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67

丼を食べ進める犯人。


-67 重い罰-


 『丼』な『重い』罰を受ける犯人に林田は柔らかな表情と口調で質問してみた、キツめの口調で聞くと答えづらくなってしまうかも知れない、素直に答えてくれそうな内に聞いてみようと言う作戦だ。


林田「どうだ、味は美味いか?知り合いの板前さんに頼んで作って貰ったんだ。俺大好きなんだ、カツ丼と親子丼に牛丼、そしてかき揚げ丼がよ。」


 丼にたっぷりの白米が盛られ、上には黒豚のロースカツにネフェテルサ特産の若鶏で出来た親子丼の具材がかけられ横にカラッとサクサクに揚げられた大きなかき揚げと継ぎ足しの出汁で甘辛く煮詰められた牛肉が添えられている。料理の練習に余念のない焼肉屋で働くウェアタイガーのヤンチの特製丼で、お代はいらないからと御厨板長が試食を頼んできたのだ。


犯人「こんなご馳走・・・、久々だよ。」

林田「それな、本当は俺の昼飯だったんだぞ。」

犯人「いいのか?俺、さっきも言ったが金ねえぞ。」

林田「良いんだ良いんだ。目の前で腹を空かせている奴がいるとほっとけねぇ性格たちでな、許してくれ。それにしてもよっぽど腹減っていたんだな、もう半分も無いじゃんかよ。」

犯人「美味すぎてな・・・、俺には勿体ねぇ・・・。死んだ両親に食わせてやりてぇ・・・。」

林田「良かったら、お前さんの話を聞かせてくれないか?食べ終わってからで良いからよ。」


 犯人は冷めない内にと口にどんどんと運んでいった、急ぎすぎて詰まらせかけている。ただ、まだ満腹感は来ていないみたいで勢いはおさまらない。


林田「ははは、急ぐからだろ。今お茶を持ってきてやるから待っとけ。」


 林田警部は冷蔵庫から麦茶を持ってきて犯人に1杯与えると、食らいつく様に一気に飲み干した。


林田「少し気になったんだが、お前さん。この世界の奴では無いな?」

犯人「ああ・・・、確かにそうだが何故分かった?」

林田「俺と同じ匂いがしたんだよ、今更だが名前は?」

犯人「梶岡だ・・・、梶岡浩章かじおかひろあき。」

林田「梶岡か、実は俺も転生者なんだ。お前さんも俺と同じだから、日本の味を美味そうに食ってるんだな。」

梶岡「いや・・・、実は日本での記憶は全く無くてな。」

林田「良かったら聞かせてくれるか。」

梶岡「長くなるぞ、レースを見なくて良いのか?」

林田「後で何とでもするさ。」

梶岡「ん?まぁ・・・、良いか。これは数年前、ここに俺を転生させた神様的な奴に聞いた話なんだが、俺が生まれた直後に元々体の弱かった母親は分娩室で出血多量で亡くなり、病院まで走っていた父親もトラックにひき逃げされて即死だったらしい。そのトラックは逃走中の銀行強盗犯が運転していた物らしく、犯人は未だ捕まっていないそうだ。両親の顔や名前、声も知らぬまま施設に送られる事になった俺は施設に行く予定だった当日に新生児室から何者かに盗まれ、駅のコインロッカーの中で放置されている内に窒息で死んだと聞いた。そしてこの世界に転生されこの国の孤児院で育ち卒業、ほぼほぼ全財産をはたいてアパートを購入した俺はバルファイ王国の魔学校に行く予定だったんだ。一応、首席入学の予定だったんだぜ?なのにいきなり入学資格の剥奪通知なんてものが来てな、そこに書かれていた電話番号にかけてみたんだが誰も出ない。居場所も無くしちまった俺は職を得ようと冒険者ギルドに登録しようとしてみたが身分証明書が無いから登録出来ないと受付嬢に言われてよ・・・、それで今に至る訳さ。それにしても今思えばあのエルフの刑事さんに似た奴だった気がするな。」


 林田は懐に忍ばせていた無線機を机に置き、呼びかけた。


林田「ノーム君・・・、そう言う事らしいが、聞いていたか?」

ドーラ(無線)「聞いてました、何となく見たことがある顔だと思ったのですがあなただったのですね?」

梶岡「どういう事だ?」

林田「この国の冒険者ギルドの受付嬢本人だよ、本職はここの刑事。それと結愛さん・・・、梶岡が言っていた事は事実でしょうか?」

結愛(無線)「私の方には報告が上がってませんね、梶岡さんでしたっけ、少し調べさせて頂けませんか?羽田さん、お願いできますか?」

羽田(無線)「お任せください。」

梶岡「これもどういう事だ?」

林田「君が行こうとしていた魔学校の理事長だよ、調べてくれるらしい。それでだ・・・、どうやらこちら側に非があるようなので今回のもう1つの『罰』は俺達の捜査に協力するって事でどうだ?」 


梶岡はどうなるのだろうか。

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