必要だが、五歳の誕生日から十歳の誕生日までは神殿の無料教育を受けられる。だが、授業形式というより小テストを繰り返すタイプで、日本でも学区にひとつはあるような学習塾のようなところだった。この国の平民はそこの修了証書を持って就活に挑むので、十歳の誕生日までに終わらない者の未来は絶望的だった。そういう子どもが五十人に一人はいるそうだ。家業があればいいのだが、皆そうとは限らない。

 エリザベッタは習熟度に個人差があるというのを聞いて、授業を行った方が良いと考えた。神殿を蔑ろにするのではなく、飽くまでテストに合格するための一斉授業を行うのだ。予備校と考えてもいいだろう。

 使用人の子どもならそのまま館で雇ってもいいし、外の世界へ出たい子どもがいれば後押ししてあげたい。エリザベッタの習熟度は、読み書きはともかく計算に関しては文官レベルと太鼓判を押されているので、離婚したら算数の先生になるのもいいな、なんて風に思っている。


 メイドの件は一旦置いといて、まずは侍女の募集をかける。イギリスでいえばレディースメイド。女主人のこちらはエリザベッタの近隣の領地にも募集を出し、男爵位子爵位の家の貴族女性を雇う。王宮から派遣される予定だった者はヴィオランテとランベルトによって雇用を拒否された。愛人どころか本妻に取って代わろうとする野心家ばかりだったからだ。

 侍女は女主人の宝飾品なども管理しなければならない。欲深い彼女たちは雇った途端に主人の私物に手をつけそうな雰囲気があった。中にはトスカではなく、ヴィオランテが上司となると知って辞退を申し出た者もいる。王宮内の力関係を見ればその判断は正しかったと言える。

 エリザベッタは伯爵夫人となるが王女。見目が良く、見栄えのする侍女を連れて歩くのは貴族夫人のステータスでもあるが、エリザベッタとしてはそんなものより実益を取りたい。恥をかかない程度に身の回りを整えてくれて、お茶会などのプロデュースも出来るような人が来ればいいな〜と思っていた。


「マニョリア伯爵家から紹介したい者がいるとの連絡がございました。」


 エリザベッタの母ジュリエッタの実家からの紹介だ。おかしな人は寄越して来ないだろう。王都への帰還次第、面接をすることになる。

 他にも二人ほどランベルトが心当たりがあると、戦争未亡人に声をかけることになった。侍女は未婚の女性を雇うのが当たり前の世界に一石を投じることとなる。


 メイドに関しては、住み込みではなく通いではどうかという提案だった。幸い、資金は今のところ潤沢なので、仕事ごとにメイドを雇うこととなる。英雄ランベルトは全ての仕事を行うメイドしか雇えないような貧乏ではない。


「スミコミメイドはいりません。カフだけ。」


 今回の戦争未亡人は貴族ばかり。チェレステ王国は魔王の居城から離れており、戦地にはならなかった。戦争は貴族の仕事。つまり、騎士の仕事。よって、寡婦である騎士の妻とその子どもは館に受け入れるつもりだ。


「全くなしというのは心許ないのでは?」


「サイテーゲン。お金。リョウチノタミにカンゲンスル。」


「領都で雇うってこと?」


「はい。タクジ室、朝七時半カラユウガタ四時まで。働きますソノアイダ。」


 五時になると飲食店以外の商店は閉まってしまうのでメイドの仕事は四時までと考えた。住み込みで若い女を雇うことをチェレステが嫌ったからだ。住み込みだとどうしてもエリザベッタの眼帯の下にある金の瞳に気付かれる可能性がある。貴族は黙らせられても、民の口に戸は立てられない。チェレステにとってエリザベッタが侮られ、蔑まれるのは認められないことだ。

 よって、侍女は貴族社会の酸いも甘いも知り尽くした未亡人、メイドは通いでなるべくエリザベッタとの接触を減らす。そう希望した。それはエリザベッタの考える雇用改革と合致するものであった。


「では、メイドは彼女の言う通りの条件で募集しよう。」


「よろしいのですか?」


「エリザベッタがそうしたいと言うならいい。屋敷の差配は()の仕事だからな。」


 チェレステが妻という言葉に眉根を寄せたが、当のエリザベッタは何ともない顔をしている。貴族の夫人はある意味、管理職のようなもの。重責はあるが、結婚する以上はやるしかない。


(いい人が集まればいいな。貴族の女の人ってプライド高そうだから、上手くやれるか分かんないけど……お姉さまには悪いけど、ここはお姉さまのご威光を活用させてもらおう。さすがに王女で聖女のお姉さまに逆らう人はいないでしょ。)


 エリザベッタが結婚してもチェレステと同居すると完全に思い込んでいることをランベルトは知らない。小姑付きで嫁いで来る王女が何処にいる。エリザベッタが史上初になるだろう。


 エリザベッタ渾身のメイド募集のポスターが領都内に掲示された。


 〝クリザンテーモ領主館メイド再募集〟


 〝雇用条件 主婦〟

 〝勤務時間 午前八時から午後四時 休憩一時間〟

 〝給与 一日5000チェロ〟

 〝週三日からOK!〟

 〝定休日アリ!安息日は全員おやすみできます!〟

 〝掃除、洗濯、料理など、家庭で培ったスキルを活かしてみませんか?〟

 〝貴族の屋敷の熟練スタッフ直伝のテクニックを獲得できます!〟

 〝領主館のコックによる昼食まかないつき〟

 〝お子さまがいる方、大歓迎!〟

 〝託児室で子守りメイドがお子さまをお預かりします!(開室午前七時三十分から午後四時)〟

 〝子守りメイドも同時募集!〟

 〝教師による神殿でのテスト対策授業アリ〟

 〝お子さまにも昼食をご用意します!〟

 〝ご希望の方にはお子さまのための朝食も!〟

 〝菓子類の下げ渡し等もアリ〟


 託児室付き、しかも教育まで施してくれて、子どもの分の昼食付き、希望者には朝食もという募集要項に領都の主婦は飛びついた。給与体系は従来の住み込みの場合の給料を日割りにしたものだった。休みもある。破格の待遇だ。それでもエリザベッタは日本の最低時給には届かないことに心を痛めていたくらいだが。


 後日、メイドの面接が行われた。掃除メイド、下拵えなどを行う厨房付きの調理補助メイド、洗濯メイド、子守りメイドなど、面接である程度の希望を聞き、採用者は実際に働きぶりを見てから適材適所で異動もあると伝えてある。

 英雄の浮気を心配して若い女を雇わないなんて心の狭い王女サマだなぁ、などと言う者もいたが、雇われた主婦メイドたちが目撃するランベルトとエリザベッタの関係性がいつしか領都から領内に伝わり、それは全くの勘違いだったということが分かった。


 民の口に戸は立てられぬ。


 英雄はいつだって注目の的なのだから。

お読みいただきありがとうございました!

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