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今は新聞屋が唯一の頼りだ。


-⑧食料を得る-


 新聞屋は光の必死な顔に少し引き気味だった、光はかなり強めに新聞屋の腕に掴んでいる。新聞屋は後ずさりしながら光に告げた。


新聞屋「わ・・・、分かりました。一旦店に戻ってきます。タイムカードを押してこないといけませんので。すぐに戻って来ますからちょっと待っ・・・。」

光「早く・・・・、早くしてください!!!お腹が空いて我慢できそうにありません!!!」

新聞屋「やたら大きな魔力保冷庫(冷蔵庫)があったのはそういう理由だったのですね、分かりましたから手を放してください!!!」


 ナルと名乗ったその新聞屋は逃げる様に光の家を出て店に急いだ。流石に大食いだからって女性1人で大鍋に並々入ったコンソメスープをすぐに平らげることは無いだろう、ただ急ぐしかない、それがナルに残る唯一の選択肢だった。


 光はナルが家を出た後、一心不乱に鍋のスープを食べた。こんなに温かく優しい味のスープは久々だ。落ち着いてイングリッシュマフィンをもう1個焼こう、スープにつけたらぴったりだ。オーブントースターの電源をいれ、テーブルのスープに戻る。やはり美味しい、光は夢中になって食べた。


光「美味しすぎる・・・、ナルさん・・・、本当に新聞屋さんなの?!」


 鍋のスープが底を尽き、光は椅子にもたれた。その瞬間ナルが家に必死の形相で入って来た。空っぽになった鍋を見て開いた口が塞がらない。


ナル「急いで何か作ります、待っててください!!!」

光「は・・・、やく・・・、お・・・、腹・・・、が空い・・・、て・・・、死に・・・、そう・・・。」


 ナルは急いでエプロンを締め米を研ぎ始めた。土鍋に米を流し込みつけ置きをする。その間に鍋いっぱいの水に昆布と鰹節を入れて出汁を取る。アジの干物を魚焼きグリルに入れると火をつけた。IHクッキングヒーターを見ながら声を掛ける。


ナル「それにしても不思議な魔法具ですね、何の変哲のないただの板に鍋を置いていると熱くなってくるなんて見たことないですよ。普通は火属性魔法を薪に当てて火をつけるのですが・・・。これはあなたの魔力ですか?」


 軽トラと同じでガスコンロ的なものを使うときにも魔力が必要らしい。やはり改めて思ったがこの世界は何をするにしても魔法が絡んでくるみたいだ。

 そんなこんなでナルによる追加の朝ごはんが出来上がった。先程と打って変わって和食の朝ごはんだ。土鍋で炊かれたご飯とみそ汁はお代わり自由で焼きアジやナルが持ってきた野菜の漬物はご飯にピッタリだ。

 光は箸が止まらなかった、夢中になって食べた。ただまだ空腹は満たされない。


光「れいぞ・・・、魔力保冷庫のもの全部使っていいのでもっとお願いします!!!」

ナル「ははは・・・、その代わり新聞は当店でお願いしますね。」

光「取ります、取りますからお願いします!!!」


 光は涙目になって訴えた。空腹で仕方がない、ナルにどう思われてもいいのでとにかく今は空腹を満たしたい。

 ナルは無我夢中で料理を作っていた、その時の顔は何故か恍惚に満ち溢れていた。光はやっと満腹になり人生で初めてと言えるくらいの笑顔を見せた。


光「はひはほー(ありがとう)、ほひほうははへひは(ご馳走様でした)。」

ナル「ハハハ・・・、それは良かったですが、これからどうするのですか?」

光「そうですね、とりあえず市場に行って食料を調達した後、余った土地を利用して家庭菜園でもしてみようかと。」

ナル「分かりました、またお手伝いできることがあれば仰って下さい。」


 ナルと別れ鍋や食器を片付けた後に市場で魚介類や畜産類を、そしてゲオルのお店で調味料やその他諸々を購入し冷蔵庫に押し込んだ。魚介類や畜産類は市場の人に捌いてもらったので冷蔵庫に入れやすくなっていた。

 その後、ガイの畑へと向かい相談する。ガイは快く野菜類の種をくれた。

家に帰って『作成』した農機具で土地を耕し肥料を撒いた。川沿いから『作成』した水道管にホースを繋ぎ出来上がったばかりの畑に水をあげた。

水をあげた後、『作成』した防護用のネットで周囲を囲みこれで万全というところまで畑を作り上げた。

その時、横を通ったガイが声を掛けた。


ガイ「立派な畑だね、さっきから今までの間にここまで作ったのかい?時間がかかる作業だったはずなのに、まだ正午だよ・・・すごいな・・・。」

光の凄いところは『作成』だけでは無いらしい。

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