141
新居が見つかった寄巻、次は仕事だ。
-141 寄巻の真実-
不動産屋で入居の手続きを終えた寄巻の横で、シューゴに1つ確認する事があったので渚を通して連絡先を聞いた。
光「もしもし、2号車の赤江 渚の娘の光です。突然すみません、1つ聞いておきたいことがあるのですが。」
突然の連絡に驚きつつも、シューゴは快く通話に応じた。確認事項についても答えは「イエス」だったらしい。首を傾げる寄巻をよそに光は話を進めていった。
光「ぶち・・・、寄巻さん。」
相変わらず昔の呼び方が抜けていない光、未だ「寄巻さん」と呼ぶのに少し抵抗があるみたいだ。
寄巻「ん?どうしたの?」
光「今シューゴさんに確認したのですが、本人に会う前に冒険者ギルドに登録しておいて欲しいとの事なんです。きっと部・・・、寄巻さんにとっていい結果を生むと思いますので行きましょう。」
改めて『瞬間移動』で寄巻を冒険者ギルドに連れて行くと、奥の受付カウンターにいる受付嬢兼ネフェテルサ王国警察刑事のアーク・エルフ、「ドーラ」こと新婚のノーム林田に声を掛けた。
ドーラ「いらっしゃい、光ちゃん久しぶりね。」
光「お久しぶりです、今日はちょっとお願いがあって。」
そう聞いたドーラは寄巻の方をチラ見した
ドーラ「そちらの方の事かしら?まさか不倫とか?」
光「何言っているんですか、ナルに怒られちゃいますよ。」
一発ジョークをかますドーラを見て少々緊張している様子の寄巻。それもそのはずで、異世界(こっちの世界)に来初めての事なのだが自分の目と鼻の先にエルフがいる、日本(あっちの世界)にいた頃にアニメやマンガでしか見たことが無いエルフが。先程屋台の手伝いをしていた時に客として何人かいたかも知れないのだが、忙しすぎて全く気付かなかった。
寄巻が耳が長い事以外は普通の人間なんだなと思いながら受付カウンターの方をぼぉーっと眺めている間、傍にいたエルフ(ドーラ)がずっと肩を軽く叩いてくれていた事にやっと気付いた。
ドーラ「だ・・・、大丈夫ですか?」
寄巻「す・・・、すみません。」
光「ドーラさんごめんなさい、この人こっちの世界に来たばっかりで。」
ドーラ「よくある事よ、多分エルフをまじまじと見るの初めてだったからじゃない?」
寄巻「正しく・・・、その通りです・・・。」
緊張しながら言葉を搾り出す寄巻、ドーラに促されるまま登録用紙に記入をし始めた。光の知る名前は「寄巻一秀」だったのだが、用紙に書かれていた名前は「一 一秀」だった。
ドーラ「えっと・・・、一 一秀さんかしら?」
寄巻「一 一秀と申します。」
横で開いた口が塞がらない様子の光、突然目の前に転生して来た元上司の名字が知らぬ間に変わっていたのだ。思わず、声が漏れてしまう。
光「部長・・・、どう言う事ですか?」
一「悪い・・・、転生した事が突然すぎて言えてなかったんだが総務課の一課長の婿養子になったんだ。」
光「突然過ぎてこっちの世界での一番の驚きなんですけど・・・。」
寄巻改め一は着々と登録用紙への記入を進めて行き、身分証明書として日本で発行された運転免許証を見せた。
ドーラ「あれ?一さんもですか?この国には何人億万長者がいるんですか?」
一「えっと・・・、どう説明すれば・・・。」
光「あ、あの・・・、お気になさらず。ははは・・・。」
光は転生者の事情について必死に誤魔化し、混乱が起こらない様に努めた。
流石に1京円は誰だって驚く。