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51~52

女子会も佳境となってきた。


-51 女子会の夜-


 2人はゲオルの店に寄り、缶ビールやワインと言ったアルコールに、そしてチーズにポテチなどの肴を買い込み光の家に向かった。後から自分達も参加したいとパン屋のミーシャとローレン、林田家のネスタから連絡を受けたので多めに買い込んだ。

 皿に買い込んだ肴を並べ、冷蔵庫で酒と一緒に冷やしこみ、3人を待ちつつ風呂に入ってから先に2人だけで始める事にした。

 汗を流した2人は缶ビールを同時に開け乾杯する、一気に口に流し込んだ。火照った体の五臓六腑にビールが染み渡る。

 しばらくして色々と買い込んだ3人がやって来た。両手に沢山の買い物袋を抱えている。


ネスタ「何だい、もう始めているのかい?連れないね。」

ドーラ「何言ってんの、まだ始まったばかりだから問題ないって。」


 ネスタ達が一緒にテーブルを囲み、改めて・・・。


5人「乾杯!!」

ミーシャ「パンを固めのカリカリに焼いて味付けしたら良い肴になっていいわね。」

ローレン「このローストビーフ、ワインにぴったり。」

5人「お酒が美味しい~。」


 話題は光の恋愛についてとなった。先程のカフェにおけるナルとの様子を見て察したドーラが切り出した。

 光はナルとの今までをゆっくりと語っていった。新聞の勧誘で偶々来た事や、無理言って料理を沢山作ってもらった事、家庭菜園を手伝って貰った事に、昨日の事。余す事無く語る光の顔は少し赤くなっていたが生き生きとしていた。


ローレン「過去の話はここまでとして・・・。」

ミーシャ「ナルの事、どう思ってんのよ・・・。」

光「だ、だから料理が上手くて、スイーツも上手くて、いざという時頼りになるし・・・。」

ドーラ「もう、回りくどいわね。だから?一緒にいる時どうなのよ。」

光「何かこう・・・、どこどきすると言うか、楽しくて離れるのが嫌になって、ずっと一緒にいれたら嬉しいと言うか・・・。」

ネスタ「ナルが大好きで、愛しているんだろ?好きで好きで堪らないんじゃないのかい?」

光「・・・はい、大好きです!出来る事なら今すぐにでも顔が見たい、手を繋ぎたい。横顔をずっと眺めていたい!ぎゅっと抱きしめたい!何もかもかなぐり捨ててでも良いから会いたい!」


 涙を流し、大声で泣き叫んだ光をネスタがぎゅっっと抱きしめ、気持ちを確かめた。


ネスタ「その気持ちに嘘は無いみたいだね・・・、そろそろ頃合いかね。」


 ネスタは光を玄関へと引き連れドアを開けるとそこには林田警部とナルがいた。

 ナルを見つけた光はすぐに駆け寄り抱きしめた。ナルも光に応え抱いた。


ネスタ「あんた、随分と時間が掛かっていたじゃないか。」

林田「悪い、ナルがなかなか話を聞き入らなくてな。」

ネスタ「ほら、あんたも中に入って呑もうじゃないか。」

林田「折角の女子会だろ、おっさんが入っ・・・、うぐっ。」


 ネスタが林田警部の口を塞ぎ無理矢理家の中に入れ、2人きりにした。実は女子会というのは真っ赤な嘘で、双方の気持ちを知ったドーラが2人を会わせる為の口実にしたものだった。

 因みにだが、ネスタとパン屋の2人、ウェイトレスのレーゼ、そしてカフェのオーナーには全員ドーラの根回しがされていた。いわゆる全員グルだったのだ。


ドーラ「警部ー、遅いですよ。早く呑みましょうよ。」

林田「はははは・・・、ノーム君、ご機嫌な様で・・・。」

ドーラ(ノーム)「良いでしょ、今日は休みですし私のお陰であの2人を会わせる事が出来たんですから。」


ナル「あ、光さん・・・。いつぶりでしたかね?」

光「お昼以来では無いですか?」

ナル「あ・・・、あの・・・、先程家の中から聞こえて来たのですが・・・。いや勿論盗み聞きしていた訳では無いですので。ただ・・・、あの・・・、先程の・・・。」

光「何でしたっけ、色々ありすぎて記憶が曖昧でして。」

ナル「そうですか・・・、では私から言わせて頂けませんか?」

光「はい・・・。」

ナル「あの日・・・、休みだったのにいきなり店長に呼び出されて仕事になってしまった事をあの瞬間までは悔やんでました。丁度この玄関だったと思います、ヴァンパイアである私の暗いばかりの人生が一気に変わったのが。」


