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光が感じる異世界らしくないこの世界への違和感とは。


-㊵異世界らしくない位の平和な理由-


 光は違和感を感じていた、冒険者ギルドが存在し街を訪れた冒険者たちが魔獣達に困っている住民から依頼を受け各々の仲間と共に仕事へと向かって行く。仕事を終えると報酬を受け取り建物内で呑み食いを行っている。

 しかし・・・、何かが変だ。ギルドに捕獲した魔獣を買い取ってもらったり、討伐したその場で魔獣の素材を剥ぎ取ったり、もしくは依頼者から報酬として素材を受け取り武器や防具を作っている様子が無い。魔獣の肉を食べている様子もなく普通に畜産業が存在している。冒険者達が農民たちからの依頼で魔獣の駆除をしているとの事だが駆除した魔獣はどうしているのだろうか。

 700年以上生き、経験を重ねた上級魔獣達は東門から街へ出入りし人に混じって生活を共にしている。

 では、それ以外はどうしているのだろうか。冒険者ギルドでドーラに聞いてみる事にした。

 

ドーラ「何言ってんですか、討伐なんかしちゃったら協定違反になってしまいますよ。」

光「協定違反・・・、ですか。」


 この世界に来てからそこそこ経っているはずだし、一応就職の為とは言え自分も登録しているが初耳だ。光は顔が赤くなり、ギルドから逃げ出して勢いのままに林田家に『瞬間移動』した。

 部屋の床を箒で掃いていたネスタが驚きながら言った。


ネスタ「ひゃぁっ!誰だい、いきなり入って来るなん・・・、光ちゃんかい?」

光「はぁ・・・、はぁ・・・、ネスタさん・・・、はぁ・・・、すみません・・・、はぁ・・・、お水を・・・、はぁ・・・、下さい・・・。」


 光は水を受け取ると一気に飲み干しお代わりを要求した。5敗、いや6杯程飲んでやっと落ち着いた光はネスタからチョコを貰って一部始終をほぼ早口気味になりながら話した。


ネスタ「なるほどね・・・、知らなかったと言ってもね、そう言われても仕方ないわ。」

光「協定違反ってどういうことですか?」

ネスタ「あのね・・・、光ちゃんがこの世界に来る数年前の事さね。ネフェテルサ・バルファイ・ダンラルタの3国間で『魔獣愛護協定』ってのが制定されたんだよ。それ以前は素材目的の奴もいたけど殺戮目的で自由に暴れていた冒険者が多くてね、多くの種類の魔獣達が絶滅したんだ。その影響で上級魔獣にならずに死んでいった魔獣達が後を絶たなかったから3国の街での商売の売り上げがガクッと下がったりしてね。特に王族含め国民の殆どが上級魔獣や獣人族、そして鳥獣人族のダンラルタ王国では人口が著しく激減したからそれを心配した魔獣愛護団体の連中を中心に賛同した3国の国王同士でさっきの協定が出来たって訳。そのお陰で『依頼での駆除を目的に罠等で捕獲した魔獣は必ず遠くの山に放さないといけない』って言う決まりなんだよ。討伐はご法度、素材や肉の剥ぎ取りはもっての外なのさ。」


 光は納得した、だからこんなに平和な世界が出来上がったんだな、と。でないと駆除をする側の人間達と駆除される側の魔獣達がこんなに仲良くなる訳がない、ましてや上級魔獣を恐れずに街に迎え入れてすらいる。

 しかし、3国間で協定が制定されていても近隣では魔獣の絶滅等の問題が後を絶たない。他国で依頼を受けた冒険者達が知らずに、或いは故意に討伐してしまっているのだ。前者の場合は3国の中で発行され、魔学校でも教科書の1つとして指定されているとても分厚い『魔獣愛護の教え』という本を読みながらその内容について長々と口説かれるだけで終わるのだが、後者の場合は最悪の場合絞首刑となってしまう。

 残虐で非道な冒険者から魔獣達を守るため、攻撃が察知されると諸国の軍により処罰がなされるという訳だ。


光「もしも他国から来た冒険者が魔獣から剥ぎ取った素材を使った武器や防具を身につけていたらどうなるんですか?」

ネスタ「即座に没収されてしまうんだ。それからその冒険者は3国から永久追放だって話だよ、ギルドマスターの手によりギルドカードに特別な魔法がかけられて国境を越えようとする時・・・。」

光「恐ろしい事が・・・。」

ネスタ「異常な位の腹痛と下痢に襲われるって話さ。」

光「そこでは殺されはしないんですね。」

ネスタ「他国の領域で討伐とかがされた場合はあんまり干渉出来ないんだと。」

光「だからって下痢・・・、ですか・・・。」

ネスタ「私も又聞きで聞いた噂なんだけどね、1週間位ずっとトイレから出てこれなかった馬鹿な冒険者がいたらしいよ。一方では薬局で下痢止めがバカ売れだったそうさね。」

光「経済にいい影響が生まれていますね・・・、チョコ・・・、食べづらいな・・・。」


 光は顔が引きつっていた、改めて変わった世界に来てしまったと嘆きたくなってしまう。

 変わった動物・・・、いや、魔獣愛護の形があるらしい。

 こんな平和の形があっても・・・、いい・・・。 


平和の形はそこらかしこに多数ある。

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