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楽しみにしていたあの時がついに来た。


-㉒いよいよ収穫-


 光は朝一、庭先の家庭菜園を眺めポロっと一言呟いた。


光「そろそろ収穫できるかな・・・。」


 今日になるまで水やりや草抜きなどのお手入れを欠かさず行い丹精込めて大事に大事に育ててきた野菜たちが美味しそうに実っている。

 朝日が照り付け絶好の収穫日和、先日買った麦わら帽子にTシャツ姿になり光は笊を片手に収穫に臨んだ。

 まずは真っ赤に熟したトマト、沢山あるので1つ取って試しにつまみ食いしてみる。1口齧るとそこから爽やかで甘酸っぱい果汁がたっぷり口に流れ込み幸せにしてくれる。

 そして細長く育った茄子やオクラも収穫、今日は夏野菜カレーにするかとルンルンさせてくれる。完成した料理を想像し腹を空かせながら収穫を進めていった。

 胡瓜も育っているのでサラダを作るため収穫することに、お陰で今日のランチは豪華なものになりそうだと微笑んだ。

 川沿いの小さな切り株に結んだ紐に持っていた笊を結び付け、そこに胡瓜とトマト、そして缶ビールをおいて川につけ収穫後の楽しみとして冷やしておくことにした。

 ニヤニヤしながら収穫していると家の前をたまたま通った新聞屋のナルが声を掛けてきた。以前、ゲオルからナルがヴァンパイアだと聞かされたが午前中でも平気でおきているし、普通にカジュアルウェアを着こなしているので実感が湧かない。


ナル「光さんおはようございます、収穫ですか?」

光「あ、おはようございます。そうなんです、この野菜でカレーを作ろうと思いまして。」

ナル「いいですね、僕トマト大好きなんですよ。」


 これもゲオルが言っていた様な・・・。


ナル「良かったらお手伝いさせて頂けませんか?」

光「勿論です、カレーを作った後にあそこで野菜とビールを冷やしているのでご一緒にいかがですか?」


 光は川の水で冷やしている野菜の入った笊を指差した。


ナル「最高ですね、俄然やる気がしてきました。」

光「では、手早く収穫しちゃいましょう。」


2人は手早く、しかし果実を傷つけないように丁寧に収穫を進めてきた。ナルのお陰で思っていた以上にかなり早く収穫が終わった。

キッチンに移動して光は収穫した野菜を切っていき、その横でナルは寸胴でお湯を沸かし始め、別に用意したガラスの容器に切ったトマトと胡瓜を入れ冷蔵庫で冷やしておいた。

寸胴にカレールーを入れ溶かし、その横でフライパンで切った野菜を炒めて一緒にしていく。ゆっくり混ぜながらじっくりコトコト煮込んでいき完成だ。

キッチン全体にカレーの良い匂いが漂う、光拘りの新潟県魚沼産のコシヒカリを炊飯器に仕掛け、水を少し少な目にして氷を3個入れ『炊飯』ボタンを押して炊きあがりを待つ。

その間に2人はお楽しみの冷え冷え野菜とビールを楽しむ事にした。ナルが見てない所で川沿いにベンチとパラソルを『作成』して用意していたのでそこに座り涼みながら冷え冷えの夏野菜の入った笊を取り出し缶ビールを開ける。


2人「かんぱーい。」


 2人は冷え冷えの缶ビールを呑み高揚感を感じていた。暑い時に外で呑む冷えたビールのお陰で最高の気分になっている。

 そして川に水で冷えた胡瓜とトマトにかぶりついた。瑞々しさに溢れ乾いた喉を暑さを凌いでくれる。2人は自然と顔が緩み綻んでいく。

 川が浅めだったので足をつけてまた野菜とビールを楽しむ。そうしていたら通行人にデートですかと尋ねられたので2人は顔を赤くしていた。

 十分楽しんだのでタオルで足を拭き急いで家へと入って行った、そろそろご飯が炊けるはずだ。

 キッチンに入った瞬間に炊飯器のブザーが鳴ったので光は蓋を開け炊き立てのご飯を混ぜた。

 皿にご飯を盛りカレールーをかけ、野菜サラダと一緒に先程の屋外のテーブルに持って行った。椅子に腰かけて手を合わせて叫ぶ。


2人「頂きます!!」


 ナルは1口目としてスプーンに大好きなトマトを乗せ嬉しそうな笑顔を浮かべていた。1口頬張ってまた笑顔を浮かべる。

 本当に大好きなんだなと感心させてくれるナルを光は微笑みながら見ていた、このナルがヴァンパイアなのだ。実感が湧かない。

 本当にこの世界の住民は皆種族の違い関係なく過ごしているのだ。 


ここは本当に平和な世界みたいだ。

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