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87

どんどん解体を進めていく2人。


-87 宴は続き-


 ネスタと結愛による黒毛和牛の解体は続いた、2人も調子が出て来たのかありとあらゆる部位がお目見えしていく。


結愛「先程の肩ロースに続きましてリブロースのお出ましですよ、美味しく食べて下さいね。」


 結愛が出てきたばかりのリブロースを受け取ったヤンチが目にも止まらぬ早業で焼き肉用のお肉に仕上げる。


ヤンチ「実は今日の為に家で育てた果実を使ったタレを持参して来ました、タレ漬け焼肉にしますので板長お願いします。」


 御厨板長はヤンチに今日は仕事を忘れさせる様に伝えるべくあるルールを作っていた。


御厨「ヤンチ・・・、今日の俺達は休みだ。という事は分かってるよな?」

ヤンチ「わ、分かったよ親父。」


 ヤンチは御厨の事を仕事の時以外は昔の様に『親父』と呼んでいた。両親の顔を知らない孤独なウェアタイガーだったヤンチは、美味い食事を与えた御厨を本物の父親の様に慕い、自分も美味い料理を作りたいと御厨の下で言葉と料理を勉強し続けている。今となっては立派な板前、いや花板と言っても過言ではない位の実力を持っているが決して驕らず一途に料理を探求し続けていた。

 そのヤンチが自ら持参したタレで肉に味付けをする、それには師匠であり育ての父の御厨も興味津々だ。


御厨「ヤンチ・・・、俺も食って良いか?」

ヤンチ「良いけど・・・、不安だな。」

御厨「自分の料理に自信を持て、お前は仕事の時も自分が納得していない味の料理をお客様に出しているのか?」

ヤンチ「それは・・・、ないけど・・・。」

御厨「本当か?迷いがある言葉だな。」

ヤンチ「自分ではまだ発展途上だと思っているからかな。でもこのタレは素材から全部作って味見をしながら作った。」

御厨「汗と涙の結晶か。それじゃ何故不安になるんだ、是非俺にも味わわせてくれ。」

ヤンチ「いや・・・、あの・・・。」


 御厨がタレ漬けにしたリブロースを自ら焼き1口食べる。


御厨「ぐっ・・・、かっ・・・。」

ヤンチ「だから不安だったんだよ、親父唐辛子苦手だろ。」

御厨「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 辛い物が大好きなヤンチはビールや白飯に合う様に自宅で育てた果実と一緒にハバネロやブート・ジョロキア、そしてトリニダード・スコーピオンと言った様々な唐辛子を加えていた。

 御厨は白米とビールの両方を一気に煽り、何とか辛さを緩和しようとした。今にも死にそうな顔をしている。

 その光景を見た光明とプニが近づいて来て自分達で焼きだした。


光明「美味そうな肉ですね、俺達も1つ。」

プニ「このタレの良いとろみ、食欲を誘う香り。俺にも早く焼いてくれよ、光明。」

御厨「お前・・・、ら・・・、後・・・悔・・・、する・・・、なよ・・・?」

プニ「この人何で死にかけてんだよ、それにしても美味そうだな。」


 何故御厨が死にそうな表情をしているのか理解できていない2人は良い色に焼けた肉を口へと運ぶ、眼前にあるのは確かに高級な黒毛和牛。ただ表情の理由をすぐ知るようになる。


林田「何故だ、急にビールがよく売れる様になったんだが。」


 ヤンチの特製ダレの正体を知らない林田は日本酒の盃を利通に渡し自分の熱燗を注いだ。


林田「利通・・・、ノームは新人警官だった頃よりずっと見てきたからお前と同じで俺の子供みたいな奴だ。他の事に目もくれず、ずっと一途に仕事にのめりこんでいたアイツがまさかお前に惚れるとはな。俺はアイツにもお前にも幸せになって欲しい、だから決して俺から押し付けたりはしないが、後悔せん為にお前が思う今最もすべき事をやれ。」


 盃を受け取った利通は数秒程沈黙し、注がれた酒を一気に煽り深く・・・、深く呼吸をすると一歩一歩踏み締めドーラへと近づいていった。


利通の選択とは。

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