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板長は重い口を開き語った。


-㊽まだ輝ける-


 板長は盃を片手に感動している新郎に寡黙な表情で語った。


板長「良いかニコフ、軍を捨てたこんな元一兵卒の老人の話なんてジェネラルとしては聞きたくないかもだが、良かったら頭の隅にでも置いといてくれ。今日は決して人生のゴールなどではない。2人のとても大きく新たなスタートだ、いや、もしかしたらスタートラインに立つ前かも知れない。これから2人で存分に話し合って、計画して、どう人生を歩むかは君ら次第だ。今まで通りお互いが働いて2人きりの人生をずっと歩むも良し、子宝を得て新たに1人の大きな人生を1歩、1歩、君たちなりに支えながら歩ませるも良し。どちらにしろ、お前さんの人生だ。今日はおめでとう、これからはしっかりやれ。」



 板長はニコフの肩を軽く叩いた。新郎は感動で涙が止まらない。


ニコフ「御厨みくりや板長・・・、いや、アーク・ジェネラル・・・。」

御厨「やめろ・・・、もう私はただの焼き肉屋の板長だ。王国軍の人間ではない。それよりもほら、盃が空いてるぞ、注いでやるから笑顔で呑んでくれ。俺からの祝いだ。それとも何だ?もしかして俺の酒が吞めないのか?」


 御厨は冗談まじりの笑顔をこぼし酒を注いだ。ニコフは噛みしめる様に注がれた酒を呑んだ。ふと見ると御厨の盃がずっと空っぽだ。ニコフは徳利を手にし、酒を注いだ。


ニコフ「呑んでよ・・・、父さん・・・。感謝の盃だ。」

ヤンチ「おい、板長は俺の親父だよ!」

御厨「待てヤンチ・・・、これで良いんだ。」

ニコフ「実は僕、両親を早くに亡くしてね、教会の孤児院にいた頃から当時大隊長だった御厨板長に本当の父の様に育てて貰ってたんだよ。彼は自分の御給金の1部を毎月教会に寄付してね、その上度々教会に立ち寄り食事を作ってくれていたこともあって、当時僕含め孤児院にいた子供達は全員、板長の事を父さんと呼んでたんだ。ある日、孤児院の企画で王国軍の仕事を見学し、汗水流しながら国の防御の仕事をこなし、次の年には将軍になってた。そんな御厨板長に憧れて俺も王国軍に入った。」

ヤンチ「だから披露宴の時、両親の席に親父が・・・。ニコフさん、悪かった。すまない。」

御厨「2人とも馬鹿か、祝いの席で湿っぽい表情をするな。ほら、笑って呑め。それとも父に反抗するつもりかい?」

ヤンチ「親父には敵わないな、ほら呑もうや、兄弟。」

ニコフ「ああ。」


 兄弟は静かに乾杯を交わし、笑いながら酒を呑んだ。


エラノダ「御厨将軍長、私も参加してよろしいですかな?」

御厨「勿論です、ただ将軍長はやめて下さい。私はただの一兵卒、焼き肉屋の板長ですよ。」

エラノダ「何を仰いますか、私に取ったら今でもあなたは最高の将軍長ですよ。宜しければまた今度、お店に寄らせて下さい。国王・・・、いや弟として・・・。」

御厨「エラノダ・・・、秘密にしてたんだが。」

ニコフ「へっ?」

エラノダ「言ってなかったの?私たちが実の兄弟だって。」

御厨「お前が秘密にしろと言うからずっと黙ってたんだよ、誰にも言ってねぇ。」

ニコフ「ええええええええええええ?!」


ニコフは愕然としていた。そんな2人を遠くから新婦が笑顔で眺めていた。


キェルダ「ニコフ、幸せそう。」

ドーラ「そりゃ親や兄弟の様な人に囲まれてでの酒ですもの。」

光「あんたも同じくらい、いや本人以上に幸せなんじゃないの?」

ドーラ「もうまた絡み酒?」

光「いいじゃん、どれだけ準備に苦労したと思ってんのよ。」

キェルダ「ありがとう、急な話なのに嬉しいよ。」


 ドーラはキェルダの腕を掴みニコフのもとに連れて行った。


ドーラ「ほらほら、これから2人で幸せになっていくんでしょ。」

キェルダ「うん・・・。」


 次の日、街の中心部に住民達が集まった。新郎新婦の2人がハネムーンに行こうとしているそうだ。光にとって見覚えのある車があり、オープンカーになっていた。

 キェルダが珠洲田に頼んで取り寄せてもらったMTの『カフェラッテ』だ、光の愛車を街中で見かけて憧れていた様だ。因みに本人の希望で運転席にはキェルダが座っている。


ニコフ・キェルダ「皆さん、本当にありがとうございます!これからの人生を充実させるための一歩として、私達新郎新婦の・・・、行って参ります!」 


2人は幸せな人生を歩みだした。

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