-52 女子会の夜は更けて-


 ナルは語り続けた。


ナル「あの日、新聞の配達係が風邪で欠員し、最後に勧誘を兼ねて訪れたのがここでしたね。玄関を開けて下さったのがその時まで見たことも無い様な綺麗な女性の光さんでした。それから大食いと聞いて無茶だと言える量の食事を作ってみましたが、それにも関わらず完食してしまった事には驚きました。私が作ったただの男料理を綺麗に食べてくれたので本当に嬉しかったです。それをきっかけに家庭菜園をお手伝いさせて頂いたり、一緒に料理したり遊んだり銭湯にいったりと本当に楽しくて幸せでした。会う度に私を幸せにして下さる貴女に一生かけて恩返しがしたい。

 先程申し上げました通り、私はヴァンパイアです。貴女がこの国にやってくる数年前まで私は一族共々、吸血鬼が故に恐れられ忌み嫌われていました。元々暮らしていた村を追われ王国の山の隅に追いやられ、逃げる様に引っ越しを繰り返していました。誰も味方がおらず、食料を得る事も困難で生きる事で精一杯でした。

後に私の家族は全員、ヴァンパイアを忌み嫌う人の手により殺され1人逃げ出した私は天涯孤独の身となりました。

生きる為とは言え、人の血を吸っていたのは確かです。しかし、私自身好きで吸っていた訳ではありません。当時まだ子供だった頃から料理とトマトが大好きだった私を温かく家に招き入れ我が子の様に育てて下さった恩人であるリッチ、ゲオルさんのお陰で今はこの様に姿を変え人に混じり平然と暮らせていますが、正直まだ、家族を殺された事は悔しくてなりません。今でも家族を思い、一晩中1人悔し涙を流す日々です。

そんな中、改めて私に嬉し涙を流させて下さった貴女に心から伝えたい。

くどくどと長くなりましたが吉村 光さん・・・、大好きです。私とお付き合いしてください!」


 光は躊躇いながらも答えた。


光「お気持ちにお答えする前に貴方にお伝えせねばならない事があります。私は元々この世界の人間ではありません。林田警部や車屋の珠洲田さんと同じく異世界から転生して来た者です。

最初は右も左も、言葉も全く分からないこの地でナルさんと同じくゲオルさんに助けて頂きネスタさんのご厚意で林田警部のお宅に数泊させて頂いた後、この世界に連れてきた神様に与えられた財産でこの家を買い、沢山の方々に支えて頂きながら生活を始めて行きました。

実は生まれる前に父親を亡くし、母親も事故で亡くした私は前の世界で物売り(外回りの営業)の仕事を始め平凡に暮らしていましたが、酷い熱中症により倒れそのまま亡くなった折、気付いたらこの世界にいたのです。

先程言った神様により色々と便利に作り替えられたであろうこの世界でも初めての事が多くしどろもどろしていた時に新聞の勧誘に来て下さったのがナルさんでした。

私はあの時、とにかく嬉しかったんです!貴方が無茶を言ってしまった私に対し必死に応えて下さった事が!!

とにかくお腹が空いていて、美味しくて、嬉しくて堪らなかった!!

会う度に出逢えてよかったという思いが強くなっていって、次第にそれは好きという気持ちに変わっていきました!!

一緒にいて楽しくて、誇らしくて、気付いたら貴方の事ばかり考えてて、一緒に食べる食事の一口、一緒に呑んだお酒の一滴が思い出として強く私の中に残っています!

私も貴方の事が大好きです!こんな私で宜しければお願いします!」


 2人は無言で見つめ合い、手を繋ぎ、その後暫くの間星を眺めていた。

 林田警部とネスタ、そして遅れてやって来た利通が無理矢理外に出ようとしていたのでドーラとミーシャが必死に止めていた。


林田「ナルめ・・・、いつの間に私の娘をたぶらかしていたんだ・・・。」

ネスタ「私だって本当の娘だって思ってんだよ・・・。」

利通「俺の可愛い妹を・・・。」

ドーラ「ぐぎぎぎぎぎ・・・・、あんたらのじゃないだろ・・・。」


 外にいる2人が同時に玄関の方を振り向いた。


ネスタ「あらぁ・・・、何かごめんなさいね、ごゆっくりー・・・。」


 玄関のドアがバタンと閉まり一瞬気まずくなってしまったがすぐに元に戻った。


光「ナル・・・、さん・・・。」

ナル「ナル・・・、いやナルリスって・・・、呼んでください・・・。」

光「ナルリス・・・。あの・・・、あの・・・。」


 ナル、改めナルリスは無言で光を抱きしめ緊張しつつ唇を近づけた。光も応える様に唇を近づける。

 2人は声にならない静かな声を長い間ずっとかけ続けていた。 


この後2人は存分にいじられたと言う・・・。

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