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ラリーは論より証拠派の人間だった。


-⑪大食いが役に立つ-


 店長のラリーは聞き返した、身近に自分の事を大食いと自信満々に言う人がいる訳がないとずっと思っていたからだ。確かに大食いの番組はこの世界にあったりはするがそれもやらせやはったりの塊なのだろう、1人の人間が本当にあれだけの量を食べてしまう事を信じる事が出来なかった。

 しかし、目の前の新人従業員は出来ると言い張っているのだ、よしそう言うなら試してやろう。丁度売れ残りのパンがかき集めたものがあったはずだ。


ラリー「光・・・、そんなに言うなら俺が作った大食いメニュー、やってみるかい?」

ローレン「店長、ウチそんなの無かっただろう、あたしゃここ長いけど見たことないよ。」

ウェイン「まさかあの堅くなりかけてるパンを出すのか?」

ラリー「ああ・・・、ただそのままでは出さない。これも以前から考えてた新作だ。無駄になりそうな食い物を可能な限り減らす方法を探してたんだ。折角だ、試しにやってみるさ。ウェイン、すまんが手伝ってくれ。光、食えなくても別に罰はない。こっちは一応売れ残りを出すんだからな、逆にもしも食えたら給料2倍だ。約束しよう。」

ウェイン「ああ・・・、やってやるさ・・・。」


 給料2倍・・・、別に金に困っている訳ではないけど(光の口座には1京円入っているため)、良い響きだ、心がうずうずしてくる。それに失敗しても何も問題なし、そんなの断る理由がどこにあるのだろうか!!!


光「店長・・・、今すぐ持ってきて下さい!!!」


 ラリーはその声を皮切りに厨房へと駆け込んで行き調理を始めていった、売れ残ったパンを細かく刻んでいく。その作業をウェインに任せると自分は大量のホワイトソースを作って行った。

 刻んだパンをバターを塗った大きなグラタン皿に盛り、鶏もも肉の切り身やベーコンをラリー特製のホワイトソースやチーズをこれでもかと言わんばかりにかける。

 最後にオーブンで焼いて大きなグラタンが完成した。


ラリー・ウェイン「出来たぞ!!!食えるもんなら食ってみろ!!!」


 直前まで通常通り接客の仕事を行っていた光を呼び出し光の前に出来立て熱々を提供した。店も丁度午前中の営業時間を終えたところだったので店にいた全員が光を見守った。


光「いっただっきまーす!!!」


 光は嬉しそうな顔で食べ始めた。熱々のグラタンが口の中に運ばれていく。


光「おーいしいー!!!あっ、鶏肉とベーコンも入ってるんだ、嬉しい!!!」


 光は本当に幸せそうな顔をしていた。勢いが止まらないどころかどんどん速くなっていく。


ラリー「味変・・・、しなくていいか?」

光「ほひひーははひふほーはいへふ(美味しいから必要ないです)。」

ラリー「そ・・・、そうか・・・、制限時間無いからゆっくりでいいぞ。」

光「まだ、余裕でーす。」


 いや、余裕では無いのはラリーの方だったのだ。自分で給料2倍と言ってしまった手前、冗談のつもりだったのでただ事ではなくなってきたから顔が蒼ざめていた。開始10分も経ってないのにもう、半分以上減っている。

 奥からラリーの奥さんであるミーシャが出てきた。


ミーシャ「父ちゃんあんた何やってんだい、まさかあのグラタンをこの子が食べてるのかい?あらま、もう食べちゃうじゃないか。」

ラリー「母ちゃん・・・、ごめん。俺こいつに食えたら給料2倍って言っちゃった。」

ミーシャ「しょうがないね、あんたの小遣いから差し引いとくからね。」

ラリー「ああー、母ちゃーん、それだけはちょっとー。」

ミーシャ「どうせ競馬でスッちまうんだからちょうどいいだろ、お灸だよ。」

ラリー「今月はデカいレースがあるから勘弁してよー。」


 そう言えば新聞の4面が競馬の記事でいっぱいだったなという事を思い出しながらミーシャに泣きつくラリーを横目に光は最後の1口となっていた。

 最後に残ったパンにホワイトソースを満遍なく染み込ませパクっと喰らった。


光「ごちそうさまでしたー!!!」

ラリー「完敗だ・・・、分かった、給料2倍な・・・。」


 ラリーは背中で泣いていた。

ラリーは「漢」を見せた。

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